沖縄の霊能者「ユタ」を祖母に持つ男性の数奇な体験談 政治家も通う凄腕ユタがいる家庭の非日常

2022年11月5日(土)17時0分 tocana

 「医者半分、ユタ半分」。沖縄では古くから民間信仰カウンセラーとして霊能者「ユタ」が受け入れられてきた。ユタとは、女性の霊能者であり、男性は「トキ」という。トキとは時代や戦況の流れの「時を読む者」である。琉球王朝時代、国策に携わる参謀・軍師のような仕事をした男たちだ。現代の「トキ」になるべく修行する霊能者・高江洲氏に話を聞いた。


——高江洲さんのおばあさまがユタと聞きましたが?


高江洲康之(以下、高江洲) 祖母は沖縄で20番目のユタでした。沖縄のユタとは、いわゆる神ダーリ(神憑かり)して、霊が視えるようになり、頭の中で声が聞こえるようになって、それに逆らえずに行動するようになって、結果、修行に進み、拝み屋、霊能者として暮らしていく人々のことです。いわば民間の霊能カウンセラーとでも言いましょうか。祖母は協会に登録された20番目のユタでした。ユタの「協会」は、連絡会議のようなもので、新たなユタが修行して、祓いや拝み、御願(ウガン)などの一定の経験を積んだのち、その道の先達が新人を認めて認定証を発行するんですね。要するに免許皆伝、20番目の認定されたユタが祖母でした。


 ですから幼いころから心霊オカルトなどの不思議なものは当然のこととして受け入れて育ったんです。その点、偏見や壁もなく、そういった世界もあるんだろうと思っていました。


——ユタの「家族あるある」を教えてください。


高江洲 たとえば祖母が「いまから誰々さんから電話くるから、『おばぁはいない』って言いなさいね」と言われると、本当に電話がなるんです。または何時に何々さんが訪ねてきても「出かけた」と不在を伝えるように言われて、本当にその時間に人が来る。いわば予知能力です。黒電話の時代ですからね、不思議だなと思ってました。そういうことは、よくありました。ウチでは普通の日常でしたけど、やっぱり他の家庭からみると異常かもしれません(笑)


 小学生の頃、祖父母と寝ていて、夜トイレに行くのが怖くて、祖母を起こしてトイレまで着いて来てもらうこともあったんですが、後ろに足音がするから祖母が来てくれてると思って安心して用を足して戸を開けると誰もいない。驚くし怖いし、走って寝室まで戻る。すると祖母は寝ているので怖くて聞いたら「アレは違う人よ」と。いや、誰なんだ(笑)


 祖母はユタが相談しにくるユタでしたから、こんな不思議なことは日常茶飯事でした。


——政治家も相談に来ていた?



 


高江洲 沖縄の某市長さんは運転手の頃から知っていますよ。1回目と2回目の選挙のときには当選するために祖母に「御願(ウガン)してください」と頭を下げに来てました。でも3回目は調子に乗ったのか来なかった。すると次は落選したみたいで4回目の選挙のときには、また来てましたね。


 祖母の元には多くの人が訪ねてきましたが、一番変わっていたのは祖母だったと思います。「かみじゃ(上座→神座)」といって「かみごと」専用の部屋があるんですけど、そこで相談者には目もくれず、相談者の横の見えない誰かに話している姿をよく覚えています。でも、これが日常でしたし、そういうものかと思っていました。


——やはり霊能力を継承されたんですか?


高江洲 沖縄のユタの霊能力は隔世遺伝すると知られています。つまり祖母から孫へ伝わる場合が多いんですね。その意味では私よりも弟のほうが霊能者としての素質がありました。祖母とずっと一緒にいたのも彼です。一方、弟に比べて私には素質がなかったのですが、2020年頃から異変が起こり始めたんです。


——どんな異変が起こったのですか?


高江洲 33才を過ぎたあたりからですね。私は視えるのではなく感じることが多かったです。建築業界で働いていましたし、行く先々の現場で、ここは本当に嫌な場所だなと思ったり、体調を崩したりしてました。まるで自分の中に別の誰かがいるような感じで「場所が悪い」「家に帰りたくない」と思うんです。一週間以上の不眠も続いたので受診すると、パニック障害とうつ病だと診断されました。


 そして、4年ほど療養しながら、できる仕事をして何とか暮らし、趣味で怪談YouTuberとして活動し始めました。すると、ある日突然、コメントの文字が躍るようになったんです。もちろん見間違いだと思いましたよ。さらにコメント欄の文字の踊り方で、視聴者の体調や内面がわかるようになってしまった。これは何かがおかしいと思い、祖母のこともあったので霊能者に相談したんです。そして「神ダーリ(神憑り)」だと言われました。後で知りましたが、祖母の神ダーリと症状がそっくりでした。通常、神ダーリは2年くらいで終わるんですが、自分にそんなことが起こるなんて思っていませんでしたから、長引きましたね。


 いまは神ダーリを抜けるために、とある高名なユタの方の指導を仰ぎながら、修行しています。


——どのような修行を?


インタビュー後編に続く


高江洲さんのTwitter:@Kumadakumagoro1


高江洲さんのlit.link:kumagorun

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