進化するベーシックーサスティナブル・デニムとして生まれ変わったEDWINの「503」

2022年12月10日(土)10時0分 ソトコト

素材・加工・付属品。すべての要素を見直し新たなスタンダードとなる「503」


ソトコト 本日はよろしくお願いいたします。EDWINのSDGsに関する取り組みについては、
はかなくなったジーンズを新しいジーンズに生まれ変わらせる循環型ジーンズプロジェクト「CO:RE」





でも紹介させていただきましたが、今回はEDWINの看板商品である「503」が、サスティナブルな要素を取り入れてリニューアルされたとうかがいました。どういった点でのリニューアルとなったのか、お話しいただけますでしょうか。
高嶋 大輔さん(以下、高嶋) 今回、私どもの定番商品である「503」は“素材”、“洗い加工”、“付属品”の3つのポイントでリニューアルを行ないました。
まず“素材”に関してですが、デニム生地には「CO:REプロジェクト」によって作られたリサイクルデニムを使用しています。「CO:REプロジェクト」とは、EDWINのジーンズを製造する際に発生する裁断くずと呼ばれる、いわゆる端切れや、あるいは、お客さまがもうはかなくなったジーンズを回収し、再びデニム生地に再生する取り組みです。端切れや回収したジーンズを“反毛(はんもう)”という技術によって、再び綿の状態に戻し、糸にして、再び生地として「503」に使用することとなりました。





ソトコト 本来捨てられてしまう材料を使ったリサイクル、あるいはアップサイクルのデニムというわけですね。これは定番商品である「503」のバリエーションということになるのでしょうか。
高嶋 いえ、今後の「503」はすべてこの「CO:REプロジェクト」によるリサイクルデニムとなります。単なる一過性の商品ではありません。次に説明する“洗い加工”についても当てはまるのですが、私どもは昔からジーンズの製造にあたってサスティナビリティということを考えてきました。これまでは声高にそれをアピールすることはしていませんでしたが、今回「503」のリニューアルに伴って、しっかりとSDGsのコンセプトを打ち出していくことがさまざまなソーシャルグッド、お客さまにとってのウェルビーイングにつながるだろうと思い、こうして発信するようにしました。
ソトコト ジーンズ製造にあたっての、EDWINのスタンスをはっきり見せるわけですね。では“素材”に続いて残りのポイントについても、お話しいただけますか。
高嶋 2つ目は“洗い加工”なのですが、一般的なジーンズはワンウォッシュといって、できあがったものを一度洗うことで生地の糊を落とし、より柔らかく、はきやすくする工程を経ているのですが、この“洗い加工”について、今回「プレオゾン+ジェット加工」という手法を取り、従来のジーンズを洗うために使っていた水の95%を節約することができるようになりました。
ソトコト 95%とは、すごい数字ですね。
高嶋 デニムの表面に残った汚れや糊を除去するプレオゾン加工と、循環ジェットという少ない水の量で洗える加工法を合わせたもので、水の量を大幅に節約しつつ、綺麗で光沢のある色合いを出すことに成功しています。この洗い加工については特許も取得しています。
また、デニムにはエイジング…つまり穿き込んだ味わいを出す加工があります。USED(ユーズド)加工と言ったりもするのですが、これは従来、製造の最終段階において職人による手作業によって行なわれてきました。しかしこれも現在、最新のレーザー加工技術が代わりにこの工程を担当するようになっています。これにより、工場で働く従業員の労働環境・労働負荷の軽減を果たすとともに安定した生産量を実現することができました。





ソトコト 生地の再利用だけでなく、資源の節約や労働環境の向上も同時進行で行なわれているわけですね。
高嶋 最後に3つ目のポイントである“付属品”についてですが、ジーンズには生地で作るいわゆる本体の部分のほかに、さまざまな部位があります。たとえばポケット袋地であったり、ボタンやリベットと呼ばれる金属が付属したりもしますが、今回「503」ではポケット袋地にも再生したコットンを使用し、ボタンやリベットなどは再利用性の高いアルミを採用しました。また、ネーム(腰の部分にあるラベルのこと)やタブにも再生ポリエステルを使用しています。
ソトコト メインとなる生地は「CO:REリサイクルデニム」、付属の部分も通常はシルバーなどを使うところをアルミであったり、ネームやタブを再生ポリエステルなどで作られているんですね。本当に、素材から製造方法まですべてにサスティナビリティのコンセプトが乗せられていると感じます。


世界はすでにサスティナブル・デニムの潮流に。EDWINの「503」も遅れずそれに追随する


ソトコト 「503」のリニューアルされたポイントを3つ、お話しいただきましたが、たとえば「反毛」という端材や古い生地を分解して綿に戻して、生地として再構成するといったことは、一般的なジーンズの製造工程にはないものだと思います。これらの新しい工程を導入するにあたっての苦労などはなかったのでしょうか。
高嶋 はい。もちろん自社だけで「503」のリニューアルに必要なすべてのリソースを整えられたわけではありません。たとえば、リサイクルデニムの製造ではクラボウという企業の「ループラス」という裁断くずを再利用するプロジェクトと連携しました。デニム生地にはインディゴという青い染料が使われますから、ほかの生地を作るときに色移りしてしまいます。そのため、このプロジェクトではクラボウ工場のレーンをEDWINの専用レーンとして作り、生地の製造にあたることとしました。





ソトコト デニムならではの製造の事情もあるわけですね。
高嶋 そうですね。ほかにも“洗い加工”の部分でも、先ほど95%の使用量削減に成功したと申し上げましたが、ジーンズは製造にすごく水を使う製品だったんですね。なので「プレオゾン+ジェット加工」の導入前にもさまざまな施策が取られています。たとえば工場の立地ですね。EDWINは秋田県に工場があるのですが、秋田の豊富な水資源を工業用水として利用するにあたり、自らに課した使命があります。それは、自然の恵みを利用させてもらう以上、元の状態に戻して自然にかえすということ。そのため、大型の排水処理施設を備え、単に国や県の基準をクリアするだけでなく、環境に負荷をかけないレベルまで処理を行なっています。
ソトコト こうした新しい工程の導入などが、価格面などに跳ね返ることはないのでしょうか。
高嶋 「503」は今回のリニューアルで1,000円の値上げとなりました。それでも、この「503」が、今の時代にあわせて“進化したベーシック”であると、自信を持って言える商品になったという手ごたえはあります。リサイクルデニムになっても「503」の特徴である「きれいな青み」はまったく失われていませんし、クオリティに関しても今までとまったく遜色がありません。
世界的に見ると、ジーンズにサスティナビリティを求めるのは当然という流れになっています。それに合わせたリニューアルの側面もありますが、しかし「503」を買ってくださる方に、私たちの考えを押し付けるつもりはありません。SDGsのゴールには「誰も取り残さない」というものがありますが、「SDGsの理解のない方はうちのお客さんではありません」という考え方も、また一つの押し付けになってしまいます。なので、そういったことを意識されない方はそのままでよくて、私たちの商品が自然とサスティナブルなものになっていて、それを愛用していただくだけでソーシャルグッドを生み出せる、そういうバランスの取り方が、ファッションなどでは今後重要になっていくのではないかと思います。


より長く愛してもらうために。「誰も置き去りにしない」視点での製造とサービスを


ソトコト 2022年は「503」のリニューアルという大きな節目を迎えられましたが、来年以降の展望について、教えていただけますか。
高嶋 まず「503」のリニューアルに伴って“10年保証”というサービスを開始しています。これは名前のとおり、リニューアルした「503」を、10年間、無償でリペアを行なうというものです。また、「503」以外のシリーズについても「Re:dwin」と銘打った修理サービスを行なっています。これらの施策により、長くEDWINのジーンズを愛用していただければと考えています。
ソトコト ジーンズははき古していくことで味わいが出てくるファッションですが、壊れてしまってははけませんから、修理で長く使えるようになるのはユーザーにとってうれしいことですよね。
高嶋 「10年保証」や「Re:dwin」については、私どもが自社工場を持っているという点も大きいかなと感じています。せっかく工場があるんだから、より長く商品を使ってもらえるようにリペアのサービスをやってみようという話に自然となりました。サービス開始前は本当に需要があるのか不安でしたが、テスト的に実施してみたところ、予想の3倍から5倍の申し込みをいただいています。
ソトコト それだけ、EDWINのジーンズを使い続けたいというユーザーが多かったのですね。
高嶋 世の中にリサイクルデニムは多いですが、自分たちが出したものを自分たちで再利用しているメーカーはほとんどないと思います。自分たちで工場を持っているからこそ、「端切れのような裁断くずがたくさん出ている」ということにも気づけますし、また雇用という側面にも目が行きます。先ほど、秋田の工場についてお話ししましたが、ここでもその地域の方をなるべく雇用することを意識しています。EDWINの工場ができることで、地元経済にいい影響を及ぼすというのもソーシャルグッドの一つですからね。
また、現地の方を雇用することで、技術の継承が行なわれていくんですよ。青森の工場では親子2代で勤めてくださっている方もいます。オートメーション化を進めていますが、それでもやはり人の技術は製造過程において重要な立ち位置を占めます。それが受け継がれていくのも、EDWINにとっては一つの財産になると考えています。
ソトコト 先ほど「『503』のユーザーが必ずしもサスティナブルなアイテムを求めているわけではない」と分析されていましたが、そういった方も自然とSDGsな商品を使って、気づかないうちに環境などに貢献できるよう、EDWIN側がとても多くの工夫、施策を行なっていることがよくわかりました。
高嶋 SDGsの取り組みをしているからといって、たとえばごみをゼロにできるのかといえば、そんなことはありません。同様に、裁断くずもすべてが再利用できるということもありません。ただ、そのなかでも「何かできないか」と模索することが大事だと思います。ゆくゆくは異業種の企業とも協力し、EDWINを愛してくださるユーザーさんも、そしてEDWIN自身も置き去りにすることなく、ごみの削減などに尽くしていきたいですね。
ソトコト 本日は、ありがとうございました。





高嶋 大輔(たかしま だいすけ)
1999年、株式会社エドウインに入社。広報課に所属し、プレス業務や広告・販促の企画デザインを担当。
現在は、ブランディング&マーケティング推進部 マーケティング推進課長。

ソトコト

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