「脱保湿・脱ステロイドで治る」は根拠なし。子供のアトピー性皮膚炎は、小児科医に相談して!

2023年3月20日(月)7時21分 マイナビ子育て

様々な説があるアトピー性皮膚炎の治療方法。でも、なかには危険な民間療法も。そこで、アトピー性皮膚炎の原因から治療法まで、森戸先生に聞きました。

乳児湿疹とアトピー性皮膚炎ってどう違う?

よく乳幼児健診で「これってアトピーですか?」と聞かれることがあります。生まれてすぐの赤ちゃんの皮膚に赤い発疹がある場合は、アトピーではなく乳児湿疹であることが多いのですが、どちらにしても清潔を保ち、保湿するとよくなることが多いので試してみましょう。

具体的には、お風呂ではたっぷりの泡を使って、皮膚のシワになっている部分を広げながら手でやさしく洗い、シャワーなどでしっかり流します。そして、お風呂上がりには純度の高い白色ワセリンなどを全身に塗ってあげてください。少しベタベタするくらいが目安です。

それでもよくならなかったり、皮膚がかゆくてつらそうだったりして「アトピー性皮膚炎かもしれない」と思ったら、ぜひ医療機関を受診してください。症状が軽い場合はかかりつけの小児科や皮膚科、重い場合はアレルギー専門の小児科がいいでしょう。

アトピー性皮膚炎は、乾燥と皮膚のバリア機能が壊れ、そこからいろいろな刺激や異物が入り込むことでアレルギー反応が起こり、炎症が悪化する疾患です。主な症状は、皮膚にかゆみがあり、よくなったり悪くなったりを繰り返して長く続き、左右対称に赤くなる、じくじくする、鱗屑(りんせつ)といって皮膚が剥がれて白い粉のようになったりするなど。

乳児湿疹と違うのは、症状が左右対称に出るところや長く続くところです。また、アトピー性皮膚炎の場合、乳児は頭や顔から始まって全身に広がり、幼児では首や肘や膝などの関節の内側に多くなり、思春期以降は顔や首、胸や背中といった上半身に多くなります。

こういった症状が慢性的(1歳未満なら2カ月以上、それ以上の年齢の場合は6カ月以上)に続く場合にアトピー性皮膚炎と診断され、治療を受けることになります。炎症が軽い場合は、肌を傷つけないようこまめに洗って、朝晩2回しっかり保湿するだけでもよくなりますが、それでは治らない場合はステロイドを使います。

また、免疫抑制剤であるタクロリムス軟膏や抗炎症薬である新しい薬モイゼルト軟膏が処方されることもあります。これらを適切に使えば、ステロイドの使用量を減らすことができるのです。

標準治療を否定する「アトピービジネス」にご注意を

アトピー性皮膚炎については、昔からおかしなデマがたくさんあります。例えば「脱保湿(保湿をしない)で治る」「ステロイドを使うと危険」「自然治癒力や免疫力を高めたらよくなる」「この水で洗えばよくなる」などは全てデマです。信じないようにしてくださいね。

アトピー性皮膚炎は、もともと素因のある人の皮膚のバリア機能が低下すること、アレルギー反応が起こることにより起こる疾患です。皮膚の一番外側にある角層の機能が低下すると、さらに皮膚が乾燥しやすくなるので、バリアを補強するためにも保湿がとても重要になります。

またステロイドは、アトピー性皮膚炎の標準治療で使う薬であり、適切に使えば効果的で副作用のリスクも下げられる有用な薬です。

さらにアトピー性皮膚炎は、むしろ免疫反応が関与することで起こるため、「免疫力を上げたら治る」という理屈はあり得ません。そういうことを言う人は、アレルギーのことを全く理解していないということになります。

こういったデマが多い理由のひとつは、昔はステロイドが不適切に使われた時期があり、その隙におかしな民間療法が流行してしまったせいでしょう。一時期は「アトピービジネス」という言葉が使われるほど、さまざまなあやしい療法・商品が出回りました。

もうひとつの理由は、アトピー性皮膚炎は治療開始後すぐに治らないことが多いからかもしれません。そのため清潔を保って保湿するのをやめてしまったり、皮膚表面がきれいになった時点でステロイドの使用を中止してしまったりして炎症がぶり返し「悪化した」「効かない」と誤解してしまうこともあるのだと思います。

でもアトピー性皮膚炎を放置したり、効果のない民間療法を試したりして悪化させると、食物アレルギーや喘息などの他のアレルギー性疾患になるリスクもありますし、何よりお子さんが大変な思いをします。専門医に相談しながら、ぜひ適切な治療をしてくださいね。

参照)森戸やすみ『小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK』(内外出版社)

お話をお聞きしたドクター 小児科専門医/どうかん山こどもクリニック院長森戸やすみ 先生 一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都谷中のどうかん山こどもクリニック院長。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本の発表に意欲的に取り組んでいる。『子育てはだいたいで大丈夫 小児科医ママが今伝えたいこと! 』(内外出版社)、『祖父母手帳』(日本文芸社)など著書、監修多数。どうかん山こどもクリニックTwitter

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この記事の執筆者 大西まお 編集者・ライター。出版社にて雑誌・PR誌・書籍の編集をしたのち、独立。現在は、WEB記事のライティングおよび編集、書籍の編集をしている。主な担当書に、森戸やすみ 著『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』、名取宏 著『「ニセ医学」に騙されないために』など。特に子育て、教育、医療、エッセイなどの分野に関心がある。■Twitter

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