夫婦の意思統一は「夜8時にテレビ見ながら」。“8人子育て”オトクサ家の「ゆるい」中学受験
2025年5月29日(木)21時15分 All About
子育てにおいて、夫婦で意思決定する場面はたくさんあります。8人きょうだいの長男が通塾なしで開成へ合格したオトクサさんは、どのようにして夫婦で子育ての方針をすり合わせたのでしょうか。お話を伺いました。
子どもの前でオープンに話し、夫婦の意思決定もそのまま行う
「実は、子育てについて改めて話し合ったことがないんです。長男が中学受験したときは下の子が0歳だったので、小さい子たちが眠って、上の子たちは勉強を始める20時くらいから、テレビを観ながら会話したくらいです」勉強に関することは、子どもの前でオープンに話し合う方針です。
「夕食は家族そろって取る方針なので、そのときに夏期講習に申し込むかなど、本人も交えて対話しています」
オトクサさんの長男は基本的に夏期講習などへ通いませんでしたが、三男は小学4年生の頃に塾の夏合宿へ参加したそう。それは本人の性格的にみんなでワイワイとした方がやる気が出ると思ったからだとか。夕食のときに本人も「行きたい」と気持ちを伝えたことから参加が決まりました。
夫婦の役割分担は、自然と決まった
通塾なしで中学受験に挑戦するオトクサさん一家。受験勉強に関しては中学受験経験があるオトクサさんが主体となり、子どもの心と健康のケアは奥様が担当していたと言います。「役割分担は自然と決まりました。僕が家事をしても邪魔になる場面が多くて、生活のことは妻に任せがちです。もちろん妻も子どものことが心配だからいろいろ調べてきて、『夏期講習は受けた方がいいのでは』と助言してくれることはありますよ」
実際、「お盆休みの4〜5日間は、志望校別の短期講習へは通った方がいいのでは」とオトクサさんの妻が提案し、長男が短期間だけ塾へ通ったことがあるそう。
このほかにも、「通わない学校の受験は意味がない」と考えるオトクサさんに対し、「1月受験の学校も受けた方がいいよ」と妻がアドバイスして、受験したこともあるのだとか。
「基本的な役割分担は決まっていますが、『こうした方がいいんじゃない』というお互いの意見は尊重するようにしています」
子育て方針「中学以降は本人の自由にさせる」
相手を尊重する考え方は、夫婦間だけで成立するのではありません。オトクサさんは子どもの意志も尊重していて、中学受験に関して子どもが「やらない」と決めたらその気持ちを優先させると言います。これまで育てたお子さんが「中学受験をやめる」と宣言した際は、受験に向けた伴走をやめた時期もありました。
「通塾なしで開成合格と伝えると、教育パパを想像されるのですが、特に子育ての方針は設けていないんです」とオトクサさん。幼児教育にも熱心ではなく、子どもたちは幼い頃からゲームやiPadに触れられる環境だったそう。
「あえて子育て方針を挙げるとしたら、『中学以降は本人の自由にさせる』くらいですね。もちろん、学歴はあった方がいいと思いますけど、『いい大学を出て、いい職に就いてほしい』と願うのは、子どものためというより親が安心したいからだと思うんです。
世の中のことをあまり分かっていない小学生の間だけ僕たち保護者がサポートして、基礎をしっかりと固める。それ以降は本人の好きなように進んでほしいです。
実際に中学や高校へ進学した長女や長男は自由にやっています。大学受験する際も、特に話し合わないでしょう。本人が進路を決めて事後報告を受けるんじゃないでしょうか」
長男が中学へ進学してから、オトクサさんは勉強面について一切口を出していないそう。その理由を、「中学受験を通じて、子どもに任せても安心という信頼関係が築けたから」と語ります。
「中学生になった子どもと一緒に勉強したり会話したりすることが楽しいと思える家庭もあると思うんです。その思いを否定するつもりはありません。うちは中学生になってまで勉強の話はしたくないということが、親子それぞれの理想だったというだけです」
一人の人間として互いを尊重し合う考え方が、家族の争いごとを避けるヒントにつながるのかもしれません。
オトクサさん プロフィール
1981年大阪府大阪市出身。小学生の時、自ら志願し 中学受験に挑戦し、私立の中高一貫校である清風中学校へ進学。中学・高校は塾に通わずに大阪大学に現役合格。現在、妻と8人の子どもとともに東京で暮らしている会社員。長男が塾なしで中学受験に挑戦する様子をまとめた新刊『通塾なしで開成合格!中学受験おうち勉強法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、子どもたちが自ら学び進めるための取り組みを、大家族ならではの日常を交えてわかりやすく伝えている。
この記事の執筆者:結井 ゆき江
フリーランスの編集者・ライター。中学受験雑誌の編集者として勤務した後に独立。小学校で発達障害グレーゾーンの児童をサポートした経験から、教育分野を中心にライターとして活動する。
(文:結井 ゆき江)