『デザインスタジオ・ビネン』代表・坂田守史さんが選ぶ「関係人口を理解する本5冊」

2023年3月19日(日)11時0分 ソトコト

*今回の選書人は、それぞれの分野で関係人口に向き合い、関係人口を理解するうえで大切な活動をされている11名の方々です。これから関係人口を受け入れるみなさんや、今まさに地域と関わり始めた人がよりよいアクションができるように、おすすめの本を選んでいただきました。


選者 category:デザイン





僕はこれまでディレクターとして、福井県の文化風土や産業を探索し、未来に問いを投げかけるプロジェクトを創出する「XSCHOOL」や、福井の企業と多様な専門性やキャリアを持つ全国のメンバーがチームを結成して事業創出に取り組む「INTERWEAVE」などのプログラムを通じ、人が自身の可能性について気づいていく場の設計をしてきました。可能性は、地域内外の人が出会い、その相互関係によって開かれると感じています。新しい地域のあり方を考えると地域の人だけでは突破できません。大事なのは、「開くスタンス」をもつことです。
関係人口についても同様で、個人の可能性を開く環境をつくることが大切ではないでしょうか。一方通行ではなく、関わった人たちの視点や考えにどのような変化があるかがポイントになると思います。
デザインは近年非常に広義な意味になっていますが、今回はそうしたデザインについて学べる5冊を紹介します。特に基礎になると感じている本が2冊あります。1冊が、『イバン・イリイチ』です。思想家のイリイチ氏は、目指すべき新たな社会として「コンビビアリティ(自立共生)」という言葉を用いています。自立共生のため、希望を外側に求めるのではなく自分のなかにつくり出して持ち続けることや、異質なものと出合ったときに、お互いに尊重し合って交わると人の創造的な行為を生み出せることなどを説いています。
もう1冊は、サービスデザインとサスティナブルデザインの世界的リーダーで、近年はソーシャルイノベーションに焦点を当てているエツィオ・マンズィーニ氏の『日々の政治』です。自分がいる場所から世界を変えるソーシャルイノベーションについて綴られています。
今は、「公共」が問われている時代だと思います。行政だけに預けていないか、ローカルに異なる視点をどう持ち込むのか。マンズィーニ氏は、政治は与えられるものではなく、自分たちで生み出す日々の政策なのだと説いています。それをつくるとき、どういうデザイン性がいいのか教えてもらえる本です。自主的にコモンズをつくり、運営するときのデザインの姿勢について学べました。
ほかに紹介した3冊は暮らしやローカルに関するものです。今は地域やコミュニティのあり方が激変する”前段階“にいると思っています。そして僕らは、地域で育んでいくもの・守りたいものの判断をする世代。だからこそ暮らしが大切なのです。


暮らしの哲学としての「生活文化」
─問われ始めた人生八十年時代の幸福論
小塩 節ほか著、松田義幸編、PHPエディターズグループ刊





くらしのアナキズム
松村圭一郎著、ミシマ社刊





「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?
─世界を魅了する〈意味〉の戦略的デザイン
安西洋之著、晶文社刊





photographs by Jiro Matsushita text by Yoshino Kokubo


記事は雑誌ソトコト2023年3月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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