マクロン大統領、シンプルかつスタイリッシュなスーツスタイルは妻のおかげ?

2023年6月15日(木)12時0分 JBpress

独自の審美眼を貫く、世界のレジェンドたち。政治家から作家、思想家、建築家、ビジネスエリートまで、彼らが身に着ける品々から、その生き様も見えてくる。いかに洋服を楽しみ、相手への印象を考えて装っているのか、ドレスファッションに精通するスタイリスト四方章敬氏が解説。今回はフランスのエマニュエル・マクロン大統領。大統領は国を代表する人物として、国のイメージをも同時に背負う必要があるが、ファッション大国のプレジテントは公務や公式訪問、就任式などの場面にどのような服装で臨んでいるのか。

写真=アフロ 協力=四方章敬 編集・文=名知正登


ジャストなネイビーの3ピーススーツに身を包み、凛々しさと清々しさと

 2022年1月11日、フランス・パリのエリゼ宮にて。2022年上半期のEU理事会・議長国として、欧州の主権強化などの課題について話し合う昼食会に到着したシャルル・ミシェル欧州理事会議長を歓迎。

「ダークネイビーの3ピーススーツはクラシックですが、ナローラペル、ジャケットがやや短丈でモード的な要素が入っているのがファッションの本場フランスの大統領らしい。Vゾーンはナロータイではなく、ノーマル幅のタイ(よく見ると織り柄素材なのも◎)、シャツはダブルカフス仕様といった、これ見よがしでないディテールへの気配りも素晴らしい。コーディネートがシンプルなので腕時計、カフリンクスがアクセントになって良いですね。重箱の隅をつつくようですが、ネクタイのディンプルが綺麗に入っていれば完璧でしたね」。


髪や肌の色との馴染みも意識した落ち着きあるグレイッシュスーチング

 2023年3月13日、ハンガリーのオルバーン・ヴィクトル首相を首都パリの大統領官邸に迎えて会談を兼ねた夕食会に臨み、ウクライナ侵攻をめぐる欧州の結束の必要性を強調した。会談後に両者で固い握手を交わした一枚。

「グレースーツのお手本のようなスタイル! 取り立てて際立った要素のないコーディネートですが、スーツの色をグレーにすることで品がよく清潔感が漂います。このスーツのミディアムグレーの色味、光沢感が上質さを後押ししています。パリッとした白シャツとの相性も抜群。マクロン大統領の肌の色、髪色などを見てもグレースーツがとてもお似合いです。

 ただネクタイの色味がスーツと合ってないような気もしますが、これも計算なのかも!? スーツと完全な同色か、いっそネイビー無地もしくは黒無地のネクタイもありだったのかなと。今後もこういうグレースーツをシンプルに着こなすマクロン大統領を見てみたいですね」。


シャープなデザイン&シルエットで若さとセンスの良さをアピール

 時をさかのぼること2017年4月、フランス北部の街アラスでの選挙運動集会の終わりに壇上に立つ大統領候補だったエマニュエル・マクロン氏。当時、極右政党「国民連合」のマリーヌ・ルペン党首と大統領の座を争った。

「大統領になる前も、ナローラペルスーツ、ナロータイといったモード的なスーツスタイルだったのですね。シュッと見えてシャープな印象です。歳を重ねた政治家や他国の大統領はもっと貫禄のあるクラシックなスーツを着用していることが多いですが、モードファッション本家のお国柄でしょうか、さすがフランスの大統領といった感じです。

 貫禄や風格のあるクラシックスーツを着用する他国の大領領に比べ、若々しく見えますね。意図しているかどうか分かりませんが、服装の印象で差別化にもなります。強いて言うのであればスーツのサイズ感が惜しい。シャツの袖が見えすぎているので、もう少し袖が長いほうがよかったですね」。


シンプル・イズ・ベストな好印象スーチングは妻ブリジットのおかげ!?

 2022年3月11日、パリ西部のヴェルサイユ宮殿でのEU首脳会議後の記者会見に臨むため、マクロン大統領と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長と言葉を交わしながら歩みを進める。記者会見では、EUはキエフへの軍事支援を強化する一方、ウクライナ侵攻でロシアを罰する新たな制裁を策定し、ロシアへの圧力を継続すると発表した。

「スーツスタイルの中で最も潔くシンプルなコーディネート、それはネイビースーツ×白シャツ×ネイビー無地タイの組み合わせですが、実は結構難しい点もあるんです。シンプルがゆえに、サイズ感、スーツとネクタイの色、シャツの襟型などに気を付けないとスマートにならないのです。このマクロン大統領のスーツ姿を見ると、すべてうまくまとまっています。

 スーツのサイズ感、パンツの丈まで良い具合で、スーツとネクタイの色がほぼ同色なのも好印象。シャツの襟型がセミワイドで、靴は黒のストレートチップといったところもコーディネートを邪魔していません。ブリジット夫人のアドバイスがあるのかもしれませんが、マクロン大統領のスーツの着こなしは、各国の大統領の中でも一二を争うんじゃないでしょうか。トレビアン!」


 2017年、第25代フランス共和国大統領に就任したエマニュエル・マクロン氏。閣僚になる前は投資銀行の銀行員だったマクロン氏は、39歳という史上最年少でフランス政権のトップになった。若さと整ったルックス、24歳年上のブリジット夫人との生活など、特異なプロフィールも注目を集めた。

 その大統領就任式では、350ユーロ(約5万2400円)ほどの既製服だったことも、ニュースとして取り上げられた。選挙戦期間中、中道右派の対立候補者のスーツがパリの老舗テーラーで何万ユーロもするオーダーメイドだったことと比べると差は歴然。庶民的な感覚を持つマクロン氏への好感度はさらにアップしたが、その陰にはマクロン氏が15歳の時に演劇部の顧問だった妻ブリジットの“指導”があることがうかがえる。

 2022年には急進右派・国民連合のマリーヌ・ルペン候補を下して再選を決め、45歳になった今も体のラインは緩んでおらず、高価でスタイリッシュなスーツでなくとも十分な見栄えだが、年を重ねていきどのような着こなしになっていくのか注目したい。

四方章敬(しかたあきひろ)
1982年京都府生まれ。スタイリスト武内雅英氏に師事し、2010年に独立。ドレスファッションに精通し、「LEON」「MEN’S EX」「MEN’S CLUB」など、多くのメンズファッション誌からオファーを受ける敏腕スタイリスト。業界きってのスーツ好きとしても知られ、イタリア・ナポリまでビスポークに赴いた経験もある。最近はセレクトショップやブランドと共同でウェアのプロデュースを手掛けるなど、活躍の幅を広げている。

筆者:名知 正登

JBpress

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