驚天動地の絶品ラーメン! ラーメン官僚が手放しで絶賛する『らーめん梶原』とは?

2022年10月28日(金)10時51分 食楽web


『らーめん梶原』の「塩らーめん」と「醤油らーめん」 | 食楽web

 今回ご紹介するのは、2022年9月1日に京王線・千歳烏山駅から徒歩2分ほどの場所にオープンした『らーめん梶原』です。

 こちらの店主である梶原壽之氏は、18歳から調理の道で腕を磨き続けてきた生粋のラーメン職人。職人歴は約8年。人形町の優良店『麺やまらぁ』を皮切りに、都内を代表する人気店『ムタヒロ』で店長を務め上げた後、今回、満を持して“一国一城の主”として自店を構えるに至ったという経緯の持ち主です。

 梶原店主の修業先である『麺やまらぁ』と『ムタヒロ』は、共に都内のラーメン好きなら足を運んでいなければ“モグリ”と言われるほどの名店。また、梶原氏ご自身も、腕利きのラーメン職人として知る人ぞ知る存在。というわけで、『らーめん梶原』は開業当初からラーメンマニアを中心に注目を集め、かなりの話題になっていました。


外観。薄茶色の下地に、黒文字で屋号が大書された看板。店舗正面のガラス張り部分の面積が広めに取られ、開放的な雰囲気(食楽web)

 私が『梶原』を訪れたのは、オープンから3週間が経過した9月24日の昼でしたが、その頃には、すでに先んじてお店へと赴いた複数の食べ歩き仲間からの絶賛に近い感想が耳に届いていたところです。

 改めて申し上げるまでもなく、およそ、あらゆる食べ物に対する人間の味の好みは千差万別。ラーメンも例外ではありません。人によって好き嫌いが分かれるのが一般的ですが、『梶原』については、少なくとも私の周りの数名のラーメン仲間に関しては、おしなべて高評価で一致。これは、長年にわたる私の食べ歩き生活においても比較的珍しい現象。期待値は否応なく高まり、やや浮足立ちながらの訪問となりました。

 店舗は、ビルの半地下に佇んでいます。入居するビルの外壁や階段が遮蔽物となっているため、面する路地からは、やや視認しにくいかもしれません。飾り気こそあまりありませんが、清潔感が漂うファザード。虚を嫌い、実を重んじる店主の性格がにじみ出ているようで、好感が持てます。幸運なことに、訪問日当日は行列なし。驚くほどスムーズに入店できました。

いざ噂の「塩らーめん」と「醤油らーめん」を連食!


店内もシンプルなデザインで落ち着きある空間

 現在(2022年10月10日現在)、同店が提供する麺メニューは、「醤油らーめん」「塩らーめん」の2種類と、そのバリエーション。券売機の上から3列目には、「醤油つけめん」のボタンもあります。つけ麺は鋭意開発中とのことで、商品化が待ち望まれます。

「醤油らーめん」と「塩らーめん」。いずれの評判も甲乙がつけがたいほど上々だったので、店内連食を視野に入れ、「醤油」「塩」の食券を一気に購入。カウンター席に座り厨房の様子を眺めると、梶原氏はラーメンづくりに没頭し、2名のスタッフがてきぱきと接客をこなしています。

 スタッフに、「『塩らーめん』から先に提供していただきたい」とお願いし、待つこと数分。夢中になって、淀みや無駄が全くない店主の所作を目で追い続けているうちにラーメンが完成。うやうやしく眼前に供されました。


「塩らーめん」830円。丼の素材は陶器。「食べ終わりまでアツアツの状態が持続するよう、磁器ではなく熱を逃しにくい陶器を使っています」と梶原店主

 チャーシューを「筏(いかだ)」に見立て、その上にメンマ、山椒(粒山椒と粉山椒)、芽ネギがバランス良くのせられたビジュアルからは、日本料理の名品のような“侘び寂び(わびさび)”すら感じられ、視線がくぎ付けになります。


魚の旨み、乾物の滋味が濃縮した繊細な味わいのスープ

 まずはレンゲでスープをひとすすり。スープの雫が味蕾に触れた瞬間、トビウオの芳香と、釧路昆布の滋味とがクロスオーバー。1本の大きな奔流と化し、味覚中枢を際限なく侵襲します。

「スープを完成させるのは、そのスープを使う当日の朝イチ。それを徹底することで、魚介の鮮度劣化に伴うスープの品質低下を最小限に抑えることができます」と梶原店主。

 さらに吟味すると、どっしりと重厚なうま味を喉元が探知します。この地に足が着いたような厳かなうま味は、川魚に由来するものだと梶原店主。


「塩らーめん」のスープに使われる食材の一部

 いわく「和情緒が漂う奥深い味わいは、海の魚だけで表現できません。なので、カエシに川魚である四万十産鮎(あゆ)の焼き干しを採用しました」とのこと。出汁とせめぎ合うように、喉奥で雄々しく伸び上がる奥能登産天然塩の食味も、この上なく風雅です。

 カエシには鮎焼き干し、天然塩のほか、鯛の魚醤、帆立貝柱なども溶け込ませているそうで、幾種もの魚介の風味が口内で輻輳(ふくそう)し、中盤以降は、スープに溶け込んだ山椒の涼やかな香りが、鼻腔を軽やかに刺激するストーリー性のある構成となっています。一見、朴訥なように見えて、その実、精緻を極めた納得の味わい。レンゲを持つ手は、最後まで止まることがありませんでした。


「醤油らーめん」830円

「塩らーめん」に存分に舌鼓を打った後、引き続き「醤油らーめん」をオーダー。「醤油らーめんはうちの看板商品なので、歳月の経過に耐えうるスタンダードな1杯を目指しました。なので盛り付けも凝りすぎず、あえてシンプルに徹しています」と店主。その言葉どおり、過度な飾り気を排し素朴に徹したビジュアルです。

 ただ、そこは梶原店主のこと。キラリと光る要素は、随所で顔を覗かせます。「丼の色調とトーンを合わせるため、たまり醤油を使っています。その結果、スープの色合いに深みと奥行きを表現できました」(梶原店主)。確かに濃褐色のスープは、色気を感じるほどの艶めかしさ。あらゆる食べ手を魅了するはずです。


深みのある醤油の味に力強い動物系の味が見事に合わさったスープ

 スープをすすれば、最初に切れ味鋭いカエシが喉の奥深くにまで斬り込み、味覚中枢をダイレクトアタック。圧倒的な醤油のうま味に、ドーパミンの分泌が止まらない! その後、間髪を入れずに「名古屋コーチン」&「常総あかどり」の分厚いコクが口腔内に貼り付き占拠。地鶏の底力を、これでもかと言わんばかりに見せつけられます。


「醤油らーめん」のスープに使われる食材の一部

 そのほか、すするたびにチラリと姿を現す煮干しの香味と野菜のナチュラルな甘みも、食べ手に安心感を与える極上の触媒として活躍。まさに、王道の醤油ラーメンとして、これを超える作品はあまり存在しないと断言できるほど、完璧無比な味わい。「塩らーめん」と趣を全く異にしながらも、これはこれで、新店離れした規格外の完成度の高さを誇っています。

「オーソドックスなラーメンを美味しく作ること。これが、ラーメン職人に最も求められる資質だと思うんです。うちの『醤油』には特徴的な要素はありませんが、むしろ“特徴がないことを特長とする”心構えで、スキルを磨いていきたいと思います」(梶原店主)。

 職人としての志の高さがまざまざと垣間見え、飲み下すたびに、新たな魅力を見出せる…。「醤油らーめん」のスープは、まさにそんな店主の心意気が憑依したかのような渾身の出来映えでした。

「このスープにしてこの麺あり」と言うべき秀逸な自家製麺


左が「塩らーめん」の麺。右が「醤油らーめん」の麺

 さて、これらのスープに合わせるのは、店内に設置された製麺室で打ち込む自家製麺。自家製麺を使うことにした理由を聞くと、「至極単純です。和食の料理人であれば蕎麦を打ちますし、イタリアンのシェフであればパスタを作ります。ラーメン職人である自分が、麺を作らなくても良いとする理由がありません」とのお答え。

 ラーメンづくりに携わる者が、製麺についての知識を持たないのはおかしい。また、実際に麺をつくってみないと、製麺技術も分からず、技術の向上も期待できない。こうした考えから、『梶原』では、「春よ恋」、「きたほなみ」など、数種類の国産小麦をブレンドした麺を、製麺室で毎日打っています。


左が「塩らーめん」のストレート。右が「醤油らーめん」のちぢれ麺

 モッチリとふくよかな食感が心地良く、小麦由来の大地の息吹を凝縮させた麺は、まさに「このスープにしてこの麺あり」と言うべき逸品。「醤油」と「塩」、それぞれのスープの特性に応じて麺を作り分けるという、一般的なラーメン店では労力の関係からあまり実践しないことも、梶原店主にとっては職人として当たり前になすべき事柄。その意識の高さに、感服するほか術がありませんでした。

 無我夢中になって梶原店主の「作品」と対峙している内に、気付けば、2杯とも完食していました。『塩』『醤油』共に、まさに驚天動地の絶品。近々必ず再訪し、さらに進化を遂げた1杯と向き合ってみようと思います。

梶原壽之店主のプロフィール

・18歳で料理人の世界へ。ラーメン職人としては、『麺やまらぁ』、『ムタヒログループ』等の有名店で8年間修業。『ムタヒロ』では、エースとして店長を任されるまでに至る。
・店舗の場所を千歳烏山に決めた理由は、「ラーメンを最上の状態で提供するためには、自宅から近い場所の方がベター」という考えによるもの。
・ラーメン職人として心掛けているのは、「基本的な仕事を忠実にこなす」こと。当たり前のことを当たり前に実践することが大切という信条の持ち主。

●SHOP INFO

店名:らーめん梶原

住:東京都世田谷区南烏山6-5-7 明光ビル新館
TEL:非公開
営:11:00〜14:45、18:00〜20:00
休:月曜、火曜

●著者プロフィール

田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。

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