家じまいのトラブルは年間100件以上! 巻き込まれないために気をつけるべきポイントとは

2025年3月29日(土)12時0分 マイナビニュース


こんにちは、行政書士の木村早苗です。終活という言葉が一般化した今、家じまいの話題もよく耳にするようになりました。
実家じまいに苦労した経験談とプロからの学びをまとめたタレント・松本明子さんの書籍は、この分野で既にベストセラーに。また、俳優の高橋英樹さんは、娘である真麻さんの助言で生前整理をされています。「33トンの荷物を3カ月でゼロにした」という驚きの規模だっただけに、ご存じの方も多いのではないでしょうか。子に任せるか自ら行うかは人それぞれではあるものの、対象的なお二方の結果を見ると、やはりなるべくなら計画的に、親子で情報共有しながら進めた方が楽に違いありません。
家じまいは短期決戦で
と言っても、親と子ではかけられる時間や作業量は違ってきます。親自ら行う場合は、家をどうするか(住み替える、子どもが住まない場合は売却か賃貸に出す)を考えながら進められますし、残すか否かの判断も即できるので、比較的余裕を持って進められます。他方、子が行う場合は、家に関わる話しあいがなかったり、空き家状態で時間が経っていたりすることも多いため、作業や負担が増えがちです。空き家の傷みは想像以上に早いため、遠方の方でもできるだけ早い取り組みをおすすめします。
心を決めたら、1カ月、3カ月などの片付け期間とともに、引っ越しの日や廃品回収業者の来る日、といった締切も設定しましょう。人間の心理的にも、区切りがある方が圧倒的に進みがよくなります。
並行して、(親世代は住み替えも視野に入れながら)片付け後の家の扱いも検討します。売却する場合も、家と土地を丸ごと更地にして土地のみ残すといった選択肢がありますし、リフォーム直後や痛みの少ない住宅であれば、賃貸に出すことも可能です。地方などではUターン者向け空き家バンクに登録する方法もあります。次に紹介する準備期間に、土地や建物の価値を鑑定してもらったり、相続税と贈与税の負担を比較してもらったりと、専門家に助言を受けるのもよいでしょう。
一番大切なのは、片付け前の3つの準備
片付けそのものの手順は、親自身でも子でもほぼ同じ。それよりも大切なのが、片付け前に行う3つの準備です。
《片付け前に行う3つの準備》
1.重要な書類や物品を1カ所(1箱)に集め、目印をつけて保管する
2.個人情報を含む物品をまとめる
3.価値のある物品をまとめる
1つめの準備は、屋内に散らばる重要な書類を一カ所に集めること。具体的には土地や建物・マンションの権利証、お墓の権利証、生命保険等の証券、預貯金通帳・キャッシュカード、貸金庫の鍵(カードキー)、印鑑や印鑑登録証、株券やゴルフ場の会員権、マイナンバーカード・通知カード・暗証番号書類、年金証書、自動車やバイクの登録書類などがあたります。たくさんの捨てる荷物と一緒に捨ててしまわないための対策です。わかりやすい目印をつけておくと安心です。
2つめは、個人情報を含む物品です。手紙、写真やアルバム、住所録や電話帳、日記、記録用ビデオテープやDVD、家計簿、パスポート、メールアドレスやパスワードのメモなど、個人が特定されると困る書類や物品はシュレッダーにかけると安心です。パソコンやスマホ、携帯などデジタル機器のデータ消去も忘れずに。持ち主がおらずパスワードがわからない場合は業者に依頼します。
これらは思い出に関わるものが多く、分類に時間がかかりやすいのが特徴です。先に区分けすると物量の把握ができるので、そのまま残す、デジタル化するなど次の対応が考えやすくなります。一旦すべて残し、家じまい後に取りかかるのもいいでしょう。
最後に価値があるものをまとめます。コレクションや価値の高い物品、人に譲りたいものなどです。貴金属や高級時計、高級万年筆、美術品や骨董品、民芸品や工芸品、デザイナー物の家具、高級・貴重な酒などもこの段階で分別します。
書籍や着物、おもちゃ、スニーカー、レコードなどこだわりのあるものは手放しづらい分野です。捨てるのは忍びないという場合は、趣味仲間やお店の方と相談してお譲りしたり、書籍は寄付を募っている施設やブックカフェなどに問い合わせてみたりするとよさそうです。家を空けることが第一なので、あまりに進まないようなら、利用料は必要ですが、トランクルームなどに一旦移してしまうのもアリです。ちなみに子どもさんが作業を行う場合、遺言書があれば寄付の希望がないかも確認してください。
片付けを頼むなら信頼できる専門家に
いよいよ片付けです。家族で地道に、親戚や友人に手伝ってもらう、業者に依頼するといった方法がありますが、本記事では業者に依頼すると仮定し、選ぶ際の注意点をご紹介します。実は、終活や家じまいの需要の増加とともに生前整理・遺品整理サービスのトラブルも増えているからです。
下記は、2013〜2017年に国民生活センターに寄せられたトラブル件数のグラフです。年間、平均100件ほどのトラブルが起こっていたことがわかります。
2020年には総務省が「遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書」を発表しています。遺品整理サービスは、日本標準産業分類でもまだ独立した分類はされておらず、業の範囲や内容が曖昧な段階にあるとのこと。価格やサービスに大きな差が生まれ、トラブルが頻発している背景にはこんな理由もあるのでしょう。調査対象は遺品整理サービス業者ですが、生前整理サービスにも当てはまる内容です。同報告書もトラブルを分類し紹介しています。
では、トラブルに遭わないためにはどうすればいいのでしょう。最も簡単な見分け方は、その企業が作業に必要な許可や資格を所有しているかどうかの確認です。
回収した一般ゴミを処理するには、一般廃棄物処理業許可を市区町村から取得するか、そうした業者と連携している必要があります(一般ゴミの処理はできませんが、産業廃棄物処理業許可も行政から営業許可を受けた企業という部分では安心感があります)。
また家具や家電などを中古販売する場合は、都道府県の公安委員会による古物商許可が必要です。民間資格ですが、生前整理や遺品整理に特化した資格を持つ遺品整理士がいる企業もよいでしょう。片付けから廃棄処理、リサイクル対応から清掃をワンストップで行ってくれるところが多く、業者によってはお仏壇の供養までも代行してくれます。一見高く感じても、作業の品質や価格など、最終的に満足のいく結果になることが多いはずです。最近では、業界の品質向上を目指して独自に活動を行う企業や団体も増えているため、参考になるでしょう。
一般社団法人心友:兵庫県の遺品整理・生前整理サービス企業3mind(スリーマインド)が立ち上げたNPOのサイト。加入企業を全国から探せます。
引っ越しのサカイ:関西の一部地域では家電や家具、ピアノなどの引き取りも始めており、委任状を出すことで粗大ゴミを引き取ってもらえる地域もあるそう。引っ越しを伴う住み替えの際に便利です。
業者は必ず数社の見積を取り、複数人で見て決めましょう。他サービスと同様、相見積を嫌がる、契約を急がせる、運営の所在が不明確な企業は避けるべきです。自ら行うにしろ、子に託すにしろ、人生の去り際は美しくありたいもの。この辺りで一度、家じまいについて考えてみませんか。
行政書士/木村早苗 きむらさなえ 1975年滋賀県生まれ。立命館大学大学院卒業。出版社勤務を経てフリーランスライターとして幅広い分野で執筆する。2020年に地元にUターンし、2024年に行政書士登録。行政書士川木清事務所を開設し、障害福祉サービス施設申請業務や遺言書作成や相続サポートを専門に活動中。「川木清(かわきせ)」とは曾祖父の代から使われてきた目印。ねこと音楽と洋裁が好き。 この著者の記事一覧はこちら

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