「息子にランドセルも買ってくれなかった」義母は冷たいのか?義実家との「家族観の違い」が悲しい

2024年3月25日(月)22時5分 All About

夫の家族は自主性を重んじて、さらっとした付き合いをしている。義母に贈り物をした時も、息子が小学校に入学した時も、期待した反応は返ってこなかったのが寂しいしつらい。この先、義母に何かあっても面倒をみる気になれるだろうか。

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パートナーである夫の母親とは「義理の関係」というのが日本では一般的だ。夫の親の戸籍に入るわけでもなく、つまりは赤の他人という関係であるはずなのに、やはり「義理の両親」という言い方をする。
明治時代の民法においては、「女性は夫の家の籍に入れてもらう」ものだった。だから「嫁」であり「結婚=入籍」であり、「義理とはいえ親子の関係」だったのだ。昭和の戦後民法では、結婚するとそれぞれが親の戸籍から独立、ふたりで新たな戸籍を作る。だが、それを「入籍」と言うメディアや個人は今も多い。
今は、親子のあり方も人それぞれ、ましてやパートナーの親とどういう距離をとるかは個々の家族観や人付き合いの感覚によるところが大きいだろう。

義理とはいえ母親なのに

「結婚するとき、夫の母親は私の母親でもある、だから大事にしようと決めたんです。当時、義両親は義妹と3人で暮らしていました。私は同居でもよかったけど、夫の意向で交通機関を使って30分ほどの距離に新居を構えました。
共働きですが、新婚当初、週末は夫の実家によく行っていたんです。私としては義母から料理を習ったりして仲良くしたかったから。でも夫はすぐに『実家にそう頻繁に行かなくていいよ。ふたりで過ごそうよ』と言うし、義母も『私は料理なんてそんなにしないから、教えてと言われても困る』なんて言う。変な家族だなと思っていました」
ヒロコさん(40歳)はそう振り返った。ひとつ年上の夫と結婚して9年、8歳になるひとり息子がいる。子育てには義母が協力してくれた。今も困ったときはすぐに助けてくれる。だが、ヒロコさんは義母との関係が円滑だとは感じていない。

義母の態度は冷たい

「なんか冷たいなあと思うんです。息子を預かってはくれるけど、世間でよく聞くように、孫がかわいくてたまらないという感じではなくて……。ときには『私、その日は旅行でいないのよ』なんて言うし。孫がかわいければ旅行くらい取りやめてくれてもいいのにと思うこともあります」
夫は「うちはベタベタ甘え合う家族じゃなかった。それぞれが勝手に生きている家。世間でいう家族が集まって仲良くするという感じではない。気楽でいいけど」と言うそうだ。
夫は小さいころから勉強しろと言われたこともないし、中学に入ると母は保護者参観日にもほとんど来なくなったという。だからといって夫が母親を嫌っているわけでもなさそうだ。
「自由に放置してくれてうれしかったみたいですよ。干渉されないと案外、自分でしていいことといけないことを考えるようになるから自主性が育つというのが夫の言い分。自分の育てられ方をいいと思っているんでしょうね」
ヒロコさんの実家は、少し横暴なところのある父、我慢する母というステレオタイプの夫婦関係だった。逆にいえば、父は自分が何をしても妻が許してくれると信じ込んでいる「古きよき時代の夫婦」だったのかもしれない。母は子どもに過干渉だった。だがヒロコさんはそれを愛情だと信じていた。

冷たい義母にどう対応したらいいかわからない

義母が冷たければ、適度な距離を置いて付き合えばいいと思う人も多いだろうが、ヒロコさんは「自分が嫌われているのではないか」と悶々としてしまうタイプ。
「最初の5年くらいは、とにかく義母に好かれたくて、毎月プレゼントをしていました。そんなに家に来なくてもいいと言われてからも、とりあえず寄って義母の好きそうなお菓子とか花とかを置いて帰ったりしていた。
そうしたら義母がある時、『あなた、ちょっとおかしいんじゃない?』って。ショックでしたね。私としては嫌われたくないのと同時に、息子の世話をしてもらっているお礼のつもりだっただけなんですが」
その後はコロナ禍もあり、ヒロコさんも在宅での仕事が増えたため、夫の実家に頻繁には行かなくなったが、義母が寂しいだろうと息子の写真や動画を送ったりはしていた。だが、それについて感想をもらったことはない。
「昨年、息子が小学校に入った時もランドセルひとつ送ってくるわけではなくて。入学してから1度、外で義父母と5人で食事をしたときに入学おめでとうと、息子にお小遣いをくれた程度です。
義父母にランドセルを買ってもらって、家族みんなでそれを見ながらお祝いしたり、入学前にみんなで旅行したりというのを私は望んでいたんですが、夫も義父母もそんな気配もなくて」

家族って何だろう

ヒロコさんが考える「温かい家庭」と、夫が望む家庭はまったくありようが違うのかもしれない。義母もまた、ヒロコさんを「息子の妻だから赤の他人」と悪気なく考えている人なのではないだろうか。
「夫には考えすぎだし、きみの理想が必ずしもいい家庭とは限らないと言われるんです。でも私が思う家庭のほうが、息子にとってもいいに決まってる。何でも話して、些細なことで笑い合いたい。義母は最近、60代半ばになって油絵にはまり、最近は夢中で絵を描いています。
義父も多趣味な人。好きなようにさせればいいんだよと夫は言うけど、このままだといつか義父母の体が利かなくなったとき、私は義両親の世話をする自信がありません」
義妹は結婚して遠方に越していったため、頼れない。夫は両親について「介護が必要になれば自分たちで考えて施設にでも入るよ」と言うが、それもまた冷たいとヒロコさんは感じてしまう。
親子関係への考えがまったく違う義父母や夫を見ていると、「家族って何だろう」と虚しくなることもあるとヒロコさんは言った。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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