荻窪のまちに登場したグリーンスローモビリティに乗ってみた - 担当者「“新たな移動の価値”を考えるきっかけになれば」

2025年5月19日(月)10時5分 マイナビニュース


杉並区では、2024年11月25日より、荻窪駅西口を発着駅として荻窪南側地域を巡回するグリーンスローモビリティの定期運行をスタート。荻窪を彩るまちの風景のひとつとして、大きな注目を集めている。
荻窪の街中に登場した「グリスロ」とは
「グリーンスローモビリティ」(略称:グリスロ)とは、時速20km未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービスのことで、その車両も含めた総称となっている。杉並区では、カート型車両とバス型車両の2台が運用されており、朝9時から夕方までの間に計24便が運行。「荻窪駅西口」を起点に、回遊式日本庭園として知られる「大田黒公園」、内閣総理大臣を務めた近衞文麿の旧宅で、国の史跡にも指定されている「荻外荘公園」などを巡り、およそ20分ほどで再び荻窪駅西口へと戻って来る。
運賃は100円。現金だけでなく交通系ICカードなどのキャッシュレスにも対応している。実際に乗車すると、カート型ということもあり、20km未満というスピードも特に遅いと感じることはなく、普段とは異なる目線で、荻窪の街並みを眺めることができる。観光名所へ向かう人、荻窪駅までの足として利用する人など乗客は様々。中にはグリスロに乗ることが目的で、荻窪駅で乗り、そのまま一周して荻窪駅で降りる人も少なくないという。「もともとグリスロは過疎地域などに対してアプローチすることが多く、荻窪のような街中を走っているのはかなり画期的」と、カート型のグリスロを開発するヤマハ発動機の担当者も驚きの声をあげる。
観光客と住民、両方のニーズを叶える新たな移動手段を杉並区に
杉並区がグリスロを導入することになったのは、令和3年度に行われた職員向けの研修に講師として訪れた、東京大学公共政策大学院 特任准教授で、グリーンスローモビリティ協議会の会長を務める三重野真代氏による講義がきっかけだったという。
「都市の観光や高齢化社会における移動支援といった話の中で、グリスロのことを紹介していただいた」と振り返るのは、杉並区 都市整備部交通企画担当課長の尾田謙二氏。新たなモビリティの導入を模索していた杉並区にとって、グリスロは地域性にもっとも合致するものとして期待が高く、令和6年度に「荻外荘公園」が開園することが決まっていたこともあり、荻窪駅南側地域の回遊性の向上を目指して、導入への検討が進められた。
昨年度の運用開始に先駆けて、令和4年度より実証実験を開始。「ゆっくりとした運行で景色をじっくり楽しめた」「乗っているだけで楽しい」など、実際に乗車した人からはおおむね肯定的な意見が寄せられ、中には「乗るために何時間も待った」という人も現れるほど。ただ、カート型のグリスロについては、「風を感じられる」「開放感が良い」といった絶賛の声と同時に、「扉がなくて不安」「少し寒い」などの意見も含まれていたことから、バス型のグリスロもあわせて導入されることになったという。
区民からは「ほかの地域でも導入してほしい」の声
2024年11月に定期運行がスタートして以降、1日平均で70人以上の利用している杉並区のグリスロは、区民の足として着実に認知度を高めており、ほかの地域でも導入してほしいという声も少なからずあがっているという。「エリアを増やしてほしい、停留所を増やしてほしいというお話は伺っていますが、荻窪エリアの地域性に合致するというのが導入経緯なので、評判が良いからといって、他のエリアへの導入は今のところ考えていません」と話す尾田課長は、「地域よって最適なモビリティは異なってくると思いますので、他のエリアに導入するとすれば、グリスロが良いのか、それ以外のモビリティが良いのか、あらためて検討することになります」と続ける。
「荻窪駅までの足として利用される方もいらっしゃいますし、もちろんドンドン使っていただきたい」という思いはありつつも、今回のグリスロの導入は観光ニーズにあわせたものであることが大前提。そもそも杉並区は住宅地が多く、観光名所自体は少ないため、三庭園など観光名所に恵まれた荻窪だからこそのグリスロであることを強調する。
現在、15〜30分間隔での運行となっているが、運転手を除くと、カート型で5名、バス型で7名という乗車定員となっており、混んでいる時間帯はなかなか乗車できないということも少なくない。杉並区発MaaS「ちかくも」を使えば、グリスロが今どこを走っているかといった運行情報は確認できるが、「そもそもの空き情報を知りたいという声もいただいています」とのことで、「今後、そのあたりとの連携を進めることで、空き情報を表示するだけでなく、乗客の方のデータを分析したり、運行頻度の適正化をはかったりしていきたい」との展望を明かした。
生活を豊かにする「新たな移動の価値」を考えるきっかけに
「単なる派生需要でしかない移動というものに対して、今回の取り組みを通して、皆さんにもう一度“新たな移動の価値”というところを考え、生活の質を豊かにしてほしい」という尾田課長。あくまでもグリスロはひとつのツールでしかないが、「荻窪という地域のまちづくりを一体となって進めていける強力なコンテンツである」との見解を示し、「池袋のIKEBUSなど、グリスロを導入する自治体は増えていますが、杉並、そして荻窪で展開されているグリスロはまったく異なるものだと思っているので、“荻窪モデル”とでも言えるような、ほかの地域の方が真似をしたくなるようなモデルを作っていければ良いなと思ってます」と今後のさらなる発展を約束した。

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