133連勝中のレスリング・藤波朱理、狙うはパリ五輪の金メダル「母の料理は、ダシの利いた薄味で最高です」

2024年5月14日(火)12時30分 婦人公論.jp


2023年、世界選手権で優勝を決め、父の俊一さんと日の丸を掲げてウィニングラン(撮影:粟野仁雄)

レスリング女子53キロ級でパリ五輪代表に内定した藤波朱理選手、20歳。昨年9月にベオグラード(セルビア)で行われたレスリング世界選手権での優勝が、代表選出の決め手となった。長らく負け知らずで、連勝記録は吉田沙保里さんの119を抜き133に(3月21日現在)。パリでは金メダル候補の筆頭格といわれている(取材・構成・撮影:粟野仁雄)

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<前編よりつづく>

減量には 神経を使って


164センチ。53キロ級のなかでは長身の部類だ。日本人離れした手足の長さに恵まれ、タックルに来られても足を取られることはほとんどない。練習を見に来た登坂絵莉さんは、「攻守ともに完璧。本当に欠点のないレスリングをしています。自分の足を相手に触らせない技術は驚異的です」と話す。

その言葉を藤波選手に伝えると、「相手との距離の取り方は、もしかしたら少しは優れているのかもしれません」と謙遜する。

——父は日体大のコーチに就任し、東京で一緒に暮らしてくれています。三重県にある私の母校(いなべ総合学園高校)の教員と監督も続けているので、東京と往復する生活。母は、父の勤める高校で「寮母さん」として寮生たちのために食事を作っているのですが、4月からは東京に来てくれることになりました。

母とは、何でも話します。父も東京で2人暮らしの間は頑張って料理を作ってくれていましたが、やっぱり母の料理は最高です。母がおかずを実家から送ってくれるのが楽しみで。ダシの利いた薄味でおいしいんですよ。

お寿司が一番好きですけど、嫌いな食べ物はほとんどありません。最近は53キロを維持するため、減量にも神経を使います。筋肉を落とさないようにタンパク質は確保しながら、脂っこい食事や濃い味つけのものはなるべく避けています。

レスリング人気を高めるには?


試合で緊張することはまずありませんが、試合の前には必ずある曲を聴いて臨みます。大会でチャンピオンフラッグを持って走る時にかかる曲です。曲名は忘れてしまいましたが。(笑)

吉田沙保里さんの連勝記録を抜いたと報じられ、伊調馨さんの189という連勝記録(不戦敗を除く)と比べられます。でもそういう数字は、まったく意識していないんです。

3月には練習中に右肘を脱臼し、手術を受けました。4月に予定していたアジア選手権は欠場。外国選手と長く試合をしないと勘が鈍るので不安もありますが、国内での調整でオリンピックには十分、間に合います。

今からパリ五輪までの間で、私はもっと強くなれると思っています。不安をなくすためにもぎりぎりまで自分を追い込んでいきたいです。


至学館大学の出稽古で。常に試合を想定して真剣勝負

至学館大学の栄監督は、「2週間見たなかで、技術もすごいが、精神面の強さがほかの選手と違うと驚いた。スパーリングでも、もう一本、もう一本と自分を追い込む。これまではお父さんに言われてきたからかもしれないが、今は自分で自分を追い込むことができている。怪我に強い体も作っていて、パリの金メダルは間違いないでしょう。57キロ級選手を相手にしても勝っているから、パリの後は階級を上げても活躍しますよ」と、早くも「パリ以後」にまで期待を寄せる。

——将来はレスリングを中心に、スポーツの指導者になりたい。だから大学では教員免許の取得を目指しています。外国に行くことも多いので、英語など語学の勉強も欠かせません。

レスリング以外のオフの時間はリラックスしていますが、テレビはほとんど観ませんね。ビデオ映像などで外国選手を研究したりはします。

パリ五輪に向けて特にこの選手を警戒するということは、ありません。誰が来てもしっかり戦う準備をしているところです。残された課題は、組み手とディフェンス。これを完璧にしたい。そしてパリで金メダルを取って、両親と兄と一緒に、現地で乾杯したいですね。

日本でレスリングは競技人口が多いとは言えないマイナースポーツ。五輪や世界選手権でこそメダルが期待されるが、「オリンピックでしか注目されない競技」と揶揄されることもある。

——もっとレスリングの人気を高めるにはどうしたらいいか、ですか? それは、私が活躍することです。

婦人公論.jp

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