追い風参考ながら9秒台が連発!関東インカレの男子100mは“世代のエース”栁田が9秒95、守が9秒97を叩き出す

2025年5月15日(木)6時0分 JBpress

(スポーツライター:酒井 政人)


前年の1部王者が2部で貫録の走り

 今年で104回目を迎えた関東インカレは大学対抗戦で各校の応援が熱い学生陸上界の花形大会だ。

 男子は1部(16校)と2部(3部のある種目もある)があり、今年は100mが異様な盛り上がりを見せた。

 この時期の相模原ギオンスタジアムはホームストレートが強い向かい風になることが多く、100mはバックストレートで実施。そして2部から“快記録”が飛び出した。

 最初の主役となったのは100mで10秒13の自己ベストを持つ守祐陽(大東大4)だ。守は昨年の男子1部100mのチャンピオン。しかし、チームが1部残留を逃したために、最終学年は2部での出場になった。

「1部で戦いたかった気持ちが強くて、1部の結果を気にしながら2部を走りました。先に走る分、プレッシャーを与えたかったですし、1部よりいい走りをしたいと思っていたんです」

 守は準決勝1組で追い風参考ながら山縣亮太(慶大)が保持していた大会記録(10秒23)を上回る10秒07(+3.6)をマーク。会場を沸かすと、決勝でさらにタイムを短縮する。

 鋭いスタートで飛び出すと、グングンと加速。後続を引き離して、トップでフィニッシュラインを駆け抜けた。電光掲示板には「9.98」という数字が灯り、会場にどよめきが起きた。

 公式タイムは9秒97(+3.9)。追い風参考ながら9秒台を叩き出したのだ。

「驚きが一番強いです。まさか出ると思っていなかったのでビックリしています」と守。9秒台で駆け抜けた“感触”については、「追い風がすごく強かったので、走っていて気持ち良かったという感じはありました」と表現した。

 守は昨季、4月の織田記念を制して注目を浴びたが、6月の日本選手権準決勝で左腓骨筋を痛めると、9月の日本インカレは準決勝で敗退した。冬季は「体づくり」を見直して、筋力アップで体重が2kgほど増えたという。2週間前の日本学生個人選手権は4位と振るわなかったが、最後の関東インカレで快走した。

「あまり欲張らないように、準決勝のいい動きのまま走りました。タイムはあまり考えていなかったので、驚き8割、うれしさ2割ですかね。去年から20〜30m付近の加速のパワーが増しただけでなく、最初の飛び出しも良くなりました。このタイムが出たんですけど、(公認での)9秒台は別のスピードという感じはするので、まずは10秒0台を出して、着実にタイムを縮めていければなと思います」


“世代のエース”が守のタイムを上回る

 男子2部100m決勝の25分後に行われた同1部100m決勝には“世代のエース”である栁田大輝(東洋大4)が登場した。

 1・2年時に関東インカレの男子1部100mを連覇して、世界陸上に2年連続で出場。昨年は関東インカレを欠場したが、パリ五輪の4×100mリレー(予選)に参戦している。そして最後の関東インカレ。招集所で守の9秒台を知った栁田のスイッチが入った。

「先に出されたというか、あいつだけに盛り上げさせるのは嫌でしたね。この風なら(9秒台が)出せるかなと思って意気込んでいました」

 栁田の自己ベストは日本歴代7位タイの10秒02。昨年の日本学生個人選手権準決勝では追い風参考ながら9秒97(+3.5)をマークしている。

 2年ぶりに出場した関東インカレは11時過ぎに行われた準決勝1組を10秒22(+3.1)でトップ通過した。「珍しく決勝前にいい感じだったので、今回はスターティングブロック(のセット位置)を変えずに臨みました。『勝つだろう』と見られていたと思うので、どれだけ自分の走りに徹することができるかを意識しました」と決勝は自分の走りを貫いた。

 力強く飛び出すと、序盤からトップを奪う。中盤以降は誰も寄せ付けず、スピーディーに100mを駆け抜けた。フィニッシュタイマーは「9.93」でストップ。ゴール直後は両手を広げてガッツポーズを連発して、大歓声を呼び込んだ。

 公式タイムは9 秒95(+4.5)。追い風参考記録ながら9秒台をマークして、関東インカレで2年ぶり3度目の優勝を果たした。

「インカレ特有の雰囲気がありましたし、一緒に走る後輩たちには負けられません。主将をやっているので、しっかりと結果を示すことができました。去年の9秒97を超えられたので良かったかなと思いますけど、今度は公認で9秒台を出したいなと思っています」

 栁田は自己ベストの10秒02を2年連続でマークしており、同世代で9秒台に最も近い男だ。今季は4月の日本学生個人選手権の準決勝でマークした10秒09がシーズンベストで、今回の“9秒台”が今後に向けてのステップになりそうだ。

「ちゃんと階段を登るようにいい走りになってきているかなと思います。来週のセイコーゴールデングランプリはもっといい走りをしたいですし、アジア選手権を経て、最終的には日本選手権での勝負になると思うので、日本選手権で一番いい走りができるようにちゃんと練習をしていきたいなと思います」

 レース後、9秒台を出したふたりが顔を合わせると、栁田が「あぶね、負けるところだった」と守に声をかけた。

 なお関東インカレと同時期に中国・広州で開催された世界リレーの男子4×100mリレーには井上直紀(早大4)と愛宕頼(東海大4)が参戦。ともに予選と決勝を走り、日本チームの4位に貢献した。

 栁田、守、井上、愛宕は高校3年時(21年)のインターハイ100mのファイナリスト(栁田が1位、井上が2位、愛宕が3位、守が8位)。4人は5月18日のセイコーゴールデングランプリ100mの出場を予定している。東京世界陸上の参加標準記録は10秒00。日本人では5人目となる9秒台に誰が最初に到達するのか。“栁田世代”の高速バトルはまだまだ続く。

筆者:酒井 政人

JBpress

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