タヌキを祀った神社が取り壊し? 小松島市に詳細を聞くと、難しい事情も

2018年3月17日(土)11時0分 Jタウンネット

タヌキといえば四国、といっても生息域ではなく民話や昔話などでタヌキが登場する物語の舞台としてだ。伊予(愛媛)や讃岐(香川)のエピソードも少なくないが、講談になったり、映画にもなったことでよく知られているのは「阿波狸合戦」だろう。


この「阿波狸合戦」に登場するタヌキ「金長(きんちょう)」を祀った、徳島県小松島市の神社「金長大明神(金長神社)」が取り壊される可能性があると、2018年3月13日付の徳島新聞が報じている。神社が建つ市営グラウンド整備の一環とのことだが、移設ではなく取り壊してしまうというのは、どういうことなのだろうか。


タヌキも勝てない法律の壁


「阿波狸合戦」の詳細は省くが、金長というタヌキが「六右衛門(ろくえもん)」というタヌキと合戦になり、なんとか相手を倒したものの自らも致命傷を負い、かつて自分を助けてくれた人間「茂右衛門(もえもん)」のところにたどり着き、礼を言って絶命したというもの。


このことに感動した茂右衛門が金長を祀って建てたのが「金長大明神」、というのが「阿波狸合戦」の一連の物語だが、当然ながら真偽は不明だ。農林水産省中国四国農政局の公式サイト上には地域を紹介するコンテンツのひとつとして「コラム—金長神社」が掲載されており、この中で、


「茂右衛門は、小松島に実在した人物で、明治維新の頃までは、実際に染物屋の裏庭に、祠もあったそうです」

と記載されているが、これは確認のしようがない。


では、取り壊しの話が出ているとされる、小松島市にある「金長大明神」は何なのかというと、1957年に「阿波狸合戦」を製作した映画会社の社長が、映画が空前の大ヒットを記録したことに感謝して建てたもので、歴史的に「阿波狸合戦」と関係があるわけではない。


とはいえ、ジブリ映画の『平成狸合戦ぽんぽこ』を始め、さまざまなフィクションにも「阿波狸合戦」の神社として登場しており、それなりに知名度のある神社でもある。観光資源としても価値もあると思われるのだが、取り壊してしまうのだろうか。


Jタウンネットが2018年3月15日、小松島市に取材を行ったところ、担当者は「具体的に金長神社をどうするかは、まだ何も決まっていない」と答えた。


「金長神社は市営グラウンドに隣接する形で建てられていますが、その用地は借地として神社を管理する金長奉賛会にお貸ししている状態です。この市営グラウンドを津波対策の一環として、防災公園に拡大整備する計画が立てられており、グラウンドや周辺の土地を更地にする必要が出てきました。借地の施設にも立ち退いていただく必要があるため、補償などの協議を奉賛会と行っている段階です」

移転するのか、モニュメントなどを設置するのか、何らかの形で残すのかといったさまざまな可能性を検討しているという。いっそ、整備中は一時的にどこかに仮移転しておき、防災公園完成後に元の場所に神社を戻すという方法も取れるのでは、と考えてしまうのだが、そこは法律の壁がある。


「都市公園法では市の公園に神社を設置することを認めていません。記念碑などであれば可能ですが、防災公園に整備したあと、同じ場所に金長神社を戻すことはできないのです」

さすがの金長も法律を回避することはできなかったようだ。取材に答えた担当者は、「観光資源として残したいという思いはあるが、観光だけの話ではないので......」と話していた。


ちなみにちょっとややこしいのだが、「金長神社本宮」という名前の、今回話題となっている「金長大明神」とは別の金長神社も小松島市内には存在する。


こちらも金長大明神を建てたのと同じ映画会社の社長が1939年に建立したものだが、日峰山という山にあり、管理している団体も異なる。グラウンドの整備の影響もまったくないという。社長、ちょっと神社を作りすぎなのでは......。

Jタウンネット

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