<部屋はスッキリ>が気持ちいいと頭ではわかっているけど…「片付けられない」に隠された2つの理由を公認心理師が解き明かす

2024年5月1日(水)12時0分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

厚生労働省が行った「令和4年 国民生活基礎調査」によると、約46%もの人が「悩みやストレスを抱えている」と答えたそう。なかなか解決できない悩みは、「もうひとりの自分」が、心を守るために無意識に引き起こしているかもしれません。公認心理師・橋本翔太さんは、その心の防衛機能を「ナイト(騎士)くん」と名づけました。今回は、自著『わたしがわたしを助けに行こう —自分を救う心理学—』より、つらい悩みに隠されたナイトくんの目的を解き明かします。

* * * * * * *

片付けられない、すぐに散らかってしまう人のナイトくんとは?


ナイトくんが、よかれと思ってがんばるから問題が起きる──。

少し意味がわかりづらいでしょうか。具体例をあげましょう。

クライエントさんとの心理セッションの中で、よく出てくるお悩み相談のひとつに「片付けられなくて困っている」というものがあります。

部屋を片付けてきれいにしておきたい、片付いた状態をキープしたい。
強く思っているのに、いざやろうとすると、めんどうくさくなる。
すぐ散らかしてしまう。
こまめに片付けられない。

どうして片付けられないのだろう……。

心当たりがある方も多いかもしれません。

じつはこれは、心の防衛隊であるナイトくんがよかれと思って「あなたが片付けられないように仕向けている」のです。

つまり、無意識には「片付けない方がいい理由」があり、だからナイトくんが、部屋が散らかるようにあえて仕向けていると言い換えることもできます。

「片付けない方がいい理由!? そんなのあるわけないでしょ!」
「片付いた方が気持ちいいし、こんな汚い部屋はイヤなんです!」
「いったい、どこに片付けない方がいい理由があるんですか?」

そう思う気持ちもすごくわかります。

でもこれは、顕在意識、つまり現時点で自分が自覚できる心の場所で考えると理解できないだけ。心理セッションを深めて心の深い部分にアクセスすると、驚くような理由が見つかります。

この理由はその人の生育歴、性格、過去の経験によって個人個人で異なるのですが、ここでは代表的なものを2つ紹介します。

「片付けられない」に隠された理由1 思考がクリアになり不安が強くなる


片付けて部屋がスッキリすると、頭の中もスッキリしますよね。どこに何があるのかも把握できて、気持ちもクリアになります。

片付けによって思考がスッキリして人生がうまくいく……。そんな片付け本、皆さんも読んだことあるはずです。

何より、「掃除しなきゃ」「片付けなきゃ」「やらなきゃ」というモヤモヤ思考がなくなります。

ところがこれによって、普段抑え込んでいた不安や焦燥感などが湧いてきてしまう人は少なくありません。

仕事の不安、健康の不安、将来の不安、人間関係の不安……そんな不安が、クリアになった思考によって、より感じられやすくなってしまうのです。

つまり、部屋が片付いていないことで思考も気持ちもモヤモヤしている。

「このモヤモヤのおかげで、不安や焦燥を感じなくてすんだ」という、メリットがあったのです。

部屋が散らかっている方が落ち着くという人は、その雑然とした環境にいることで、不安といった不快な感情にふたをしている可能性が非常に高いのです。

部屋が片付かないことは不快です。

しかし、不安や焦燥を感じる方がもっと不快なので、部屋が散らかっていることでより不快な感情・感覚を制御していたのです。

賢いナイトくんは、不安に襲われるくらいなら、部屋を片付けないことであえて浅いレベルでモヤモヤさせておいて、あなたを守ろうとしていたわけです。

「片付けられない」に隠された理由2 自由が奪われる感覚がする


まだピンとこないと思うのでもうひとつ例を出します。

片付けができない、したくない人の親子関係の話を聞くと、お母さんやお父さんが片付けにうるさく、いつも「片付けなさい」と怒られていた背景をもつ人は少なくありません。


(写真提供:Photo AC)

加えて、親へのわだかまりや、がまんしていたことが積み重なっていることが多い傾向があります。

片付ける

親の支配下で言うことを聞く

自分の気持ちを捻(ね)じ曲げられる

自分の気持ちをわかってもらえない

という、感覚につながっているケースが非常に多いです。これは、いまは別世帯に住んでいて家に親がいなくても、あるいは親が亡くなっていても、です。

親への強いわだかまりが残っていると、「片付ける=親に屈服して自分の人生の自由を奪われる」という、無意識の感覚に自動的につながってしまうのです。

それは受け入れたくないことなので、その反発として、つまり、親への反抗心、敵愾心(てきがいしん)ゆえに、片付けることを無意識に拒否してしまうのです。

片付いていない方が、まだマシ


頭では部屋がスッキリした方が気持ちいいとわかっている──。

しかし、片付けてしまうと、親に抑えつけられるような感覚が(はっきり自覚のできない無意識の領域で)湧いてきてしまう。

だから、そんなイヤな気持ちを感じるくらいなら、片付けないようにと、ナイトくんはあなたが片付けるのを止めようとします。

片付いていない方が、まだマシなのです。

ナイトくんは、親子関係の傷を思い出させないようにするため、刺激しないようにするため、親に支配されてきた悲しい気持ちや怒りに触れないようにするために、あえて片付けられないようにあなたを仕向けてくれているのです。

片付けないことが、傷を思い出さない、傷から身を守る手段になっているわけです。

このように、片付けられないというような、どう考えても解決した方がいいに決まっている問題であっても、心の深いところまで踏み込むと、それを解決しない方がいい、という事実に気づきます。

これが、ナイトくんの働きによるものなのです。

あえて問題を解決させないことで、あなたの心を守っているのです。

※本稿は、『わたしが「わたし」を助けに行こう —自分を救う心理学—』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

婦人公論.jp

「心理」をもっと詳しく

「心理」のニュース

「心理」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ