セックスを拒否し続けた妻が、ある夜いきなりキスしてきて…そのとき夫は?

2022年5月30日(月)17時0分 マイナビ子育て

最高の相性だと思って結婚した男女が、妊娠・出産を経て親になり、少しずつすれ違ってセックスレスに……これって、よくあること? せつない夫婦の胸のうちを描きます。

この作品を一気読み!【第1話から最終話まで公開中】

あの夜の記憶がない

運命の女性・美咲と結婚した大輔。幸せの絶頂を感じていたが、美咲が妊娠すると思いもかけない拒絶を受けるようになり……。

やば……惚れ直しそう。つわりに耐えながらも、仕事に家事に、頑張り屋さんの美咲。俺との赤ちゃんを守ってくれる姿は、本当に最高の女性だと思う。

妊娠5ヵ月を過ぎた頃からは、体調も回復してきたみたいだ。相変わらず、いや、前よりも綺麗になっているような気がする……。妊娠初期は夜の誘いを控えていたものの、最近は体調も良さそうだし、以前みたいにイチャイチャしたい。「医学的には問題ないみたいだよ。妊娠中のセックス」なんて、ネットで検索した医師監修の記事まで出して誘ってみた。

でも……俺の心の叫びを聞いてくれ。結構メンタルをやられてる……。誘ってもほとんど断られるのが現状なんだよなあ。この間なんて……。

「今日、どうかな?」ベッドに横たわる美咲にそっとキスをした。これは、俺たちにしかわからない「しよう」の合図だ。「できないことはないけど……お腹の赤ちゃんが心配だし」「そっか。じゃあ、やめとこう。美咲の体と赤ちゃんが一番大事だもんな」

美咲の体調と赤ちゃんが大切だから、断られても拗ねたりはしない。その程度には俺だって大人だ。でも……なんか美咲の様子が変なんだよな。断る理由は、赤ちゃんが心配だからだけじゃない気がする。心当たりがあるのは……あの夜だよな。

数週間前。

「ただいま〜。みさき〜」「きゃっ!」「あ〜癒される〜……」「ちょっと! 変なところ触らないで‼」「変なところって〜いつも触ってるとこじゃ〜ん」「大輔……飲みすぎだよ。ごめん、今そんな気持ちには……うっ」「え? いいじゃ〜ん」「ちょ、やめ……」

そこからは、覚えていない。どうしても外せない飲み会の席で、つい飲みすぎてしまって。付き合いとはいえ、へべれけに酔っぱらった俺は、どうやら無理強いをするかたちになってしまったらしい。未遂に終わったようだけれど、申し訳ないが、ほとんど覚えていないのだ。あの日以来、美咲の様子が少しおかしいように感じる。

もしかして、美咲に嫌われた?

愛を伝えたいだけなのに

不安を払拭するためにも、俺はめげずに誘うようになった。「今日、どうかな?」「ごめん。今日はちょっと」またか……。なんだか、美咲が遠くに行ってしまった気がする。まるで、営業のスランプの時のような感覚だ。ツボを押さえたトークをしているつもりでも、手ごたえのないあの感じ……。あんまり断られると、さすがにへこむ。俺、美咲に嫌われちゃったのかな?妊娠前のような愛を確かめ合うセックスをして、安心したい。そう本気で悩んでいたある日のこと。

今日は日曜日だ。「日曜日かぁ……」おっと!また心の声が漏れてしまった。毎週日曜日は、「明日から頑張ろう!」の意味も込めてセックスをするのが習慣だったから、余計に寂しいや。どうせ、今日も無理だよな。諦めていたのに、美咲が思いもよらずOKしてくれた。「今日はいいよ」「え?」「いつも断ってばかりでごめんね」「いいの⁉」あまりのうれしさに、思わず泣きそうになった。

だって数ヵ月ぶりだ。久しぶりに裸で抱き合うと、心から安心した。美咲の体は妊娠してから少し丸みを帯びてきて、胸も心なしか大きくなっているような気がする。

今夜は美咲に全身で愛を伝えるぞ、と意気込んでいたのもつかの間、「痛いっ!」「あ、ごめん」「なんか胸が張ってるみたい……あんまり触らないでもらえるかな?」「あ、そうなんだ……ごめん、痛くないようにするからさ……」

そこからは、微妙な時間が過ぎた。ここは大丈夫か、苦しくないか、とアレコレ手探りで行為をしてみるも、美咲はあまり気持ちよさそうではない。まるでクライアントをもてなすような時間が過ぎた。「ごめんね」と謝る美咲に、「なんで謝るの? 赤ちゃんを第一に考えようよ」そうは言ったものの、明らかに美咲からは性欲を感じられないし、ムードもよくない……。その日を最後に、俺はなんとなく、美咲とのセックスに対して消極的になった。

ごめん、今はそんな気分じゃない

あれから数ヶ月。美咲が産休に入り、家にいるようになったある夜、「ねえ、大輔……」ベッドでスマホをいじっていると、いきなり美咲にキスをされた。え? 嘘だろ?美咲から誘ってくるなんて珍しい。どういう心境の変化かわからないけど……俺はとっさにこう口にしていた。

「美咲。ごめん。今はそんな気分じゃないんだ」

「え……?」

なんで? と美咲が聞く前に、遮るように背中を向けた。別に美咲が嫌いになったとか、性欲がなくなったとか、そんなんじゃない。決してない。ただ、妊娠後期に入ったあたりから、お腹がいっそう膨らんできて、美咲の体はさらに変化した。そこに戸惑いを覚えなかったと言ったら、嘘になる。それに今まで散々拒絶されて、いざセックスしてみても以前のような満足感には到底及ばず、お互い違和感を持ちながらやっていることがわかってしまった。今は、そういう気分になれない。

……思えば、妊娠して以来、美咲から誘ってきたのは初めてだ。傷ついているかもしれない。でも、俺は嫌いになったわけではないんだ。今は我慢の時。産後、美咲の体調が落ち着けば、またいつものようにできるだろう。それまでは、一緒に頑張ろうな。

そして、数週間後、美咲は産院で無事に元気な可愛い赤ちゃんを出産した。

つづきます。▶︎次話「お医者さんに「夫婦生活を再開しても問題ないですよ」なんて言われたくなかった。解禁されたからって、そんな気分になれない」を読む

✅『運命の人とレスになりました。』をすべて読む

▼美咲編はこちら!

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