美輪明宏「はんなり」は元々色を表す言葉。瀬戸内寂聴さんとの祇園の宴を思い出す
2024年5月12日(日)12時30分 婦人公論.jp
歌手、俳優の美輪明宏さんがみなさんの心を照らす、とっておきのメッセージと書をお贈りする『婦人公論』に好評連載中「美輪明宏のごきげんレッスン」。
5月号の書は「はんなり」です。
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「はんなりした人」とは
京都の人は、「はんなり」という言葉をよく使います。「はんなりとしたお人やなぁ」「はんなりとしたお味」などなど。響きも美しいし、素敵な言葉だと思いませんか?
「はんなり」はもともと、色合いを形容する言葉です。「はんなりとした色」というと、パステルカラーのような淡い色のことだと思っている方も多いようですが、実は華やかで明るく、なおかつ気品があるのが「はんなり」。「花あり」が語源という説もあるようです。それがやがて、人の佇まいなどに対しても使われるようになりました。
私が考える「はんなりした人」とは、しっとりとした色気がありながら、決してむき出しにせず、それでも自ずと滲み出てくる人。なにより、花が咲いたような明るさがあるのです。
「はんなり」に美の集積を学ぶ
そういえば以前、瀬戸内寂聴さんに連れられて、祇園のお座敷で楽しい時間を持ったことがありました。祇園はまさに「はんなり」の世界。京焼の器に盛りつけられた美しい料理、芸妓さんの着物や所作、御抹茶の鮮やかな緑色と繊細な京菓子、屛風などのしつらい、灯籠に照らされた坪庭の陰影など、京都の華やかな美の集積という感じでした。
私はかねて、「人は保護色の生き物」と言っています。観るもの、着るもの、聴くもの、読むもの、すべてが美しいと、自ずとその人も美しく変化します。なにも贅沢を勧めているわけではありません。明るい色の上品な服を身につけ、上等な食器はお客様用にとっておくのではなく、普段から自分のために使う。そんなふうに生活を美で彩り、心を美で満たすのです。
美が身近にあれば、使う言葉や立ち居振る舞いも自ずと美しくなり、人にも思いやりを持てるようになります。それが、はんなりした素敵な人への道なのです。
●今月の書「なんなり」
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