美肌のためには高級美容液より“食事と栄養”が大事な理由とは? 皮膚科医・柴 亜伊子先生が解説

2023年11月22日(水)12時0分 食楽web


食楽web

 秋から冬へと向かう今の季節、乾燥や肌荒れに悩む人も多いでしょう。しかし、高級美容液などで肌を整えたつもりでいても一向に改善されない場合は、外からではなく、内からのケア……つまり普段の食事に原因があるのかもしれません。

 そこで、『きれいな肌をつくるなら赤いお肉を食べなさい』(青春出版社)を出版された皮膚科医の柴 亜伊子先生に、「きれいな肌づくりのために大切な食事と栄養」について、様々な角度からお話を伺いました。

気になる乾燥肌、「お肉と油」の摂取に原因があるのかも?


皮膚科医・柴 亜伊子さん。2010年5月京都市四条にクリニックを開業。オーソモレキュラー療法という栄養療法を取り入れ、スキンケアとともに食事や栄養に力を入れた治療を行っている。著書は『きれいな肌をつくるなら赤いお肉を食べなさい』(青春出版社)

編集部:急激な季節や気温の変化に悩まされる日々ですが、先生のクリニックでも乾燥など肌の乱れについての相談が増えていますか?

柴先生:夏は湿度も高く汗をかくのでツヤがあるかのようにごまかされていたけれど、秋から湿度が下がって乾燥が進むことでお肌のツヤ・ハリの無さが顕になっちゃうんです。季節の変わり目で多少は仕方がないのかもしれませんが、一気に肌の調子が変わったというなら、お肉と油が足りていないのかもしれないですね。

編集部:お肉と油ですか?


「オージー・ビーフ」

柴先生:乾燥肌の女の人は、コレステロール値がすごく低い人が多いんです。コレステロール=悪というイメージがありますが、それは間違い。もちろん、高すぎるのはだめですけど低すぎるのも良くない、バランスが大切なんですよね。日本の痩せている女性は結構な割合で低コレステロールなんです。

編集部:そうなんですね。やはり、お肉を食べた方がいいんですか?

柴先生:そうですね。牛肉は美肌に必要な動物性たんぱく質やビタミン・ミネラルがバランスよく入っていて、足りないのはビタミンCと食物繊維くらい。霜降り肉ではなく、オージー・ビーフのような赤身肉(モモ肉)を選ぶといいですよ。


意識的に野菜と摂るという人は多いけれど……

柴先生:美肌のために高い美容液などを塗っても、サプリメントを摂っても、肌を支えるコラーゲンはタンパク質とヘム鉄とビタミンCでできているので、口からそれらを補う必要があります。皆さんビタミンCには意識があるけど、タンパク質とヘム鉄が無かったらビタミンCだけ摂ってもコラーゲンは作られないんです。

編集部:タンパク質などが不足すると、たるみの原因になると聞いたことが……。

柴先生:国民健康・栄養調査報告によると、日本女性の平均摂取カロリーは戦後の1946年よりも少ないんです。カロリーが足りないとせっかく摂ったタンパク質はエネルギー源として燃やされてなくなります。タンパク質とヘム鉄が不足していると、コラーゲンが作れず肌を支えられない。重力で負けちゃう。最近、20代の方でほうれい線が目立つ人が増えているのもそのせいかもしれませんね。


コレステロールやカロリーを気にしすぎて、必要な栄養が十分に摂れていない人も多い

柴先生:日本人、特に女性は脂質の摂取を気にしすぎていて、カロリーが足りていない方も多いんです。皮下脂肪からも女性ホルモンを出してくれるのに。

編集部:コラーゲンペプチドはたるみに効果がありますか?

柴先生:ある大学のデータによると、コラーゲンプチペドの摂取で差が効果が出たのは50歳以上の方。それ未満の年齢では有意差がなかったんです。女性は閉経したら崖から転がるように老化が進むと学会でも言われていますが、それだけ食事の量も減り、十分なタンパク質が摂れていないからコラーゲンぺプチドで差が出たのでしょう。


柴先生の著書『きれいな肌をつくるなら赤いお肉を食べなさい』では、1回の食事で手のひら2枚分(約200g)のタンパク質を摂ることを推奨

編集部:確かに、年齢を重ねるごとに食が細くなる人が多いですよね。

柴先生:せっかく閉経して月経による鉄などの損失がなくなったのに、口から栄養を摂取して補充しないと今までの月経で減った鉄などの不足はどん底のままで勝手には増えません。だから更年期以降で元気な方と、そうではない方との差がはっきり出てきてしまうんです。

編集部:元気な人って、お肉をたくさん食べているイメージ!

柴先生:高齢でもお肉が食べられるということは、お肉が消化ができる消化酵素がしっかりと作れていて、消化吸収できる胃腸を持っているという証拠なんですね。

タンパク質は「量を食べられなくても、回数で稼ぐ!」

柴先生:いきなりタンパク質の量を増やすと胃もたれしたり、そもそも食べれない方も多いですよね。最初は少しずつ増やす・食べる回数を増やすなど、いきなりたくさん食べずに回数で稼ぐ。お肉でも卵でも毎日同じものを食べ続けたら、食物アレルギーになるリスクが上がります。毎日食べたくても2日、3日食べたら1日以上空ける、種類を変えるのが大切。お肉だったら牛、豚、鶏もあるし、レバーとか砂肝、魚介類、卵や大豆もいい。ローテーションでいろんなものを楽しく味わえたらいいですね。


「タンパク質と一緒に良質な油も必ず摂りましょう!」(柴先生)

編集部:油はタンパク質と一緒に摂るのがいいんですか?

柴先生:はい。タンパク質と一緒に、バター、オリーブオイル、米油など良い油も必ず摂りましょう。栄養素の吸収もアップします。例えば米油やオリーブオイルは、オレイン酸やビタミンEを含むオメガ9系の油。ビタミンEは女性ホルモンの味方なので、積極的に摂取したいですね。

編集部:お魚は何がおすすめですか? マグロや鯛は?

柴先生:マグロや金目鯛は水銀が多いので、嗜好品と捉えましょう。食べるなら、鉄分やビタミンB群が多い鰹や青魚のサバ、ブリ、サンマ、アスタキサンチンやビタミンDが豊富な鮭、タラなどいろんなものをローテーションして。魚不足はEPA不足にもつながるので、苦手な人は鰹節やちりめんじゃこから始めるのもおすすめですよ。

プロテインは美容&ダイエットに効果がある?

編集部:最近、プロテインでタンパク質を補うダイエットが人気ですよね。

柴先生:プロテインはあまり、おすすめしていないんです。例えば、赤身ステーキ100gに含まれているタンパク質はおよそ8g。プロテインでタンパク質10gを飲む場合、赤身ステーキ125gを一気に身体に流し込んでいるのと同じことなんです。

編集部:本当に吸収されているか不安ですね。

柴先生:みんなプロテインを飲むときって一気飲みするでしょ? 本当に消化できているとは思えない。腹持ちがいいって言うけど、ただ胃もたれしているだけだったりするんですよね(笑)。市販のプロテインの原材料は大豆タンパク・牛乳タンパクがほとんどで、毎日摂ることで食物アレルギーを非常に起こしやすくする可能性が高い。

野菜がたっぷり入ったスムージーも一気飲み。「胃腸がびっくりしてるんちゃう?」という話なんです。スムージーは一気に糖質を流し込むから血糖値も上がりやすい。りんごやバナナ、はちみつ、シロップを入れたら尚更ですし、市販品ならシロップや人工甘味料も入っているから腸内環境も荒らしやすいんです。

食事の基本は「よく噛んで、楽しく食べること」

柴先生:軽めの朝ごはんにしたかったら、味噌汁や中華粥もおすすめです。日本のおかゆは昆布など植物性のお出汁ですが、中華粥は鶏ガラから出汁をとりますよね。本場ではピータンとかレバーを入れるみたいに卵などのタンパク質を入れるともっといい。さっきスムージーの一気飲みは良くないと言いましたが、野菜をポタージュにしてゆっくり一口ずつ飲むならおすすめです。

「消化力」は鍛えられるの?

柴先生:本来、消化酵素って栄養をしっかりと摂って入ればちゃんと作られているはずなんです。でも、心臓や肝臓とか命に関わるところから栄養は回っていくので、女性ホルモンや皮膚、髪の毛、消化管は後回し。目に見える部分・自覚しやすい部分に出てきたトラブルはタンパク質不足のお知らせです。

編集部:消化と言えば、昔から「よく噛んで食べなさい!」と言われていますよね。

柴先生:噛むことはすごくいいことです。消化酵素が出るし、脳の活性化にも繋がる。あとはおいしい、楽しいと思いながら食べれば、消化酵素がドバーッと出てくる。食事の基本はおいしいと思って食べることが大事なんです。


柴先生に普段どんな風にタンパク質を食べているのかも聞いてみました

柴先生:私は牛肉、豚肉、鶏肉、魚介類のローテーション。豆腐や卵は副菜に。お肉を食べるとき、なるべく青魚も食べるようにしています。肉を食べるなら塩コショウで野菜と一緒に焼くだけ。市販のローストビーフを買うことも。

編集部:お肉とお魚、両方食べるんですか?

柴先生:両方食べられる時は食べます。昼はあんまり食べないので、夜にドーンと食べるんです(笑)

編集部:1日の食事の山が夜に来ても、消化に問題はないですか?

柴先生:本当はだめです(笑)。私自身は対策してますが。皆さんの中には昼に時間がない方も多いでしょうし、仕事中は交感神経が過緊張で胃腸の機能が落ちてしまっていてたくさん食べると消化吸収に悪いことがあります。そういうときは無理にたくさん食べないで、消化の良い柔らかめのタンパク質と糖質で軽めに済ませたほうが良いこともあります。リラックスしているのが晩ごはんなら多めに食べるのもありです。ただし必ず消化できる範囲で。

糖質はお肌に良い?

柴先生:本当はお肌のために糖質をたくさん摂らない方が良いんですけど、糖がだめなわけではなく、血糖値の乱高下が問題なんです。糖質制限をしても良い人は、タンパク質や油でちゃんと1日の必要摂取カロリーが摂れていて、糖質がなくてもエネルギー代謝が回せる人だけ。日本の女性のほとんどは胃腸も弱くてカロリー不足なので、糖質も含めてもバランス良くカロリー摂取したほうがいいことが多いです。

編集部:糖質を摂るとしても、良質な糖が良いということですよね?

柴先生:そう! 食べるならお米や芋。芋はいいですよ〜。


手作りならフライドポテトもOK [食楽web]

柴先生:フライドポテトも、自分で揚げるなら良いですね。じゃがいもをくし切りにして油で揚げ、ブラックペッパーやガーリックパウダーをかけたらすごくおいしい。じゃがいもはビタミンCと食物繊維が摂れますし、長芋は女性ホルモンの源になる成分が含まれています。芋は女性の味方なんです。

いくつになっても肌は生まれ変わりますから、まずは食事で十分な栄養を摂取しましょう!

編集部:いくつでも肌は生まれ変わる……なんて心強い言葉! ありがとうございました。

調査結果

 美肌の土台作りに必要な動物性たんぱく質と鉄分は、牛の赤身肉などで効率よく吸収できます。普段あまり動物性たんぱく質を食べていない人はまず、2倍に量を増やして実践してみましょう。

(取材・文◎亀井亜衣子)

食楽web

「先生」をもっと詳しく

タグ

「先生」のニュース

「先生」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ