過去最大規模「Sea Japan 2024」が開催 - 高い省エネ性能を実現した次世代製品も

2024年4月19日(金)10時17分 マイナビニュース

「Sea Japan 2024」が4月10日〜12日にわたり東京ビッグサイトで開催された。3日間で約2万人の来場者が訪れ、併催展として「Offshore & Port Tech」を新たに立ち上げるなど、過去最大規模となった本イベント。気になるブースを取材した。
○■620社・団体が出展する過去最大規模での開催
日本の海事産業が一同に集結する「Sea Japan」。1994年に横浜で第1回目を開催し、今年30周年を迎え、日本企業と海外企業の出会いを生むネットワーキング構築の場、新たなビジネスチャンスを生み出す場として、重要な役割を果たしてきた。
「Sea Japan 2024」では、海事産業で導入されてきた最新製品・技術・サービスから、海洋再生可能エネルギーが代表するブルーエコノミーなど新産業への拡大を目指し、オフショア・港湾技術展「Offshore & Port Tech 2024 in Sea Japan」を初開催。32か国・地域から620社・団体が出展し、過去最大規模での開催となった。また、海事産業ではDX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)が重要なキーワードとなっており、「Sea Japan」においても大きなテーマとして取り上げられている。
○■無人運航船システムで働き方を改善
「Sea Japan」に特別協力として参画する日本財団のブースでは、「ゼロエミッション船プロジェクト」の取り組みを紹介していた。
同プロジェクトでは、2050年までに内航分野でのカーボンニュートラルを実現するため、2026年度末までの期間に3つのコンソーシアムと共同し、世界に先駆けて水素を燃料とした船舶(ゼロエミッション舶)を開発。実証実験の実施を予定する。
水素燃料電池洋上風車作業船コンソーシアムでは、水素燃料電池、リチウムイオンバッテリー、バイオディーゼル燃料を動力源とするハイブリット旅客船「HANARIA」を開発。今年4月4日には世界初の水素燃料電池×バイオディーゼルを活用し、洋上風車作業船の実現に向けた実証実験を行った。
ゼロエミッション船の開発は、カーボンニュートラル実現を推進するだけでなく、日本が世界的に高い技術レベルを有する水素技術やエンジン技術などを活かせることも特徴とのこと。その航行システムなどは今後、内航貨物船や国内の旅客船など、さまざまな船で導入促進の可能性が見込まれているという。
最先端の技術やシステムを使い、安全な航行や安定的な物流の維持への取り組みを目指す未来の船の実用化に向けての開発も進んでいる。
国内の多種多様な30社によるDFFAS (Designing the Future of Full Autonomous Ship)コンソーシアムでは、無人運航船の社会実装を想定し、包括的な無人運航システムを開発。すでに技術実証は終了し、2025年までに無人運航船の実用化を目指す。
本コンソーシアムではコンテナ船「すざく」を実験船とし、包括的な無人運航船システムによって、東京港~津松阪港~東京港の往復約 790kmの区間を航行したという。陸上から船舶を監視・支援する「陸上支援センター」を千葉県千葉市に立ち上げ、通常は海上の船員が担う気象・海象、交通流、船上機器状態などを陸上から把握。無人運航船の航行を支えたほか、有事の際には陸上支援センターから遠隔操船に切り替え、システムの安全性と安定性を担保した。
日本財団ブースでは、当時の陸上支援センターにおける遠隔操作船機能を有したコクピットが、デモ操縦席として再現されていた。海事産業では、次世代人材が不足している状態が続いており、人手・人材不足は今後ますます深刻化することも予想されている。こうした無人運航船の実用化は、より働きやすい環境を実現する取り組みの一環でもあるようだ。
また、「かもめプロペラ」のブースでは、ケイセブン社と共同で新しい発想で設計された世界初の舵システム「GATE RUDDER(ゲートラダー)」を展示。
従来、プロペラの後方に取り付けられ、船が前に進む推進力の抵抗になっていた舵だが、ゲートラダーでは単体で揚力により推進力を生み出すダクトプロペラの“ダクト効果”に着眼。ダクトプロペラの非対称形状を舵の形状として採用している。
舵で推進力を生み出す新しい発想で設計されたゲートラダーには、大きく3つの特徴がある。
ひとつは高い省エネ性能だ。2017年に竣工したゲートラダー搭載の船舶と、前年に建造されたゲートラダーを搭載していない同型船でデータを比較すると、ゲートラダー搭載の船舶は海上試運転において14%という高い省エネ性能を示す結果に。また、実航海における1年間の就航データを比較しても非常に高い省エネ性能が確認されており、この省エネ性能はゲートラダーシステム最大の特徴となっている。
優れた保針性能・旋回性能も大きな特徴だ。ゲートラダーでは2枚の非対称舵の生み出す効果により、微小舵角でもリニアに回頭する高い保針性能を実現。旋回性能においてもIMO(国際海事機関)基準を大きくクリアし、特に港湾内での速度を想定した旋回試験での非常に高い旋回性能が確認されている。
最後は次世代の船舶に要求される静かな船内環境に貢献する静音性能。プロペラの両サイドに舵板が配置されるゲートラダーは、プロペラ後方に配置される従来の舵と比較して5dBの船内騒音の低減が確認されたという。
なお2025年には、Sea Japanと同様に隔年で開催される国際海事展「バリシップ2025」が行われる。日本最大の海事都市・愛媛県今治市での開催に向けたトークセッションも行われた。
伊藤綾 いとうりょう 1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催 @tsuitachiii この著者の記事一覧はこちら

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