アニサキス症は春にも急増!酢締めでも、噛んでも死なない、治療薬もない……腸に逃げる前にすぐ病院へ!

2024年3月28日(木)7時30分 婦人公論.jp


イメージ(写真提供:Photo AC)

食いしん坊な人も、それほどでもないという人も、生きている限りお付き合いし続けなくてはいけないのが「食べ物」。でも、あまりにも身近で当たり前すぎて、意外と知らないことだらけ。この連載では知ると思わず「へ〜!」「ほ〜!」知っていたほうがお得かもしれない、いつか自分の身になるかもしれない。そんな食べ物トリビアを紹介します。

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実は、毎年春もアニサキス症が急増しています


アニサキスは長さ2〜3cm、太さ1mmに満たないほどの、糸状の小さな寄生虫です。アニサキスの幼虫は魚介類に寄生しています。

原因になりやすいのは、サバ、カツオ、イワシ、イカ、アジ、サンマ、ヒラメなど。魚介に寄生したアニサキスの幼虫が生きたまま人間の体内に入ると、胃壁や腸壁に食いつき、激しい痛みを引き起こす……。これがアニサキス症が起こる仕組みです。

アニサキスのニュースが増えるのは秋というイメージがあるかもしれません。でも、実際にアニサキス症は1年中発生しており、件数が増えるのは秋だけではありません。

実は、毎年春もアニサキス症が急増しています。

あくまで推測ですが、春は気温が上がり刺身を食べたくなる季節であることや、初鰹が旬を迎える季節。秋はサンマを食べる機会が増えることもあり、ほろ苦い内臓も美味とされることから、アニサキスを口にしてしまう確率が上がる。こうした季節感も理由のひとつかもしれません。

厚生労働省の統計によると、すべての食中毒のうちアニサキスが原因の食中毒の事件数はなんと約40%! 軽めの腹痛やおう吐で病院にかからずに自然治癒するケースも珍しくないので、実際の数はもっと多いはずです。

つまり、アニサキス症は、魚介を食べている以上、誰もがかかる可能性があるのです。アニサキスにやられないための注意点、もしアニサキスにやられたらどうすればいいのか、アニサキス対策を総ざらいしておきましょう。

アニサキス豆知識 その1


(1)アニサキスは、胃酸でもすぐには死なない

アニサキスの幼虫は、食べてしまえば胃酸で死ぬでしょ? と思いきや、胃酸でもすぐには死なず、しばらくは生きています。アニサキスは必死で胃壁に噛みつき、粘膜の中へもぐり込もうとします。だから、アニサキス症の痛みは長く続くのです。

(2)アニサキスは、酢、塩、酒、しょうゆ、わさびでは死なない!

アニサキスの幼虫は酢漬け、塩漬け、しょうゆ漬けにしても死にません! アルコールで退治を!というのも効きません。つまり、〆サバにしても、漬けにしても、一緒にお酒を飲んでも生きている。とてもしぶといヤツなのです。

(3)アニサキスは、加熱や冷凍が不十分だと死なない!

アニサキスの幼虫を死滅させるためには「中心温度60℃で1分以上加熱する」「−20℃で24時間以上、または−18℃で48時間以上冷凍する」のが有効。つまり、加熱が不十分だったり、冷凍具合が甘かったりすると生きていて、そのまま食べてしまうと体内で大暴れして、食中毒を起こします。

アニサキス豆知識 その2



〆てもあぶっても生きています

(4)アニサキスは、内臓から身に移動する

アニサキスの幼虫は魚介類の内臓に寄生していますが、魚介類の鮮度が落ちてくると、内臓から身(筋肉)に移動します。

だから、さばいていない魚介を料理する場合は、「鮮度がいいうちに内臓を取り除き、鮮度がいいうちに身を食べる」これが魚介を生で食べる際のアニサキス対策の基本。内臓を生で食べないこともアニサキス対策のひとつです。

(5)アニサキスは、噛んでも死なない

「よく噛めばアニサキスは死ぬ」という説がありますが、アニサキスはゴムのように弾力があり、歯ではかみ切れない可能性が高いようです。だから、身を包丁で刻むほうが確実にアニサキスを死滅させられます。つまり、アジのタタキやナメロウは、アニサキス対策としてはとても理に適った料理です。

(6)アニサキスにやられたら、猛烈な痛みが何日も続くことも……

アニサキスの幼虫が胃壁に食いついたら、食後3〜4時間後から十数時間後に、激しい腹痛、悪心、嘔吐を生じます。腸壁に食いついたら、食後十数時間後から数日後に、激しい下腹部痛、吐き気や下痢、発熱などが起こります。

アニサキスは胃酸でもすぐに死なないので、数日間痛みが続くことも珍しくありません。また、ひどい場合は、じんましんや呼吸困難などのアレルギー症状や、腸閉塞を起こすこともあります。

アニサキス豆知識 その3


(7)アニサキス症の治療薬はない

アニサキス症に効く薬はなく、内視鏡でアニサキスを見つけ出し、引っこ抜いて取り除くしかありません。

アニサキスが胃にいるうちは内視鏡で取り除くことができますが、腸へ移動してしまったら内視鏡での除去は不可能。絶食をしたり、痛みを抑えるといった対処治療しかなくなることもあります。放置して、もし腸に穴が空いてしまったら、外科手術をすることになるかもしれません。

(8)アニサキス症は内科、消化器内科、胃腸内科へ

「お腹が痛い、アニサキスにやられたかも?」と思ったら、アニサキスが腸に行ってしまう前に病院へ! 対応してもらえる科は、内科、消化器内科、胃腸内科。重症になる前に、診察を受け、痛みが強い場合は、できるだけ早く取り除いてもらうのが賢明です。

アニサキス予防と対策のまとめ

・鮮度がいいうちに食べる(内臓はできるだけ食べない)
・生で食べる場合は、よく見てから食べる
・アニサキスを見つけたら、取り除く、または身を刻む
・しっかり加熱、または冷凍する
・アニサキスにやられたと思ったらすぐに病院へ!

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