「夫と同じお墓は嫌だ」「妻と犬を一緒に納骨してあげたい」大愚和尚が答える、お墓との向き合い方

2024年11月20日(水)17時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

厚生労働省が公表した「令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況」によると、2023年の死亡数は157万6016人で、前年より6966人増加した。「多死社会」への突入が危惧されるなか、YouTubeの登録者数67万人の人気僧侶、愛知県・福厳寺住職の大愚元勝さんは「自分のお墓を誰が守るのかという問題はますます深刻化するでしょう」と語る——。そこで今回は、大愚和尚の著書『心が整うおみおくり-残された人がよく生きるための葬儀・お墓・供養のこと』から、おみおくりとの向き合い方を一部ご紹介します。

* * * * * * *

亡き夫とは同じ墓に入りたくありません


死んだあとにはすべての煩悩を手放すという仏教の捉え方からすれば、同じお墓は嫌だと別のお墓に入ったところで、大きな意味はないのです。

どんな事情から夫と同じお墓に入りたくないという気持ちをお持ちであるのかわかりませんが、いずれにしても夫の生前に離婚するという結論には至らなかった。

子どものためにと考えておられたのかもしれませんし、経済的理由によるものかもしれません。

けれど離婚しないと決めたのはご自分であるはずです。ならば、そのことによって派生するさまざまなことを受け止めなくてはいけないと私は思います。

質問者の心を占領しているのは意地でしょうか。でもその意地に翻弄されるのは故人ではなく遺族です。

たとえばお子さんがいるなら、お子さんはお父さんの眠る場所とお母さんの眠る場所を別々にお参りすることになります。子孫に迷惑をかけることになりかねないということなのですが、それでも意志を貫きますか?

過去よりも未来よりも、今


どうしてもというのであれば、「個」として生き「個」として死ぬ覚悟が必要かもしれません。

従来のしきたりや家族関係をリセットし、自分は合祀墓に入ると決め、着々とその算段をつける。そしてお母さんのことはもう忘れていいからねと言えるくらいの覚悟を持って意志を貫かれると良いと思います。

でもその前に考えていただきたいことがあるのです。

お釈迦様の言葉に「過去は過ぎた、未来はまだ来ない」というものがあります。

過ぎてしまった過去に固執してもしょうがない、未来を思い煩っても意味がない。それより今を楽しく生きることに専念するのです。

夫がいない自由を満喫なさることをお勧めします。そうして自分の心をポジティブにしていけば、今が幸せなのだから過去のことは水に流そうという気持ちになるものです。騙されたと思って一度やってみてください。

夫と同じお墓に入るか否か。結論を出すのはそれからでも遅くはありません。

ペットと同じお墓に入りたい


飼い主さんと同じお墓にペットの遺骨を納骨することは法律では禁じられていません。ただ先祖代々のお墓など他の親族の遺骨が納められている場合には、遺族から理解を得られないというケースが多いようです。

「うちの親は動物が嫌いだったから」ということもあるかもしれませんが、仏教の考える死後の世界「六道」の中に「畜生道」というものがあり、「行いが悪いと死後に畜生道へ行くことになるぞ」といった使われ方をするので、人間と同じお墓にペットを入れることを良しとしない人がいるのではないかと思います。


(写真提供:Photo AC)

けれどペットを愛する人にとってペットは家族。場合によっては肉親を超えるという方も少なくありません。

昔から犬や猫を可愛がっていた人はたくさんいたわけですが、昨今ではペット命という方が増えました。

核家族化と無関係ではないように思います。多くの方が寂しさを癒やしてくれるペットの存在にどれほど救われたかしれないとおっしゃいます。

そうした方が大切な家族と同じお墓に入りたいと望まれても不思議ではないと私は思うのです。

安心して旅立つことができるなら


あるご夫婦には子どもがなく、犬を我が子のように可愛がっていたということですが、その犬が死に、その後、奥さんががんで余命を宣告されました。

その折にご主人が私のところへみえて、「妻と犬を同じお墓で眠らせてあげたい、そのことを妻に伝えることができたら安心して旅立つことができるだろうと思うのです」とおっしゃいました。

「妻は安心して旅立った」と思うことが遺されたご主人の心を癒やすことにつながるのなら、お断りする理由はありません。そこで納骨堂や樹木葬を通じて永代供養をなさることをお勧めしました。

合祀ではない個別のお墓であれば問題はないと私は考えています。まだまだ少ないとはいえ個別のお墓は増えています。

ペットについての考え方は宗派ではなく住職によって異なるので、一度、お寺を訪ねて住職に相談してみてはいかがでしょうか。

※本稿は、『心が整うおみおくり-残された人がよく生きるための葬儀・お墓・供養のこと』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

婦人公論.jp

「お墓」をもっと詳しく

「お墓」のニュース

「お墓」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ