置いてけ堀を探して、猛暑を行く【本所七不思議めぐり(1)亀戸・錦糸町編】

2018年7月28日(土)17時0分 Jタウンネット

学校や世界各地まで、なにかと7つの不思議が存在するが、東京に住んでいるなら押さえておきたいのは「本所七不思議」だろう。江戸時代に成立した、本所(現在の墨田区周辺)にまつわる7つの怪談・奇談のことで、当時の絵草紙でもよく取り上げられ、落語のネタにもなっている。


釣り人がどこかの堀で釣りをしていて、日が暮れて釣った魚を持って帰ろうとすると「置いてけえ」という声がするという「置いてけ堀」は、単体の怪談としてよく知られているが、これも本所七不思議のひとつだ。


本所七不思議にまつわるスポットは、現在でも墨田区に残っている。今回は、少しだけ涼しい気分になれるかもしれない、江戸の怪談スポット巡りに出てみたい。


何をもって七不思議なのかは結構適当


まずは、何が本所七不思議になるのかを整理してみたいが、これが非常に難しい。伝承や記載されている書物・文書によってかなりばらつきがあり、すべてを合計すると7つどころか10以上になってしまうのだ。


「置いてけ堀」「片葉の芦」「送り提灯(ひとつ提灯とも)」「足洗い屋敷」あたりは、ほぼ共通しているのだが、残り3つは曖昧。比較的よく見かけるのは「狸囃子」「消えずの行燈(もしくは燈無蕎麦)」「津軽の太鼓」「松浦家の椎の木(落ち葉なき椎とも)」あたりだろうか。


これでも8つになってしまっているのだが、明治の作家・岡本綺堂は「七不思議なのにそれ以上に話があるのが、そもそも不思議ということなのかもしれない」と述べている。今回はこの8エピソードにまつわるスポットを巡っていくことにしよう。


スタート地点としたいのは亀戸駅だ。いきなり墨田区ではなく江東区から始まってしまい、「本所じゃないだろ」というお叱りを受けそうなのだが、これには理由がある。


実は本所七不思議の各エピソードは、明確な場所がわかっているものがあまり多くない。最初に向かいたい「置いてけ堀」とされる場所も複数存在しており、「諸説ある」状態なのが現状だ。ただ、諸説ある場所を漫然と巡っても仕方がないので、今回は亀戸〜錦糸町〜両国と、総武線に沿って西に進む形にしたい。


まずは「置いてけ堀」を目指す


「置いてけ堀」に行くために向かうのは「区立第三亀戸中学校」。亀戸駅東口(アトレではないほう)を出て、京葉道路を渡り、1本裏通りを進む。中学校に至るルートは別にどのような方法でも構わないのだが、目指すのは中学校の正門だ。


まだまだ日も高い時間帯に向かっているため、怪談っぽさはおろか不思議さもまったく感じられないのだが、それはそれ。あくまでも江戸のロマンを感じたいのであって、廃墟に行って心霊写真を撮るわけではないことをご理解いただきたい。


中学校の正門が見えたら、目的地はすぐ隣。正門の横にひっそりと置かれた「江東区登録史跡 おいてけ堀跡」の碑が見えてくる。周囲に堀の跡らしき雰囲気などはなく、見たところ水場や川も近くにはない。


ではなぜここが置いてけ堀跡なのか。詳細は現地の案内板を読んでいただきたいのだが、現在の学校がある場所はかつて田畑で、その中にぽつんと釣り堀のような水場があったようなのだ。そして、その水場の名前が明治42年(1909年)に発行された地図の中で「オイテケ堀」とされていたことから、同地が「おいてけ堀跡」とされた(なので厳密には跡は学校敷地内になる)。


ただし、だからここが本所七不思議に登場する置いてけ堀だったかというと、それはわからない。案内板にも、地元で昔から置いてけ堀と呼ばれていた場所は、1か所ではなかったと記されている。地図に名前が残っており、史跡として登録されたのがこの場所だったというわけだ。


暗い田畑の中にぽつんとあるお堀。そんなスポットが江戸時代の本所には複数あり、当時の人々は得体のしれない恐ろしさを感じていたのだろうか。


錦糸町方面に向かうと次の「置いてけ堀」が


なんだか誰かに呼びとめられている気がしながらも、おいてけ堀跡からさらに東に進み、横十間川にかかる松代橋を渡って、錦糸町駅方面へと向かう。


松代橋を渡れば錦糸町駅は目の前なのだが、その前に少し裏に入り「錦糸堀公園」に行ってみよう。名前にあるように、かつてはこの辺りに「錦糸堀」という堀があったとされ、「錦糸堀が置いてけ堀だった」とする説もある。それ故ここにも、「置いてけ堀」にまつわる珍スポット(?)がある。公園の入り口をよく見ると、めちゃくちゃいい笑顔の河童の像が佇んでいるのだ。


この河童、一体何なのか。すでにお気づきの方もいるかもしれないが「おいてけえ」の声の主である。正確には、「声の主は河童説」があり、それにちなんで江東橋四丁目町会が設置した河童像だ。


あまりにも屈託のないいい笑顔で、仮に置いてけ堀にいたとしても、「魚、置いていってくれるかな?」と語りかけてきそうだ。


まあ、本所の各地に堀があり、町ごとに「うちの置いてけ堀」みたいな伝承があったとすると、河童の1匹2匹いてもおかしくはない。この像が置かれていること自体が、「置いてけ堀的である」と思えなくもないだろう。


前編のつもりだった亀戸・錦糸町エリアで、また1エピソード分しか巡れていないのだが、錦糸町・両国エリアでは怒涛の進行を見せるので安心していただきたい。そもそも、本所七不思議の肝になるのは、錦糸町・両国エリアだ。ご期待いただきたい。(つづく)

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