大人気で予約が取れない!? JAL工場見学をレポート

2023年6月30日(金)13時0分 JBpress

 子供のころに比べ、大人になると「新しいこと」に出会わない気がする。成長するにつれ、さまざまな経験を積むからか。それとも、新しいことに挑戦しなくなるからなのか。

 大人になっても「新しいことに出会ってワクワクしたい!」

 と、いうことで、大人でも楽しめる&ワクワクする体験をひたすら探す松宮。

すると、最近「大人の社会見学」が話題を集めていると知る。中でも日本航空株式会社が開催する「JAL工場見学(JAL SKY MUSEUM)」が人気らしい。問い合わせると、運よく取材OK。

 大人気の工場見学とは、どんなものなんだろう。実際に体験してレポートすることに!


予約殺到!JAL工場見学へ

 取材当日。浜松駅から東京モノレールに乗り、会場がある新整備場駅へ。車内には大きなスーツケースを持った人々ばかり。きっと、羽田空港に向かうのだろう。
なんだか、自分も旅に行くような気分に。

 20分ほどで新整備場駅に到着。階段を上りきると、左手に羽田空港の滑走路が広がり、巨大な飛行機が!迫力あるエンジン音が聞こえる中、写真を撮る人や飛行機を眺める人の姿を見ると、さらに胸が高まる。

 徒歩数分で会場の「JAL M1ビル」に到着。

 「JAL工場見学」は全部で約110分。ミュージアム体験(航空教室30分・展示見学30分)と格納庫見学(50分)に分かれている。ガイドは機長や客室乗務員、整備士、グランドスタッフの経験者が行う。ガイドを務めるスタッフは30人ほど。日替わりなので、誰が担当するかはお楽しみだ。


ガイドは航空業界のスペシャリスト

 宮田さんは東京出身。飛行機に興味を持ったのは、「札幌旅行がきっかけ」。工業高校を卒業後、日本航空株式会社に入社。整備士として現場や教育を担当し、マレーシアで4年駐在するなど海外勤務も経て、60歳まで42年間勤め上げた。ちなみに、現場と教育を両方担当するのは「めずらしい」とのこと。定年後は再雇用により、シニアスペシャリストとして勤務している。飛行機の魅力は「整備をすればしただけかえってくること」だそう。

 現在62歳という宮田さん。飛行機や整備、自身の経歴を話す姿はとても若々しい!
「話すのが苦手」と言うが、思わず聞き入ってしまう。

 まずは「航空教室」に移動し、いよいよ「JAL工場見学」がスタート!


航空業界について学べる「航空教室」

 日本航空株式会社は1951年に創業した。創業間もない1950年代半ばには、社会貢献と航空業界への理解を広めるべく、工場見学をスタートしたという。つまり、約70年前から工場見学を行なっているのだ。すごい!

 「JAL工場見学」では航空業界のスペシャリストがガイドを務め、ミュージアムや格納庫を見学できるという充実ぶり。しかも無料で楽しめるとあって、大人気だ。見学者は年齢を問わず、子供から大人まで。リピーターも多い。

 コロナ前の見学者は年間およそ12万人。2020年3月〜2022年4月は工場見学を休止していた。ただし、オンライン工場見学を開催し、視聴者はなんと6万人!2022年5月からは1回あたりの人数を減らし、開催している。

 見学日の一か月前に予約可能になるが、「枠は瞬時に埋まってしまう」。予約するコツはあるのだろうか。

 宮田さんによると「キャンセルもあるので、こまめにホームページをチェックするのがいい」とのこと。なので諦めずにチェックを!


「スカイランウェイ」で航空業界の仕事を知る

 「航空教室」で興味深い話を聞いた後は「スカイランウェイ」を見学。

 「スカイランウェイ」では、運航乗務員・客室乗務員・グランドハンドリング・グランドスタッフ・整備士の仕事をディスプレイで紹介している。実際に使用している道具も展示されているので、ついつい見入ってしまう。

 7つすべてコンプリートすると、子供のみだが「シールがもらえますよ」と宮田さん。トリビアは子供だけでなく、大人も楽しめるものばかり。ぜひ、コンプリートを目指してほしい!


制服体験&コックピットに座ってパイロットに変身?!

 続いて「JAL工場見学」の人気スポット・制服体験へ。コロナの影響により休止していたが、取材を行う少し前の2023年4月22日に再開にしたそう。グッドタイミング!

 制服は5種類。運航乗務員・客室乗務員・グランドハンドリング・グランドスタッフ・整備士の制服がある。男性は180cmまで。女性は7〜11号のサイズがあるそう。子供用は110〜160cmまでそろっているため、家族で記念撮影するのもおすすめだ。マジックテープ付きなので、子供でも簡単に着脱できる。ちなみに人気の制服は「男女ともにパイロット」。

 「制服はすべて実際のものと同じ生地を使用している」という。実際に着てみると、(当たり前だが)学生時代に着ていた制服よりも、生地がしっかりしている感じ。格式高く重厚感がある。

 内容が盛りだくさんのため、残り時間が!急いで制服を脱ぎ、JTA737のフライトシュミレーターとして活躍したコックピットのモックアップ(実寸大の模型)へ。

 コックピットは車の運転席よりも狭い気がする。スイッチやボタンが無数にあるため、より狭く感じるのかもしれない。「無数にあるスイッチやボタンを覚えた上に、いつ何時も正確に使いこなすってすごい……」と、機長の偉大さを思い知る。


「アーカイブズゾーン」にある歴代の制服は必見!

 「アーカイブゾーン」は航空文化史を伝えるのがコンセプト。デジタル年表・歴代の制服・グッズ展示・モデルプレーンなどを見ることができる。

 中でも目を引くのは、ずらりと並んだ華やかな歴代の制服!歴代の制服は「後ろからも見えるように」と、通路の中に設置されているのがニクイ。流行によりスカート丈が変化しているのがわかる。見ていると、当時の流行もわかるので楽しい。


いよいよ格納庫へ

 「うわー!」と思わず声が出てしまう松宮。天井の高さは41m・幅175m・奥行105mという、巨大な空間に圧倒される。中に入って行くと、かすかにオイルとタイヤが擦れたようなにおいが漂う。日常生活では出会わないにおいに「今は飛行機の格納庫にいるんだな」としみじみ。

 ……あれ?何か違和感が!これは一体?!

 「そうだ、柱がない!」と叫ぶ松宮。地震が発生しても大丈夫なのか?

 すると、「第1・2格納庫はジャッキアップ工法で建てられているんです!」と宮田さん。「ジャッキ工法とは、ジャッキを使って鋼管を打ち込み、沈下などが起きない地盤まで建物を支持する技術です」「そのため、震度7の地震が発生しても耐えられるんですよ」と一気に解説してくれる。「なるほど、柱がないのに地震に強いのか!」と感心してしまう。

 JALの格納庫は羽田空港と成田空港にある。羽田空港に所属する整備士は1200人。成田空港は600人だそう。意外にも、羽田空港にある格納庫の方が規模が大きいとのこと。
次の出発までに点検・整備を行う場合、「国内線ならば最短で40分ほど」と宮田さんに聞き、驚く。
 一定の期間をフライトした機体はコックピットのほかに、床や座席、トイレ、貨物室などもすべて機内から取り出し、1つひとつ点検する。そのため、点検するのにかかる時間はなんと、7〜10日!それだけ時間をかけて点検をしているとは!初めて知った。

 スクリュー(ネジ)は紛失しないように、目立つ赤いビス袋に入れて管理するそう。飛行機1機につき、何万ものスクリューが使用されている。管理するのも大変だ。

 航空業界は、かつて移動手段の主流だった船に多大な影響を受けていると宮田さんが説明してくれる。その名残で今でもSHIPは船ではなく、航空機を指す用語として使用されているそうだ。

 「へえ〜」と感心していると、「メインは第2格納庫(M2)ですよ!」と宮田さん。「滑走路と同じ幅」という60mの陸橋を渡り、第2格納庫へ!


飛行機が目の前に!第2格納庫

 第2格納庫に入ると、目の前に3機の飛行機が!見学者一同、思わず「うわー!」と大興奮。

 工場見学中は、第1格納庫では2階から飛行機を見る。だが、第2格納庫では1階に降りるため、より間近に飛行機を見ることができるのだ。

 第2格納庫は主に修理を行う。だが、飛行機の体重測定(ウエイト&バランス作業)をすることも。宮田さんによると、飛行機は2年に一度体重測定を実施するという。重い機体の体重をどうやって測定するのか。宮田さんに聞くと、「飛行機の脚に機械をつけて測定する」と答えてくれる。

 「飛行機の体重は摩耗や装備の変更、修理などいろいろなことで変わります!」「機体には(燃料が入っているので)離陸する時は重く、着陸する時は軽いんですよ!!」とスイッチが入り、怒涛のごとく解説してくれる宮田さん。

 ……「飛行機への愛」が止まらない宮田さんに圧倒される松宮&一同。

 ちなみに飛行機を購入する際に、エンジンのメーカーを選択できるとのこと。

 宮田さんによると、最近のエンジンは性能が上がり、パワーアップしたそう。だが巨大化して重すぎるため、エンジンの形のままでは陸送できなくなったんだとか!そのため、「羽田空港で一度エンジンを分割。その後、成田空港にあるエンジンの整備工場まで運んでいる」と宮田さん。やはり「何事にもメリット・デメリットがあるんだな」と思う。

 第2格納庫には、日本初のジェット旅客機・ダグラスDC-8(FUJI号)の機首部分も展示されている。1960年に国際線の羽田・サンフランシスコ線を就航。1966年6月にはビートルズが来日した記念すべき旅客機と同型機だ。

 第2格納庫のすぐ近くには羽田空港の滑走路があり、離発着する飛行機をすぐそばで見ることができる。……ああ、まさに至福の時!

 遠方に見える飛行機が段々と大きくなり、目の前を通り過ぎて煙を上げ、着陸する。

 「ああ、この場所は本当に特等席だな……」としみじみ思っていると、「ほら、あれはオレンジだからボーイング!」「これは白っぽいからエアバス!!」と叫ぶ宮田さんの姿が!!!

……飛行機のライトで機種が見分けられるということなのか?

わからないが、目を輝かせて叫ぶ宮田さんを見ると、「本当に飛行機が好きなんだな」とほほえましい気持ちになる。

 楽しい時間ほど早く終わってしまう。ここでタイムアップ。宮田さんともお別れだ。

 「もっとずっと見ていたいな」と思いつつ、歩いていると音楽が聴こてくる。不思議に思い、宮田さんに尋ねると「整備士は朝・昼・晩と1日に3回ラジオ体操をする」と解説。

これも、「整備士の日常」を垣間見た貴重な瞬間だ。

「JAL工場見学」の魅力は、飛行機を間近に見れるだけではない。航空業界のスペシャリストに現場の話を聞いたり、展示物などで歴史を楽しく学べたりできる。

制服体験やコックピットなど、写真スポットもあるのもうれしい。 だがなによりも、元整備士・宮田さんや元客室乗務員の方から感じた「飛行機への愛」「職人魂」「プロの姿勢」が印象に残った。

 格納庫という「非日常」の環境。その中で、機体を修理する「整備士の日常が垣間見れる」。久しぶりにワクワクしてしまった。

筆者:松宮 史佳

JBpress

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