明知鉄道の「きのこ列車」でのどかな景色を眺めつつ珠玉のきのこ料理を味わってきた

2023年11月23日(木)10時50分 食楽web


食堂がある列車が楽しみ過ぎる! はしゃぐ筆者。午後0時25分に恵那駅を出発し、明智駅までの25・1キロを、約1時間かけて進む。 | 食楽web

●岐阜県を走る明知鉄道で例年大人気の企画列車「きのこ列車」に乗車。果たしてどんなきのこ料理が味わえるのか、乗車レポートします。

「どうしておなかがへるのかな」という童謡がありますが、ホントそれ。ありきたりですが「食欲の秋」とはよく言ったもので、おなかがすいて仕方ありません。とはいえ、悲しいかな中年の胃袋。「胃腸に優しい軽いものをモリモリ食べたい」という、微妙な欲が爆発しています。

 そんな折、友人からぴったりなグルメがあると聞きました。明知鉄道(岐阜県恵那市)の人気企画「きのこ列車」です。運行は1日1便。28年続く、人気列車なのだとか。中央本線恵那駅と明智駅の間を走るローカル列車の食堂車で、特製のきのこ料理がいただけます。まるで大人の遠足。コレは、ぜひ岐阜に行かなくては。


明智駅はこじんまりしていながら、趣たっぷり。電車の出発を待つ間も楽しく撮影しまくり、時間ギリギリで仲間と慌てて乗り込む筆者

 関東在住の筆者は、明知鉄道は初乗車。11月某日、向かってみました。きのこ列車の切符は1日乗車券。恵那駅から終点の明智駅へ向かう間に食堂車で料理が楽しめるのですが、今回は都合により、逆の明智駅から乗車しました。


明智駅のホームで出会った、明知鉄道のゆるキャラ「てつじぃ」。明知鉄道は1973年に廃車となったSL(C12型244号)の復活運動を目指しているそう。いつか着ぐるみのてつじぃ(いるらしい)にもお会いしたい!


明智駅はその名の通り、明智光秀ゆかりの地。本願寺の前に詠まれた名句が、ラッピング電車にあしらわれている

めくるめくきのこ料理の宴が始まる


食堂車は4人掛けテーブルがずらりと並ぶイメージがありましたが、きのこ列車の場合は、一般的なロングシートの前に机を並べる仕様。見知らぬ旅客と顔をつき合わせて食べるのも面白い

 食堂車が開くと、予約客が次々と乗り込みます。係員へ予約名を告げ、指定の席に着席して、重箱のフタをいざオープン。


3つの店が日替わりで担当するというお弁当、この日は「ひるかわゴルフ場レストラン」のものでした

 献立は、充実の全20品! この「ちょこちょこ品数多く」が嬉しいんですよね。お目当てのきのこ料理は、以下のとおりでした。

・桜シメジ ほうれん草菊花
・ロージ茸のショウガあえ
・占地(シメジ)マヨネーズあえ ワサビぞえ
・なめこ山くらげ
・イクチ茸の酢の物 大根おろし
・舞茸、エリンギの天ぷら
・松茸入り土瓶蒸し
・茸ごはん(ひたらけ、なめこ、キクラゲ、麻竹)


きのこ列車の献立表

 なめこやマイタケなどの身近なきのこに加え、ロージ茸やイクチ茸など、あまり出回らないであろうレアなきのこに興味津々です。


群生して円状の「菌輪」となることもあるサクラシメジ。世界の伝承では、それが妖精の世界の入り口とかドラゴンの休憩場所だと言われたり。そんなきのこの味はいかに?

 サクラシメジは淡いピンク色の傘が特徴ですが、調理後だからか、色味ははっきりとは確認できず。噛みしめるとサクッと歯切れよく、シコシコしています。わずかに感じられるホロ苦さも、いいアクセント。


ツルンとした食感が写真からも伝わってくる、なめこ山くらげ。緑色の野菜が山くらげ

 ポピュラーななめこは間違いのない味わいですが、この皿の特筆すべきは、なめこの横に横たわる「山くらげ」のほうでしょう。山くらげは中国原産のステムレタス。レタスといってもよく見る丸い形のものではなくウドのようなビジュアルで、太い茎の部分を食べるのです。日本には乾燥させたものが輸入されており、サラダなどに使われているよう。山くらげのコリコリした食感と、なめこのツルリとした舌触りのハーモニーが楽しい!


イクチ茸の酢のものに大根おろしをトッピング。イクチ茸は、マツタケの少し前に出ることから、マツタケ探しの目印にもなるんだとか

「イクチ」は初耳だな……?と思っていたら、キノコマニアの同行者いわく「アミタケの地域名」との話。ほかにもイグチ、アミコ、シバタケなどの呼び名があるよう。イクチ茸はナメコのようなぬめりがあり、歯触りしゃっきり、噛むとうまみがじんわり。

 酢が効いているせいかクセはなし。つるんと胃におさまってしまいました。イクチは塩漬けやキノコ鍋で食べるのも定番とのことで、それらもたまらなく美味しそう。またぜひ出会いたい食材です。


“ツウのきのこ”と名高い、ロージ茸(クロカワ)

 お次はロージ茸。見た目はちょっとレバーの醤油煮のような色と形。お品書きには「ロージ茸」とありますが、漢字にすると「老茸」。ネット検索では「苦みの強い大人の味」と説明がありましたが、これもまた少し酸味を効かせた味付けのおかげかクセなく食べやすい。

「香りマツタケ味シメジ」なんていうけれど、今回はロージ茸が一番のヒットかも。肉厚の身をギュワッと噛みしめると、弾力があるけど歯切れよし。うまみがしっかり感じられ、ネット情報の「酒に合う」は完全同意。日本酒が欲しくなるなあ。


誰もが知る高級料理「マツタケの土瓶蒸し」。汁を2/3ほど飲んだら、マツタケもいただきます。しっとりシャキシャキ、存分に噛みしめなくては

 知ってるけれどそう何度も口にしたことはないマツタケの土瓶蒸しは主役級の存在感。お猪口に汁を注いでクイっと飲むと……やさしい出汁の香りに癒される! 薄めのだし汁って、永遠に飲めますね。フタをとって、ここぞとばかりに香りを吸い込んでしまいました。

 これらに加えて、きのこの炊き込みご飯もあるので、完食すれば正直かなりおなかいっぱい。ところが同行の30代男性2名は、さすがの若さかガタイのよさゆえか。モリモリおかわりしていました(乗車前もかなりのサイズの五平もちとか食べてるんですが)。ごはんはおかわり自由、ガッツリ食べたい人も満足できたようです。


かわいらしい後光がさしているような、極楽駅を通過する。きのこ列車が通過する面白撮影スポットのひとつ

 食堂車には観光バスガイドのように司会者も乗り込み、いろいろな質問に答えてくれました。美味しいものはつい黙々と食べがちで、時折シーンとなるのが気まずい時もありますが、この司会者さんの存在で、車内が和やかに盛り上がるのが素敵でした。美味しい食事は、雰囲気づくりも大切です。


食堂車は司会付き。景色の見どころなどの解説もしてくれます

 きのこ列車は11月までですが、これからの季節は「じねんじょ列車」がはじまります(12〜3月)。また、通年実施されているのは「寒天列車」(全て要予約)。のどかな田園風景を楽しみながら、地元食材に舌鼓を打ってリフレッシュ。土地と季節の味わいを、存分に楽しめること請け合いです。


恵那駅から明智駅までの食堂車を楽しんだあとは、1日乗車券で明知鉄道沿線を小旅行するのがおトク。岩村城下町など、見どころがたくさん

●DATA

明知鉄道(株)

「きのこ列車」は 9〜11月(月曜運休)。12〜3月までは「じねんじょ列車」 (月曜運休)が運行。
・料金は大人5500円、子供(小学生以下)3300円 明知鉄道の通行手形(1日乗車券)、500円分のお土産つき。
http://www.aketetsu.co.jp/

(取材・文/ムシモアゼルギリコ)

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