骨折して気がついた!「“健康意識の高い人の食事”ではいけない」脱・粗食のススメ

2024年4月22日(月)8時0分 週刊女性PRIME

松田美智子さん

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「粗食じゃダメなんです。肉や魚をしっかり食べないと」

 と料理研究家の松田美智子さん(68)。63歳を過ぎて立て続けに骨折し、それまでの食生活をがらりと変えたという。

両足首と左腕を相次いで骨折

 最初の骨折は趣味で始めたマラソンの練習中のこと。60歳を過ぎてからマラソンを始め、コーチの指導で500mダッシュを何本かこなした。

「なんか痛いなぁと思って練習が終わったあと整形外科に行ったら両足首が疲労骨折を起こしてたんです……」(松田さん、以下同)

 足首を固定しながら生活し、ようやく治りかけた2か月後、今度は左腕を複雑骨折してしまう。それも出張中の香港のホテルで。

「ようやく足首の固定も外れたので香港で少し観光もできて。軽くワインを飲んで夜、部屋に戻ってシャワーを浴びたんですけど、コンタクトを外していたのでよく見えなくて……シャワーヘッドをフックにかけるときに体勢を崩して勢いよく床に身体を叩(たた)きつけてしまったんです」

 左肩から腕にかけてひどい痛みを感じ、フロントに連絡を入れると近くの病院をすすめられたという。そのまま病院で夜を明かし、翌朝CT検査で左腕の複雑骨折がわかる。医師からは帰国してから手術するか、すぐに手術を受けるかの選択を迫られた。

「診てくださったドクターは実績もあり、信頼のおけそうな方だったんです。その日の夕方なら、たまたま時間が空けられるとおっしゃったので手術していただくことにしました。骨折の処置は早いほうがよいと過去の経験からも学んでいましたし」

 かくして緊急手術を受け、手術は成功。手術の翌々日には当初の予定どおり帰国。なかなかハードな経験だが松田さんはさらりと言う。

「まぁ起こってしまったことは仕方ないです。それよりも腕に入れた金属プレートが保安検査場でビービー鳴ったらどうしよう……と通過するまで気がかりでした(笑)」

 無事帰国できたものの、もうひとつ気がかりがあった。それは医療費のこと。当時、海外出張も多く、海外旅行保険に入っていなかったのだ。

「あとになってクレジットカードの保険で補償されることがわかったんですが、私の場合は腕に入れたプレートを抜く再手術をしないといけない……。それも補償してもらうには、半年以内に再手術をする必要があると聞いて、ちょっと焦りました」

 すぐに理学療法士とのリハビリを開始。骨の再生を促すよう食生活も大きく変えた。

「半年で骨を再生させなくちゃ再手術ができないと言われたから必死でした。リハビリセンターで若い人が次々に治っていくのを見ては『もう治ったの?』と驚くやら、うらやましいやら(笑)」

 懸命なリハビリと食生活の改善が実を結び、半年後には骨も再生。無事、再手術も成功したという。そんな松田さんの生活を支える食事の極意は「脱・粗食」だ。



脱・粗食(1):肉や魚を積極的に

「健康意識が高い人ほど野菜をたっぷり、じゃこやしらすなどのカルシウムもしっかりとっていると思いますが、残念ながら、それだけではタンパク質が不足してしまいがちなんです」

 タンパク質は、筋肉や皮膚、髪の毛、血液など身体をつくるために欠かせない栄養素。香港で手術を担当してくれたドクターからも骨の再生のためにタンパク質を摂取するようすすめられたという。

「骨といえばカルシウムと思いきや、カルシウムは十分とれている人が多いから、むしろタンパク質をとりなさいと言われました。さらに、かかりつけ医からも男性なら1日300g、女性でも150gは赤身肉を食べたほうがいいと言われたので、とても驚きました」

 実は栄養素の吸収が落ちてしまいがちなシニア世代こそ良質なタンパク質をしっかりとることが重要なんだとか。

 松田さんはさっそく医師たちのアドバイスを実践。豆腐や大豆製品などの植物性タンパク質だけでなく、肉や魚から動物性タンパク質も積極的に摂取している。

「人間の身体ではつくれない必須アミノ酸をバランスよく含むのが肉や魚などの動物性タンパク質なんです。牛肉の赤身、鶏むね肉、豚肉、そして鮭やまぐろなどをしっかりとるようにしています。

 特に豚肉は、タンパク質だけじゃなくビタミンB群も豊富。ビタミンB1に関しては、牛肉や鶏肉の5〜10倍もあるというから、どんどん活用したいですよね」



脱・粗食(2):卵は1日2〜3個

 卵は1日2〜3個を目安に摂取しているという。

「正直いうと、以前は1日に1個も食べない日もあった気がしますが、タンパク質を意識してから改めて見てみると、卵は良質なタンパク質がとれるし、気軽に買える身近な存在。料理に使うのはもちろん、冷蔵庫にはゆで卵を常備しています。

 コンビニなどで売っている味つき卵のように塩味にしたり、マーブル模様に味つけしたゆで卵には『大理石卵』と名づけて、調味料やスパイスで味つけを変えて楽しんだりしています」

「卵は1日1個まで」といわれたのは、実は過去の話。1個あたり190mgのコレステロールを含んでいるが、厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」でもコレステロールの上限量はなく、卵に関しても特段気にする必要はないそう。



脱・粗食(3):骨にはビタミンD

 タンパク質に加えてもうひとつ、骨に大切な栄養素がビタミンD。カルシウムの吸収を助け、骨の成長を促進するビタミンDは健康な骨を維持するために欠かせない。

「ビタミンDは鮭も豊富ですが、私が注目しているのは干ししいたけ。しいたけに含まれるエルゴステロールという成分が紫外線に当たってビタミンD2に変化して8倍にもなるんです」

 ビタミンDは紫外線を浴びることで体内でも合成できることもわかっている。近年では行きすぎた紫外線対策でビタミンDが不足しているケースもあるので、紫外線対策もほどほどに、適度に太陽に当たりたい。

「骨折直後は骨密度が同年代の平均値よりも低かったんですが、今では食事改善の効果もあり、若い人の標準値まで向上しました」

脱・粗食(4):加工肉も上手に活用

 お歳暮やお中元でハムやベーコンをもらうことが多い松田さん。つい持て余してしまいがちだけれど、使い切るように工夫しているという。

「ハムは、サワークリームやハーブなどのスパイスなんかを加えてペーストにしたりしています。ベーコンも悪くなる前にフライパンで炒(い)ってカリカリに。

 手軽にタンパク質も摂取できますし、贈ってくださった方への感謝の気持ちを込めて、おいしいうちに使い切るようにしています。加工肉は無添加のものがいいですね」

 安いときにスーパーでまとめ買いしたハムやベーコンにも使える手だ。



一人だからこそ健康でいなければ

 健康でいなければ、という危機感にも似た思いが強いのは一人暮らしゆえ。11年前、夫を長い闘病生活ののち見送った。義理の両親、父も看取り、母は現在、介護施設に入居している。

「コロナ以前は一緒に食事に行ったり、交流もできていたんですが、面会もできなかったコロナ禍を経て、認知症の症状が進んでしまいました。今は月に2回ほど、面会に行っています。さみしくもありますが、プロにお任せしたほうが安心ですし」

 夫の闘病生活は長く、入院生活も5年にわたった。

「最初に肺がんを患い、手術がうまくいって数年後に完解したんですが、そのうち腎臓が悪くなり始めてしまって。入院生活が3年目に入ったあたりでドクターから『もう完治は望めません』と言われました。

 本人は治ると信じていたんですが、正常圧水頭症や腎不全なども併発してしまい、どんどん悪くなっていくのを私はただ見守ることしかできなくて」

 夫の病気が判明した時、松田さんは45歳。28歳から始めた料理教室も盛況、料理番組への出演やレシピ本の執筆など多忙を極めていた。

「自分の仕事は午後2時までとか決めて、仕事のあと病院に行っていました。大変なこともありましたが、仕事もあったから乗り切れたようにも思います。原稿を書くことは病室でもできますしね」

 夫が他界し、終活を意識した数年前、それまでの住まいを整理し、引っ越しを決めた。新居は大きな公園の目の前。

「緑豊かな公園で、犬のお散歩をしている人も多いんです。せっかく公園の前に住んでるんだから、私も犬を飼いたいなぁと思って」

 実は松田さんは大の犬好き。長らく犬との生活に恋い焦がれていたが、3年前に知り合いから紹介してもらい、念願の犬を迎えることに。今は朝晩の散歩で1日1万歩も歩くんだとか。





「犬がいなければ一人でこんなに歩くこともないでしょうね。以前はマラソンもしていましたが、今はもっぱら犬と歩くのがちょうどいいですね。犬と私、双方の体力維持、筋トレと思って日々歩いています(笑)」

 1周2kmの公園をぐるりと2周するのが日課。愛犬との散歩で筋肉を鍛え、「脱・粗食」のマインドで丈夫な骨と身体をつくる。

 松田さん流の日々を楽しむ工夫を見習いたい。

豚ヒレ肉の梅蒸し

 良質なタンパク質たっぷり



材料/2人前

・豚ヒレ肉……300g(厚さ1.5cmに切って、手のひらで押さえて平たくする)

A〔紹興酒……大さじ2、塩・白こしょう……各少々〕

B〔包丁でたたいた梅の果肉……大さじ1と 1/2、酒……大さじ1〕

・長いも……250g(皮をむいて厚さ1.5cmの輪切り)

【作り方】

(1)豚肉とAを合わせ15分おく。

(2)(1)を平皿に並べ、強火で蒸した蒸し器に入れて7分蒸し、Bを小さじ半分ぐらいずつ、豚肉にのせ、10分蒸す。長いもをそれぞれの上に置き、さらに3〜4分蒸す。長いもの火の通り具合はお好みで。冷めてもおいしい。

※蒸しすぎ注意。

※梅パワーで肉がやわらかくなる。

※白こしょうをきかせて。



麹マリネのポークジンジャー~山盛りキャベツと~

 麹の力で豚肉やわらか



材料/2人前

・豚肩ロース……400g(厚さ7mm/脂の部分にかくし包丁を4〜5か所入れる)

A〔生麹……大さじ1と1/2、しょうがのすりおろし……大さじ1、しょうゆ……大さじ3、酒……大さじ3、みりん……大さじ1、黒こしょう……少々〕

・キャベツ……1/2玉

・パセリの葉……1茎分

・ごま油……大さじ1

B〔マヨネーズ……大さじ2、Aの残り……適量、酒……少々〕

【作り方】

(1)Aを合わせ豚肉を15〜30分漬ける。キャベツは芯を除き縦半分に切り、3枚を重ね、パセリの葉先2〜3個をはさみ、ゆるく巻いて押さえ、細いせん切りにしてペーパータオルに包み、冷蔵庫に入れ、ぱりっとさせる。

(2)フライパンにごま油を中火で熱し、豚肉を1枚ずつ並べ、両面が焼けたら取り出す。豚肉をすべて焼き終わったら肉をフライパンに戻し、Bを加えて肉にからめる。器に(1)のキャベツを小山に盛り、上にキャベツが見えなくなるように豚肉を盛りつける。肉の余熱でしんなりしたキャベツを巻いていただく。丼にしてもグッド!

※キャベツを切る際、色みとなるパセリも巻き込んで切ると、一挙両得。きれいにちりばめられる。

※キャベツは豚肉で巻くことで、しんなりするだけでなく、甘みも立って、よりおいしくいただける。

なんちゃって塩卵

 欲しいときにすぐ使える



材料/作りやすい分量

・卵……4個

・塩……80g(水の8%)

【作り方】

鍋に水5カップ、塩を入れてよく混ぜ、卵を入れ箸でゆっくり混ぜながら中火でゆでる。湯がふつふつしてきたら、弱火にして混ぜずに10分ゆで、火を止めそのまま冷ます。水ごと保存容器に入れ、冷蔵庫で約1週間保存可能。



大理石卵

 味のアレンジも自在



材料/作りやすい分量

・卵(室温に戻す)……4個

・塩……少々

A〔酒……大さじ3、しょうゆ……1/4カップ、赤とうがらし……1cm〕

【作り方】

(1)鍋に卵と、卵がかくれる量の水と塩を入れ、中火にかけ、沸くまで箸で混ぜ、沸いたら15分、弱めの中火でゆでる。

(2)卵を水にとり、冷めたら殻全体にひびを入れる。小鍋で温めたAとともに密閉袋に入れ、冷蔵庫で一晩、ときどき位置を変えながら味と色を入れる。

※脂質異常症など、持病のある方は主治医にご相談ください。

しいたけと根菜の煮物

 もどさず時短&食感よし



材料/4人前

・干ししいたけ(軽く水をかけ湿らせて30分くらいおく)……4枚

・ごぼう(皮ごと縦半分に切り、ひと口大の乱切り)……30cm

・れんこん(ひと口大の乱切り)……200g

・絹さや(斜め半分に切り、さっとゆでる)……5枚分

A〔水……1カップ、酒……1/4カップ〕

・三温糖……大さじ1と1/2

・うす口しょうゆ……大さじ1〜1と1/2

【作り方】

(1)土鍋にAを入れ、干ししいたけを加え、中火にかける。沸いたら、ごぼう、れんこんを入れ、三温糖を加えて、紙ぶたをして10分煮る。

(2)火を止めてしいたけを取り出し、軸を切る。2枚をひと口大のそぎ切りにし、残り2枚も鍋に戻し、粗熱が取れるまでおく。再度火にかけ沸いたら味をみて、うす口しょうゆで調味する。器に煮物を盛り、絹さやをあしらう。

※ごぼう、れんこんは水にさらさない。



教えてくれたのは……松田美智子さん●料理研究家。季節感を大切にした美しく作りやすい料理に定評がある。新刊に『65歳からの食事革命』(文化出版局)。




取材・文/飯田美和 イラスト/ピクスタ

写真・レシピ/すべて『65歳からの食事革命』より

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