次の「巻王 MAKI-OH」は誰だ... 反物巻の速さ・美しさを競う選手権

2018年3月28日(水)6時0分 Jタウンネット

着物を持っている、よく着ているという人は少なくないと思われるが、反物を巻いたことがある、日常的に巻いている人、となるとほとんどいないだろう。そうした経験があるとすれば、恐らく呉服屋など和装関係、織物業界の人だと思われる。


そんな、着物にとっては不可欠だが、ちょっと特殊な技術「反物巻」の速さと、巻き上がった反物の美しさを競う大会が開催されていることをご存知だろうか。京都織物卸商業組合などが主催する、その名も「巻王 MAKI-OH」。


幅38cm、長さ13mの反物を巻く


呉服屋などの店先を見ればわかるが、着物に仕立てる前の反物は芯に巻かれた状態で置かれている。この巻物状の反物は機械などで巻き取っているわけではなく、呉服屋で巻き芯という芯を用意し、手でくるくると巻き取っているのだ。


「巻王 MAKI-OH」はこの反物を巻くという行為にフォーカスした、まったく新しい競技(?)と言える。しかし、反物を巻くことはおろか、着物を着ることもめったにない記者には、競技の様子の見当もつかない。


大会の内容や意図について詳しく知るため、Jタウンネットが京都織物卸商業組合に取材を申し込んだところ、「きものステーション京都」運営委員会で「巻王」の運営にも携わる田上智一さんにお話を聞くことができた。「巻王」開催のきっかけについて、田上さんは次のように話す。


「反物は幅38cm、長さ13mの布ですが、これだけの長さの布地を使う衣服というのは、世界でもなかなかありません。まして反物を巻くという行為は、呉服屋だけの特殊な技術といっても過言ではないでしょう。そんな反物巻を競技化してみると面白いのではないか、と考えたのが『巻王』誕生のきっかけでした」

田上さんによると、呉服屋に入ると、まず巻き芯を渡され家で反物巻の練習をするように言われるとのこと。練習を重ね、手早く美しく巻く技術を身につけるのだ。たかが布を巻くだけとはいえ、高価な反物に傷や汚れをつけないよう巻くのは、熟練の技術が必要だろう。


そんな、業界の人にしかできない反物巻を競うことで、技術向上や反物業界を盛り上げていきたいという思いが「巻王」には込められていた。


とはいえ、さすがに普段は早巻きをすることはなく、巻きの速さを競うのは「巻王」のために設けた独自のレギュレーションだ。


「一般的に速い人なら40〜50秒と言われていますが、『巻王』出場者は30秒台です。昨年の優勝者は32秒で、この記録はなかなか破られないのではないかと思っていましたが、今年は29〜30秒で巻く人が現れました。年々技術が向上していると感じています」

もちろん美しさも重要だ。38cmという幅をどれだけきちんと維持できているか、巻き切ったあとの反物は電子ノギスで計測され、1cmもずれれば計測不能で失格となる。


「普段から反物巻をしている業界の方々が参加されるので、皆さん自信やプライドをお持ちですが、人前で時間を計られながら巻くということはなかなかありません。緊張感もあり、思うように手が動かないこともあるようですね」

2016年に始まった「巻王」だが、開催を重ねることで評判になり、呉服業界でも「今年の巻王は何秒で、誰になったんだ」と話題になるほどの大会になってきたと、田上さんは嬉しそうに話す。


今年は東京の織物卸商業組合が東京大会として「巻王 THE EAST」を開催。東京代表として京都の「巻王」に参加した。中国地方でもチェーン店を展開する企業が中国予選を開催し、島根チームが参加するなど、全国規模の大会へとなりつつある。


3人1チームで参加するリレー方式の団体戦「巻王阿修羅」も今年から設置され、企業や団体がより参加しやすい体制も整えられているようだ。


基本的に呉服屋や小売チェーン、組合参加者など、呉服業界の人であれば、誰でも「巻王」に参加できるのだが、例えば業界外の一般人が練習して参加することはできるのだろうか。記者にはできる気が微塵もしないが、ひょっとして密かに家で巻きの練習をしている人もいるかもしれない。


「参加をご希望されればお断りする理由はないのですが、一般の方が参加してもうまく巻くのは難しいでしょう。家で反物を巻き続けるわけにもいかないでしょうし、簡単に練習できることでもありません。『巻王』では、呉服業界の人間が切磋琢磨する様子を見ていただければと思います」

Jタウンネット

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