80代以上の2人に1人が<慢性腎臓病>?2005年から15年にかけて患者数は150万人も増加…その理由とは。専門医「生活習慣病、心血管疾患と関連が」
2024年10月18日(金)6時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
日本の20歳以上の慢性腎臓病(CKD)の患者数は、約1480万人と推定されるそう。腎臓は「沈黙の臓器」と言われ、気づかないうちに悪化してしまうおそれがありますが、東北大学名誉教授の上月正博先生は「かつて<不治の病>とされてきた慢性腎臓病は、運動と食事で<治せる病>になりつつある」と語っています。そこで今回は、上月先生の著書『腎臓の名医が教える 腎機能 自力で強まる体操と食事』から一部引用、再編集してお届けします。
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70代の3人に1人、80代以上の2人に1人が腎臓病
現在、日本の20歳以上の慢性腎臓病(CKD)の推定患者数は、なんと1480万人です。人口比で、日本の成人の実に7人に1人がこの病気で悩んでいる計算になります。
CKDは、慢性腎臓病の略称で、chronic kidney diseaseの頭文字を取ったもの。慢性に経過するすべての腎臓病を指します。
2005年には、20歳以上の慢性腎臓病の推定患者数は1330万人と言われていました。2015年にその数字が改められ、新たに推定患者数が急増したのです。
たった10年で1330万人から1480万人へと、推定患者数が150万人も増えた理由はなんでしょうか。
それは、日本で進行する超高齢化の影響です。
病気でなくても、加齢により腎臓の機能は自然に低下します。腎機能の低下は、加齢に伴う自然現象とも言えるのです。このため、高齢者が増えれば、慢性腎臓病の患者さんも増えていきます。
ある統計では、70歳代の3人に1人、80歳代以上の2人に1人が慢性腎臓病になっています。
つまり、慢性腎臓病は国民病であり、私たちの誰もがかかる恐れのある病気なのです。
慢性腎臓病が恐れられる3つの理由
慢性腎臓病が恐れられるのには、以下の3つの理由があります。
(1)腎臓は沈黙の臓器。気づかないうちに悪化する
(2)高血圧や糖尿病などの生活習慣病があると腎臓も悪くなる
(3)心筋梗塞などの心血管疾患を招き、死亡リスクが高まる
腎臓は、「沈黙の臓器」と言われます。
多少、腎機能が落ちてきても、初期段階では自覚症状がほとんど現れないからです。
そのため、気づかないうちに、症状が進行してしまう可能性が高いのです。この特徴が、患者数を増やす原因にもなっています。
気づかれにくいからこそ、定期健診などで腎臓に関わる数値もきちんとチェックしておきましょう。
生活習慣病と腎臓
第二に、高血圧や糖尿病といった生活習慣病との密接な関連性です。高血圧や糖尿病があると、腎臓もいっしょに悪くなるのです。
高血圧や高血糖は、腎臓でろ過を行っている糸球体の毛細血管を痛めつけ、腎機能の低下を引き起こすからです。
(写真提供:Photo AC)
一方、腎機能が低下すると、それに応ずるように、高血圧や糖尿病も悪化します。このように互いの足を引っ張り合う悪循環が起こります。
糖尿病が悪化した結果、その合併症として生じる糖尿病腎症は、20年以上にわたって、人工透析に至る原因の第1位を占めています。
慢性腎臓病と診断され、腎機能が低下していることがわかったら、その原因疾患とされる糖尿病や高血圧のコントロールをしっかり行うことが必要です。
また、予防のうえでは、まだ腎機能に問題は生じていないものの、血圧や血糖値が高めの人は、腎機能が悪化しないうちに、運動や食事などのセルフケアなどで症状をできるだけ改善させておくことが大事です。
心血管疾患との関連
第三が、心血管疾患との密接な関連性です。
腎機能が低下すると、心血管疾患が起こりやすくなります。「心腎連関」と言って、腎臓の状態が心機能にも大きく影響を与えるのです。
アメリカの研究では、慢性腎臓病の患者さんが心血管疾患を発症する確率は、健康な人に比べて3.4倍にもなるとされています。
腎臓の機能が低下し、糖尿病や高血圧を併発するようになると、体内に活性酸素が増えます。
活性酸素は、増え過ぎると動脈を傷つけ、動脈硬化を進行させるだけではなく、心臓にも大きな負担となります。心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患も起こりやすくなるのです。
実際に慢性腎臓病になると、人工透析に至る前に、心血管疾患で亡くなる人のほうが実は多いということもわかっています。
言い換えれば、腎機能は私たちの寿命に深く関わっているのです。
腎機能が急激に落ちることにより、私たちの寿命はつきます。
高血圧や糖尿病を併発していれば、腎機能の低下とともに、それらの病気も悪化していきますし、心血管疾患のリスクも高まるのです。
こうして健康寿命が大きく損なわれることになります。
※本稿は、『腎臓の名医が教える 腎機能 自力で強まる体操と食事』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
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