「老後資金」が全世代でお金の不安トップに、背景は? - 三井住友信託銀行調査
2025年4月2日(水)13時25分 マイナビニュース
三井住友信託銀行が設置している「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」は3月27日、老後資金不安に関するアンケート調査の結果を発表した。調査は2025年1月、全国の18〜69歳(ただし関連業種(金融、調査、マスコミ、広告)従事者を除く)11,435人を対象にインターネットで行われた。
○お金の不安の第1位は「老後資金」
調査の結果、お金の不安の1位は、年代を問わず「老後資金」となった。なお、同様の調査を毎年、過去6回にわたり実施しているが、この傾向に変わりはない。
○老後資金不安の理由
老後資金不安があると回答した人にその理由を尋ねたところ、年齢層を問わず「老後の生活費の水準がわからないから」との回答が多数あった。また、若年層では「年金額の水準がわからないから」「年金を貰えるかどうかがわからないから」との回答が多数あったが、それらの回答は年齢が上がるにつれて減少傾向が見られた。
「(リタイア時に準備しておきたい)老後資金」は「老後の生活費総額」と「老後の収入総額」の差額であると想定し、各項目についての意識を調査した。
○老後資金・老後生活費・老後収入に対するイメージ
まず、「老後資金」(公的年金のほかに、自分で準備しておく金額)として必要な金額をたずねると、どの年代においても4割から5割の方が「わからない、見当がつかない」と回答している。
また、老後の生活費の想定に関してたずねたところ、回答者の約半数(49.0%)が「わからない・答えたくない」と回答している。リタイアへの意識が高まってくる50歳代でも「わからない・答えたくない」比率が5割程度あり、年齢が高くなっても「想定できていない」比率が減少していない点が特徴といえる。
なお今回、50歳代・60歳代に「現時点の生活費」と「老後生活費(見込み)」を尋ねている。現時点の生活費が25万円以上の区分においては、老後生活費の見込みを現時点の生活費のおおよそ7〜8割程度と想定していることが確認できた。リタイア後の生活費について「現時点の生活費から極端に減らさなければいけない」という意識ではないようだ。
次に、老後の「収入」についての意識を見てみると、柱である「公的年金」については、公的年金の受給額を「イメージできていない」比率が全年代で58.6%と約半数を占めている。年齢が高くなるにつれて公的年金の受給額がイメージできる割合は高くなるが、50歳代でも「イメージできていない」方が多数派となっている。
また、公的年金の受給額をイメージできている人について受給額の感想をみると、金額が「想定よりも少なかった」または「想定よりもやや少なかった」と感じる人の割合が半数以上となっている。
公的年金額の把握経路によって、公的年金額に対するイメージが異なる傾向もわかった。FP相談、公的年金シミュレーター、所属企業の人事部・年金基金への確認で年金額を把握している人は、「少ない」との感想にあまり偏っていない一方で、新聞やテレビ、インターネットの報道・ニュースやねんきん定期便から年金額をイメージしている人は、「少ない」との感想に偏っている。
なお、「ねんきん定期便をもとに年金額をイメージしている」と回答した人の約1/3が50歳未満となっていた。50歳未満のねんきん定期便には、これまでの加入実績に応じた年金額しか記載がなく、今後の加入状況に応じた年金額の記載がない。50歳未満のねんきん定期便は、実際に受け取れる金額よりもかなり少ない金額を記載しているため、年金額が少ないというイメージ形成につながっている可能性があると思われる。公的年金シミュレーターでは今後の加入状況に応じた年金額がシミュレーションできるため、普及が望まれる。
また、企業・団体に勤める方にとって「退職金・企業年金」はリタイア後の収入を支える柱の1つとなる。勤め先の退職金・企業年金について、約半数が「制度」としては知っており認知度は高いようだ。一方で、退職金・企業年金の「支給水準」のイメージは、40歳代までは3割程度、50歳代でも4割弱と高くないことがわかった。公的年金は、ねんきん定期便などで個人別に通知されるので認知している割合が高くなっているが、退職金・企業年金に関しては、従業員が支給水準を含めて「知っておく・調べておく」取り組みや、企業が従業員に「伝える」取り組みが望まれる。