【定番名品シリーズ】万能にして洒落感も兼備する「ハイゲージニット」ならこの5つ、名門から日本の新鋭まで

2024年4月23日(火)8時0分 JBpress

長年にわたって作られてきた定番品は、“当たり前”の良さを持っている。誰もが日常的に使えて、しかも品格あるスタイル作りの役に立つ。そして流行にとらわれず、末長く愛用できるところも魅力的。なかでも独自の哲学を込めつつ、素材や製法にもこだわりを尽くした真のマスターピースを紹介する

写真/青木和也 スタイリング/荒木義樹(The VOICE) 文/長谷川剛 編集/名知正登


“ハイゲージ”なら万能にして洒落感も兼備する

 ニット素材を使った、かぶり形式のトップス。一般的にセーターと呼ばれるアイテムは、シャツなどの上に重ねられる最もベーシックな保温服のひとつ。なかでも丸首形状であるクルーネック型は、インナーのシャツが襟付きだろうと襟なしだろうと重ねやすいところがポイントだ。そして着回しという観点で考えるなら、ハイゲージと呼ばれる細編みによる無地の薄仕立てが最も便利。というのも、薄手であるからジャストサイズのジャケットの下に着込んでも窮屈でないし、夏以外の3シーズン(特に春先や秋口などの微妙な気温の季節)において、衣服内温度の調整役として非常に有効であるからだ。

 洒落感の面でもハイゲージセーターはメリットがある。細編みに用いられる細糸は原材料の繊維が細く長いことが理想であり、希少がゆえに高級品に用いられる。また、厳選の細糸は独特の光沢感を持ち、繊細に編み上げることでしっとりとした優雅な艶を放つところが最大のポイント。細糸には羊毛やカシミヤ、コットンなどの種類があり、ニット専業ブランドによるハイゲージセーターは、シンプルな無地モデルでも、えも言われぬ高級感を醸し出すのだ。シンプルでさり気なく、しかもリッチ。大人のお洒落に欠かせないエッセンスが、この一枚につまっている。

1. Johnstons of Elgin


自社一貫製造がもたらす完成度に注目

 英国は歴史の深いブランドを数多く擁するが、ジョンストンズは創立1797年。製品のクオリティを保つため、1811年からは紡績から染色そして縫製に至るまで、自社一貫にて製造を行うスコットランド唯一のメーカーだ。長い歴史のなかで数々の賞を獲得してきたが、2013年にはチャールズ皇太子から英国王室ご用達の許可証(ロイヤルワラント)を授けられている名門である。

 なかでもカシミヤ製品は1851年から手掛けており、選別や扱いにおけるノウハウも世界トップクラス。このセーターはカシミヤの最高品質の糸を用いた珠玉作だ。薄手ながらしっかり暖かく、しかも軽量であるのが魅力。編み目が繊細なハイゲージであることはもちろん、身ごろの両わきに縫いしろが存在しないホールガーメント製法である。つまりどのような姿勢でも、フィットしつつしなやかな着心地が楽しめる一枚となっているのだ。

2. CRUCIANI


世界の高感度ショップが認めるイタリアンな繊細ニット

 1966年、イタリアはペルージャに創業したニット専業ファクトリーに端を発するクルチアーニ。ブランドとしてのスタートは1993年。早くから世界最高峰のニット糸工場であるカリアッジ社の素材をメインに用い、高品質かつ洗練されたニットコレクションを展開させている。なかでもシルクカシミヤのセーターは、着心地良く洒落て見えることから世界の著名なセレクトショップから強く支持されているという。

 定番人気を誇るこの「27ゲージ コットン クルーネックニット」は、特別に繊細な綿糸を用い、1インチ(約25ミリ)に27もの緻密で均一な編み目を持つのがポイント。人体の動きに添う編みパターンが作り出せる希少なフルファッション編み機を使った製造ゆえ、フィットしつつも抜群の着心地。

 また、袖口や裾部分のリブは少しだけ硬めになるよう高密度に織り上げている。それによりコットン製でもダレることなくフォルムをキープさせるなど、随所に細かい配慮を加えて仕立てられている。

3. DRUMOHR


英国的な生真面目さとイタリアの華やかさを持つ高級品

 スコットランドのダムフリースにて1773年に設立されたニット専業のドルモア。英国式ニットの伝統を込めた製品は、徹底的に着心地を追求したディテール作りがひとつのポイント。特にドルモアが業界に先駆け作り出したシームレス製品は、縫い目を持たないことから優しく包まれるがごとくストレスフリーな着心地が高く評価されている。

 ドルモアの製品が特別であるのは南スコットランド特有の水質の良さにも由来した。現在の生産はイタリアを拠点とするが、当時のタッチを求めて北部ブレシア、クインザーノの地下水をわざわざ引いて使用するほどこだわりを尽くしている。

 この一着はブランドの定番「モダンシリーズ」に属す30ゲージウールセーター。保温性に加え通気性にも富む厳選のメリノウールを使用しており、4シーズンにわたって使えるという驚きのセーターである。素材自体がドルモアのみの使用に限られたエクスクルーシブなウール糸を使用しており、ヌメリと光沢感がさりげなく高級さを主張する仕上がりだ。

4. JOHN SMEDLEY


英国ニットの伝統を進化させる創業1784年の古豪

 18世紀創業の歴史あるニットメーカーはいくつかあるが、ジョン スメドレーこそは由緒正しい英国ブランド。1784年に創業し、現在にいたるまでイングランドの東ミッドランド地方、ダービーシャーの同じファクトリーにて操業を続けている。産業革命時に生まれた編み機から生まれた極細編みのファインゲージニット。ジョン スメドレーはそのテクニックを発展させ、200余年の知見をもって今もファインゲージを追求している。

 またその名を世界に広めるきっかけとして、特別な素材使いも見逃せない。シーアイランドコットンは繊維が細く長く、シルクのような艶とカシミヤのごとき肌触りを持つ“綿の宝石”。クルーネックモデルの「DAVID」は、シーアイランドコットンを用いつつ、繊細を極めた30ゲージ編みの生地を採用。さらに袖や身ごろ等の各パーツを、ひと目ひと目職人がハンドリンキングにて繋いでおり、着用に際しゴロつきや当たりのないスムーズな着心地も魅力なのである。

5. BATONER


日本の丁寧な物作りを生かした期待の新進ブランド

 かつて羊毛の産出や紡績が盛んであった山形県寒河江市。その地にて1951年に創業した奥山メリヤスは、国内ニットシーンにおける実力派。現在にいたるまで多くのOEMを手掛け着実に成長し、2013年に満を持してオリジナルブランド「バトナー」を設立し話題となっている。同県内には紡績工場や染色工場などニット生産に適した環境が整っており、それぞれの職人同士が連携し作り上げるシステムをバトナー製品は採用。

 味わい深くもモダンに洗練された同ブランドのニットウェアは、デビュー直後から強く支持されているという。日本人らしい丁寧な物作りはシンプルな定番型セーターだからこそ、その良さが際立つもの。写真のクルーネックセーターもそんなドメスティックブランドが打ち出す渾身のカシミヤシルク製。良質な原毛を生む寒暖差のある地域から取り寄せたカシミヤは軽量ながら優れた保温性を持つ。さらにシルクをブレンドすることで上品な艶感をも放つ逸品に仕上がっている。

筆者:長谷川 剛

JBpress

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