一大変革期だった「戦国時代」、実際はどんな時代だったのか?

2023年7月27日(木)6時0分 JBpress

 新刊『戦国大変』が反響を呼ぶ乃至政彦氏。本書の主眼を「戦国の風景と感覚を見えやすくする」と語るとおり、「桶狭間の戦い」「関ケ原の合戦」などその名の知られた戦から「大寧寺の変」「姉川合戦」など歴史の教科書ではなかなか触れられることのない合戦まで、一次史料をもとに「新しい解釈」を提示している。

 ここでは、著者自らが本書を上梓するに際して込めた思いと、「戦国時代」における「武士」とは、そもそもどういう存在なのかについて伺った。


「戦国時代」をいかに捉えるか

 今回、上梓した『戦国大変』は、「戦国時代とは何か?」という根源的なテーマに答えようという形で、まとめさせていただきました。

 この本をまとめるに際しては、本能寺の変や関ヶ原合戦などといった、戦国時代の事件や合戦を、時系列で掲載する体裁を取りました。最初から最後までを一冊の流れとして読むと、「ああ、戦国時代って、こんな時代だったのだな」ということが、理解できるのではないかと思います。

 戦国時代というのは、日常的だった中世という時代が、非日常的な戦争のある中世になっていった時代だとお考えいただければ、わかりやすいかと思います。

 戦国時代の合戦は、基本的に、武士と武士が戦うのが主体でした。しかし、戦争が常態化してくると、百姓(農民)にとっては、武士によって自分の耕している田んぼが荒らされたりする場合がある。これに、どう対応するかということを考えないといけなくなりました。また、武士は武士で、百姓を相手にどうするかということを、考えながら戦う必要がありました。

 現代の戦争は、国と国の争いが多いですが、戦国時代というのは、日本国内での争いですから、同じ文化で、戦う相手も下手をすれば、お互いが顔を合わせている人たち同士である可能性もあります。

 また、機能としては非常に弱かったものの、当時は、まがりなりにも朝廷や幕府があり、皆がそれを上に戴いていました。その前提の下で戦争が頻発した時に、何が起こったのかというのを考える必要があるのです。

 当時の武士は、今でいうと、地主によく似ています。土地があって、そこからの収入が安定的に入る。そこに戦争が起きて、それを奪われたり、奪ったりすることが繰り返されました。争いの理由は、「土地が欲しい」という以外にも、いろいろありましたが、やがて隣同士で戦っていると、周りから「やめろ」といわれたり、あるいは「助太刀するぞ」といって、助けてくれる味方が出てきたりします。こうして、地方においても、だんだん戦争が大きくなっていったわけです。

 そんななかから戦国大名が現れて、「オレのいうことを聞け」「オマエたちも来い」ということになり、各地の国人領主=地主たちを動員して、大きな戦争になっていきました。

 こういう流れのなかで、武士たちも、それに対処していかないといけなくなってきます。これを念頭に置いて、戦国時代を扱った大河ドラマなどを見ると、時代の変化を意識できるのではないでしょうか。


戦国武将の「武力」について

 中世の武士は、個人の武芸が勝負で、個人戦の技を一人一人が磨いていました。武士たちは、普段から野山に分け入り、弓を放って狩りをしました。勢子と呼ばれる従者を率いて、どのように獲物を仕留めるかを考えながら、個人的な戦力を高める努力をしていたわけです。

 しかし、戦国時代になると、武士が雇った足軽が増え、戦闘に参加する人数が、どんどん増えていきます。そこで足軽を率いていかに戦うかを、武士たちが考えるようになり、集団戦が生まれてきました。個人戦から集団戦にうつっていくのも、戦国時代の特徴です。

 戦国時代の合戦が大規模化していく際には、いくつも問題が出てきました。たとえば、「他国に大人数を連れて攻め込む時にどうするか」など、あらかじめルールがあったわけではなりません。

 そんななかで、武田信玄と上杉謙信には、集団戦の訓練をしていた記録が残っています。人を集めて「鑓の訓練をしろ」などと言っても、なかなか人は集まってきません。そこで信玄や謙信は、どのようにしていたかというと、「宴会に来い」といって人を集めていました。そのついでに、鑓の訓練をしていたのです。

 北条早雲(伊勢宗瑞)とも争ったという関東の武将である太田道灌も、弓矢の訓練をして、いい成績を出した者には褒美を出しました。戦国時代には、集団で訓練をするという発想がなかったので、武将たちが試行錯誤をしていたのがよくわかる例ではないかと思います。

 当時の人にとっては、そもそも「戦国時代」という意識自体もなかったと思われます。戦争が当たり前の時代にあって、人々がどうやって生きていこうとしていたのかを考えることが、大切なことでしょう。

筆者:乃至 政彦

JBpress

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