世界的人気の観光地・由布院に新しい観光列車「かんぱち・いちろく」が誕生、真っ黒な車両はインパクト大!

2024年5月21日(火)8時0分 JBpress

文・写真=山﨑友也 取材協力=春燈社(小西眞由美)


久大本線開通の功労者が列車名に

 由布院といえば九州屈指の温泉地であり、今や世界的にも有名な観光地。豊後富士とも呼ばれ、なだらかで優しいシルエットの由布岳を筆頭に、湖や美術館、博物館など見どころが満載の街は常に国内外の人々であふれ、活気に満ちている。

 そこへこの春、由布院への観光客もターゲットにした新しい観光列車が誕生した。博多から別府までを結ぶ「かんぱち・いちろく」である。不思議な名前のこの特急はどのような列車なのか、さっそく紐解いてみよう。

 まずはそのネーミングから。「かんぱち・いちろく」とは二人の人物の名前からつけられた。「かんぱち」は大分県九重町に江戸時代から続く八鹿酒造(旧舟来屋)の三代目である麻生勘八氏。地元は山々に囲まれて交通が不便だったため、1905年から九州横断鉄道の敷設運動に乗りだし、国会での法案可決に長年尽力した。

 いっぽうの「いちろく」は衛藤一六氏。大分県農工銀行の頭取を努めた人物で、所有していた土地を国鉄に無償で譲渡し、鉄道を由布院に通すように働きかけた。その結果、鉄道は当初日田からまっすぐ大分につなげる計画だったが、迂回して由布院盆地を大きく曲がることとなる。このカーブを地元では「一六線」や「一六曲がり」とも呼んでいる。つまり現在の久大本線に多大な貢献をした人物名が列車名となっているのである。

 車両はといえば、特筆すべきは今までJR九州の列車のデザインを数多く手がけてきた水戸岡鋭治氏がデザインしているのではなく、株式会社IFOOが担当していることだ。同社は木材を活かしたデザインを得意としており、JR九州と連携してローカル線の駅を活用したまちづくり事業にも取り組んでいる。日豊本線の霧島神宮駅をリノベーションするなどの実績を持っている。

 その外観は驚くことに、ひとことでいうと真っ黒だ。見た目にもインパクトと重厚感があり、車体に沿線の景色が映り込むように艶のある黒が使用されている。そこに久大本線の路線図がゴールドのラインで描かれており、鮮やかなアクセントとなっている。


車内には畳や杉の一枚板のカウンターも

 車内を探索してみると、1号車は3名掛けのソファー席がメインとなっている。大分や別府の風土をモチーフにしているため、座席は火山や温泉を想起させる赤色がベースで、テーブルには大分産の杉が用いられている。運転席の後ろには熊本県八代産のい草を使用した畳の個室も備わり、靴を脱いでゆったりくつろげる。

 2号車はこの列車最大の魅力であるラウンジだ。大きな窓からは美しい風景が存分に楽しめ、沿線の食べものや飲みものも味わえる共用スペース。驚くことにカウンターテーブルに使われているのは樹齢約250年、全長約7.88mの杉の一枚板。今までこのような内装をした列車は見たことがなく、斬新なアイデアと迫力に感服してしまう。

 3号車は2〜4名で落ち着いて過ごせる半個室型のBOX席。福岡・久留米エリアの平野や山々の青をベースとした青のデザインで、こちらのテーブルには福岡産の杉が使用されている。


アートあふれる車内で汽車旅を満喫

 もちろん車内では福岡と大分県の料理人が厳選した食材で作られた弁当や重が用意され、季節の味に舌鼓も打てる。各列車は曜日ごとにメニューがそれぞれ異なっているので、気に入った食事から乗車する列車を決めるのも良い手かも。途中駅には「おもてなし駅」が設定され、沿線地域の人々と触れあえたり特産品なども購入できたりする。

 またこの列車はアートが車内の特徴でもあり、福岡大分両県にゆかりのあるアーティスト10組による沿線の歴史や文化、自然を感じさせる全24点のアートが展示されている。車内の至るところに時には大胆に、そしてさりげなく飾られた作品群を眺めていると、従来とは異なる汽車旅の魅力が感じられる。

 このように車窓の風景と地元の食材、アートというおもてなしが主役の「かんぱち・いちろく」に乗車するには専用ホームページで予約するか、主な旅行会社で申し込める。ツアー会社での販売もあるので、気になる人はチェックしてみよう。

 最後に「かんぱち・いちろく」の車両の形式は、今まで国鉄やJRでは前例がない英数字の並び2R形。1号車は2R-16、2号車は2R-80、3号車は2R-38の形式となっており、それぞれに意味が隠されている。ぜひ乗車してスタッフやクルーにその答えを聞いてみよう。

筆者:山﨑 友也

JBpress

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