上位モデルと変わらない没入感! 4万円台で買える「Meta Quest 3S」体験レポート

2024年10月7日(月)19時15分 マイナビニュース

米Meta(メタ)が、最新のヘッドセット型デバイス「Meta Quest 3S」を発表しました。筆者は、10月15日の発売に先駆けてメタが開催した国内プレス向けイベントに参加し、Meta Quest 3Sによる没入コンテンツの視聴を体験してきました。メタ本社から来日した担当者には、これからMeta Horizonストアで続々と公開されるゲームやアプリのことや、メタが独自のAIモデルであるLlama 3をベースに開発するデジタルアシスタント「Meta AI」の展望を聞いています。
上位モデルと変わらない実力を備えた入門機が誕生
Meta Quest 3Sは、パソコンやスマホなどへの有線接続がいらない、スタンドアロンで使えるヘッドセット型デバイスです。VR(仮想現実)に対応するコンテンツを解像度1,832×1,920画素のディスプレイで立体視したり、メタが2023年秋に発売した「Meta Quest 3」以降はカラーによるMR(複合現実)コンテンツにも対応。本体に内蔵するカメラで捉えた現実の風景をディスプレイに表示しながら、同じ画面にデジタルコンテンツを重ね合わせて見ることができます。
型番に「S」が付く新製品は、先行して発売されたMeta Quest 3の弟分として位置付けられています。2023年にメタが発売したフラグシップモデル「Meta Quest Pro」にはないカラーによるMR対応や、クアルコムによる最新のMR向け高性能チップセット「Snapdragon XR2 Gen2」を搭載しながら、内蔵ストレージ128GBのモデルが48,400円から購入できるお得なエントリーモデルです。
OSは、Meta Quest 3と同じMeta Horizon OSで、Meta Horizonストアで公開されているゲームやアプリがインストールできます。メタのデベロッパ・リレーション部門のグローバル統括であるメリッサ・ブラウン氏は「デベロッパはMeta Quest 3向けに開発したコンテンツを3Sのために再度ビルドする必要はあるけれど、ユーザー側でそれを意識する必要はなく環境も変わらない」と話しています。
満足の画質。コントローラーの反応も快適
イベント会場に展示された実機を見比べてみました。
Meta Quest 3とMeta Quest 3Sの本体サイズはほぼ変わりません。公式に発表されている本体の質量も、Meta Quest 3が515g、Meta Quest 3Sは513gと、わずか2gの違いです。筆者はこの日、重さがややかさむハードタイプの「Eliteストラップ」をMeta Quest 3Sに付けてコンテンツを試遊しましたが、質量が600gを超えるApple Vision Proに比べてMeta Quest 3Sはヘッドセットの重みが前のめりにならないので、負担なく身に着けることができました。
続いてMeta Quest 3Sを装着して、いくつかのMR/VRコンテンツを体験しました。
10月4日にMeta Horizonストアで公開されたばかりの『機動戦士ガンダム:銀灰の幻影』は、360度周囲に広がるリアルな3Dアニメーションに深く入り込める長編VRアニメです。Meta Quest 3Sの視野は水平96度/垂直90度。Meta Quest 3の水平110度/垂直96度に比べると若干狭くなっています。この日、筆者は眼鏡を装着してからMeta Quest 3Sを着けたため、コンタクトレンズや専用の「Zeni MR度付きレンズ」を装着した場合と見え方は異なると思いますが、確かに3Sの方は特に水平方向の視野が若干制限される感覚はありました。映像は明るく、解像感の違いによる画質の力不足は感じません。
この日のイベントに参加した複数の記者と一緒に、MR対応の対戦型シューティングゲーム『SPATIAL OPS』も試遊しました。武器を手に取って互いに戦うゲームですが、MRモードの表示はとてもスムーズ。ユーザーの視野が手もとや対戦相手により絞られるためか、VRアニメよりも視野の狭さは感じません。コントローラーの反応も小気味よく、他にも試遊したフィットネスアプリ『FitXR』も快適にプレイできました。
コストダウンに踏み切った影響は?
ひとつ気になったのは、専用コントローラーを使わないジェスチャー操作の反応がMeta Quest 3Sの方が若干鈍く感じられたこと。Meta Quest 3が搭載する深度センサーが省かれているためか、MRモードの際に空間に浮かぶように表示されるHorizon OSのメニュー画面にタッチした時の反応が鈍かったり、正確に反映されないことがありました。専用コントローラーに持ち替えると違和感なく操作ができます。
Meta Quest 3Sでは、搭載するレンズがフレネルレンズになりました。Meta Quest 3はパンケーキレンズです。筆者は「レンズの違い」による見え方が大きく変わる印象を持ちませんでしたが、細部の調整はなぜ行われたのでしょうか。
Meta Quest 3SのプロダクトマネージャーであるJD・ダグラス氏は「ハードウェアのコストを下げて、さらに多くのユーザーにMeta Questシリーズによるイマーシブ体験に触れてもらうことがMeta Quest 3Sを開発した一番大きな目的」だとコメントしています。
そのために、Meta Quest 3よりもコストダウンを図りながら、パーツの選択に合わせて技術を最適化してきました。「上位のMeta Quest 3と変わらない快適な体験を3Sで実現できた」というダグラス氏は、Meta Quest 3Sが若干容量の少ないバッテリーパックを搭載しながら、連続駆動時間はMeta Quest 3よりもほんの少し長くできたことについても胸を張って語りました。
Meta Quest 3がイマーシブ体験の拡大に勢いをつけた
メタが2021年に発売した「Meta Quest 2」は、MR体験に求められるパススルー表示(カメラの映像にコンテンツのデジタル表示を重ね合わせること)に対応していましたが、グレースケール表示が限界でした。Meta Quest 3では、カラー表示に対応するブレイクスルーに対応したことで「大成功を遂げた」とダグラス氏は語ります。
「発売からわずか半年で売り上げ目標を超えることができた。ユーザーの反響から、Quest 2よりもQuest 3の方がデバイスやコンテンツを繰り返し楽しんでいるという声が多く聞こえてくる。MR対応のコンテンツも増えている。例えば、擬似的な大画面で映画を観たり、バーチャル空間の中で楽器の演奏やペイントを楽しむクリエイティブなコンテンツなどが充実した。音楽など、いろんなことができている。部屋のサイズにとらわれることなく、デジタルコンテンツを伸び伸びと楽しめるMRエンタテインメントに寄せられる反響はとても大きい」(ダグラス氏)
価格がさらに手ごろになったMeta Quest 3S、どんなユーザーにおすすめなのでしょうか? ダグラス氏は、ふた通りのユーザー像が考えられると答えました。
「ひとつは、MRやイマーシブ体験に初めて触れる方だと思う。さまざまなMRコンテンツに触れていただければ、Meta Questシリーズがただゲームを遊ぶためのデバイスではなく、日々の生活に役立つものであることが実感してもらえるでしょう」
「あるいは、初代のMeta QuestやMeta Quest 2からの買い替え・買い増しを検討されている方々にもおすすめだ。実際に3Sの発表後、少し高価な上位モデルと同等のイマーシブ体験が楽しめる3Sに、既存のMeta Questシリーズのユーザーからたくさんの興味・関心の声が寄せられている」
イマーシブ体験のコンテンツも拡大中
Meta Questシリーズのデバイスとコンテンツは、それぞれが両輪となって着実に進化を遂げてきました。「Meta Quest 3Sは、発売時点ですでにさまざまなコンテンツが楽しめるデバイス」なのだと、メタバースコンテンツ部門のディレクターであるアナンド・ダス氏は強調します。
「イマーシブな空間の中でゲームを遊ぶだけでなく、楽器を弾いたり、バーチャルペットを飼ったり、習い事やスポーツが楽しめるような革新的なアプリやエンターテインメントが続々と増えている。フィットネスジムのアプリも好例のひとつだ」(ダス氏)
最近の傾向としては、エンターテインメント系やソーシャルコミュニケーション系を中心に、もともとはスマホなどモバイル向けの2D対応アプリが続々とMeta Horizon Storeに追加されているそうです。背景にある理由として、ますます拡大するMeta Questシリーズ周辺のエコシステムにデベロッパが関心を向けるようになったことと、メタが2D対応アプリからの移植ツール「Meta Quest Spatial SDK」をデベロッパ向けに提供開始したことなどをダス氏は挙げています。
デベロッパの内訳も、個人からスタートアップ、大規模な企業まで多様性に富んでおり、特にビジネスプラットフォームが成長し安定してきたことで、大企業の参入が加速しているようです。今後も、Meta Questストアに魅力的なコンテンツがますます増えることが期待できると思います。
Meta QuestとMeta AIの融合も図る
米国では、メタが独自に開発するデジタルアシスタント「Meta AI」が発表され、自社のSNSコミュニケーションアプリに組み込まれる形で提供を開始しています。
将来、Meta Questシリーズをはじめとするメタのデバイスに、Meta AIはどのような形で組み込まれていくのでしょうか。ダグラス氏は「現時点で具体的なことは言えない」としながら、将来に向けた2つの可能性について言及しました。
「ひとつは、音声でMeta AIを操作しながら、きょうの天気やおすすめのゲームコンテンツなどさまざまな情報をユーザーに伝えること。もうひとつは、マルチモーダル対応により、Meta Questシリーズに内蔵するカメラが捉えた映像に対して、ユーザーが『これは何?』と質問するとMeta AIが答えてくれるようなアシスタント機能を実現すること。メタのハードウェアには、スマートグラスのRay-Ban Metaもある。それぞれのデバイスに最適化した、ユーザーに最も役に立つAIアシスタントを育てたい」(ダグラス氏)
メタによる「5万円を切るヘッドセット」はデバイスの本体だけでなく、楽しめるコンテンツも充実しています。筆者も、イマーシブ体験の入門機としておすすめしたいと思います。
著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら

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