つくば市育ちの駐日ジョージア大使だから知る「恥ずかしがり屋」茨城県の魅力とは?自然・交通・科学…あらゆる面が実はスゴイ!

2024年5月22日(水)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

観光庁の発表によると、2023年の訪日外国人旅行者数は約2507万人で、過去20年間で4番目に多かったそう。インバウンド需要が回復しつつあるなか「日本人は、多くの日本の美点を見過ごしている」と語るのは、SNSで絶大な人気を集めるティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使。ジョージア生まれ、日本育ちの大使が興味深いと感じた、日本人にとって「当たり前」の文化とは? 自著『日本再発見』より、その「日本らしさ」を一部ご紹介します。

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謙虚だけど実はすごい茨城県


以前、茨城県知事からオファーをいただき、水戸(みと)で講演する機会がありました。そのとき私は茨城のすばらしさについてお話しさせていただきました。

実は私の日本生活のなかでもっとも長い時間を過ごしたのが茨城県つくば市です。小5から高3までの多感な時期を茨城県で過ごしたのです。

茨城はスポーツが盛んです。元横綱・稀勢(きせ)の里(さと)は茨城出身ですし、サッカーでは鹿島(かしま)アントラーズがありますし、社会人バスケチームも強い。政治でもたとえば衆議院議長(2023年12月時点)の額賀福志郎さんが茨城出身です。

また、言わずもがなで農産物もおいしいものがたくさんあります。

たとえば全国一の栗の産地であり、岩間(いわま)の栗はその味に惚(ほ)れ込んだ著名なパティシエが、わざわざ茨城にケーキ屋さんを開業したほどです。ほかにも江戸崎(えどさき)かぼちゃやウドなど、渋い作物に強いのです。

水がいいからお酒もおいしく、常陸野(ひたちの)ネストビールはクラフトビールとして国内外の賞を受賞しています。

自然豊かで日本で2番目に大きい湖である霞(かすみ)ヶ浦(うら)や、「西の富士、東の筑波(つくば)」と言われた名山・筑波山、紅葉の名所で日本三名瀑(めいばく)のひとつである袋田(ふくろだ)の滝もあります。とにかく魅力たっぷりな土地なのです。

にもかかわらず、やや影が薄いのが茨城です。

なぜかといえば、県民のみなさんが謙虚で恥ずかしがり屋さんが多く、あまり自己主張をしないからです。そのぶん、やさしい人ばかりです。

つくばエクスプレス開業で時代が変わったものの…


実は茨城県は東京から1時間もかからず行け、関東近県からの通勤や観光にも不自由がありません。

でもちょっとしたトリックがあります。


『日本再発見』(著:ティムラズ・レジャバ/星海社)

さて、茨城から東京に行くにはどの県を通らないと行けないでしょうか?

これは私が中学校の時に社会のテストで出た問題ですが、答えは埼玉県と千葉県です。

「え、ふたつも越えないといけないの?」と思うかもしれません。埼玉と千葉を通過する区間はほんのわずかなのですが、しかし茨城と東京は間に2つの県を挟んでおり、心理的にたいへん遠く感じてしまいます。特に私がつくば市に住んでいたころには、東京に出る機会は月に1回あるかないかでした。

それがつくばエクスプレスが2005年に開業した後ではずいぶん変わっています。画期的なことに、つくばから秋葉原まで45分で行けるようになったのです。

それまでは常磐(じょうばん)線の牛久(うしく)か土浦(つちうら)に行くか、つくばセンターからバスに乗る必要があり、時間ももっとかかりましたし、何より心理的に遠い気がしました。

しかし、つくばエクスプレス開業で時代が変わりました。茨城から見たらもはや東京は遠くないのです。

でも東京から見ると、茨城に通勤される方以外は意外とそれに気づいていないのです。これが東京を中心とするメディアで、茨城があまり扱われない理由だと思います。

こんなことを茨城の方にお話ししたら「この人は本物の茨城人だ」とお褒めいただきました。

科学研究の中心・つくば市


そんな茨城県のなかでも、また日本にとっても、つくば市は重要な場所です。

資源がない日本は、科学とテクノロジーを使った商品開発やもの作りによって繁栄を築いてきましたが、その研究の中心のひとつがつくばであり、さまざまな研究機関、施設が密集している場所なのです。

産業的な意味でも大事な場所ですし、すぐにお金になるわけではないけれども人類の知の営みとしてきわめて重要な基礎科学の研究においてもそうです。

たとえばKEK(高エネルギー加速器研究機構)では、最先端の物理学を駆使した素粒子(そりゅうし)の研究・実験を行っています。

ジョージアの関係者が視察する機会があり、私もご一緒したことがありますが、ここには、実在するのかわからない素粒子を見つけるためだけに設計された超巨大な加速器があり、茨城から岐阜にある実験施設に向けて粒子を放つという壮大なスケールの実験をしているのです。

世界的に見ても、これほどの規模の施設はほかにはスイスやアメリカくらいにしかないそうです。

科学、技術、研究は日本の繁栄の土台


この研究には普通の意味での生産性、経済に役に立つ商業化の可能性があるかといえば、ありません。

KEKの方は「人類の夢のためにやっている」と説明されていましたが、こういうことにまで国家が予算を付け、威信をかけて研究している、この精神が日本を先進国たらしめたゆえんでしょう。

科学、技術、研究が日本の繁栄の土台にあるのだという信念があるのだと思います。

近年では財政難から文科省が大学の研究予算を削っていることがたびたび報道されていますが、日本には科学研究、技術開発における国際的な卓越性を決して失ってほしくありません。

私は小さいころから広島でもつくばでも父に何度となく研究室に連れて行ってもらいましたから、理系の研究者がどんな仕事をしているかはよく知っているつもりです。

私自身は1日中研究室で研究や実験をしているよりも、人と会ったり話したりするほうが向いていると思って今の外交官の仕事に行き着きましたが、父や祖父に限らず、自分の家系には科学者、研究者の類いの人が多く、論理的な思考や科学に基づいた発想は自分にもあるように感じています(実際、中学、高校時代は数学をはじめ、理系科目が好きでした)。

ですから科学やテクノロジーに携わっている人には親近感があるし、非常に尊い存在だと思っています。

※本稿は、『日本再発見』(星海社)の一部を再編集したものです。

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