貧しく孤独な少女が服も肌着も、全てを失う…その時に起きた驚きの「現象」とは果たして一体?
2023年12月22日(金)7時0分 マイナビ子育て
親子で楽しみたい物語をご紹介している本連載「親子のためのものがたり」。今回は有名なグリム童話の中から「星の銀貨」を取り上げます。何となく知っているという方は多いかもしれません。お子さんに他人を思いやる大切さを伝えたいときにお話しするのもおすすめの作品ですよ。
「星の銀貨」を子どもに聞かせよう!
「星の銀貨」は「シンデレラ」や「白雪姫」などで知られるグリム童話の中の一編です。とても短いお話なのであらすじも覚えやすく、小さなお子さんの寝かしつけにもぴったりでしょう。
「星の銀貨」のあらすじ
自分も貧しい女の子がどんどんと人に施しをしてしまい、最後にはその身ひとつになってしまう展開は胸が痛みますが、結末にはホッとできるのでお子さんと楽しんでください。
貧しく孤独な少女、持ち物はパンひと切れ
むかし、むかし、小さい女の子がいました。両親がなく、たいへん貧乏でした。しまいには住む場所も眠る場所もなくなり、最後には体に身につけたもののほかは手にもったパンひとかけきりとなってしまいます。それも情け深い人が恵んでくれたものでした。
こんなふうに世の中から見捨てられてしまったので、心の素直な女の子は、神さまだけを信じてひとりぼっちで野原の上を歩いていきました。そこへ貧乏らしい男がやってきて「ねえ、なにか食べるものをおくれ。おなかがすいてたまらないよ」と言いました。
そこで女の子は持っていたパンを残らずその男にやってしまいます。そして「どうぞ神さまのおめぐみのありますように」と祈ってやって、また歩きだしました。
\ココがポイント/✅両親のいない貧しい女の子がいた✅女の子の持ち物はパンのかけらだけだった✅女の子は貧乏な男にパンをあげてやる
すべてを人にあげてしまった少女に起きた奇跡
すると今度は子どもがひとり泣きながらやってきます。「あたい、頭がさむくて、凍りそうなの。なにかかぶるものちょうだい」そこで女の子は、かぶっていた頭巾をぬいで、子どもにやりました。
またすこし行くと、子どもが着物一枚着ずにふるえています。そこで今度は自分の上着をぬいで着せてやりました。それからまたすこし行くと、スカートがほしいという子どもがいたので、女の子はスカートを脱いでそれをあげました。
そのうちある森にたどり着きます。もう暗くなっていましたが、もうひとり子どもがやってきて肌着をねだりました。あくまで心の素直な女の子は、(もうまっくらになっているから誰にも見られやしないでしょう。いいわ、肌着もぬいであげることにしましょう。)と思い、とうとう肌着も脱いで、あげてしまいます。
それまでしてやって、それこそきれいさっぱりなくなってしまったとき、たちまち、高い空の上から星がばらばらと落ちてきました。それはちかちかと光る白銀色の銀貨でした。それだけでなく、今しがた肌着をあげてしまったばかりのはずが、いつのまにか新しい肌気を着ています。
女の子は銀貨を拾い集めて、それで一生豊かに暮らしました。
(おわり)
\ココがポイント/✅女の子は帽子、上着、スカートに肌着まですべて子どもにあげた✅すっかり何もなくなったときに空から星が落ちてくる✅星だと思ったものは銀貨だった✅女の子はその銀貨のおかげで一生豊に暮らした
子どもと「星の銀貨」を楽しむには?
貧しくて孤独な少女が自分のことはまるで気にせず、貧しい人や哀れな子どもにすべてを与えた結果、最後に奇跡が起きるという物語。親子で「よかったね」と語り合える結末となっています。
お子さんには、・女の子に奇跡が起きたのはどうしてだと思う?・自分が貧乏なのに、人にすべて与えてしまうことをどう思う?・もし自分が女の子に会ったらどうしてあげたい?
などと聞いてみるのも良さそうですね。
また、子どもから「どうして空から銀貨が降ってきたの?」「誰が銀貨を降らせたの?」といった質問もあるかもしれません。ひとつの答えがあるわけではないので、ご家庭にあった形でお話ししてあげればよいでしょう。
話すときの工夫としては、ぜひ貧乏な男、頭が寒いと泣く子どもなど、登場人物の声を演じ分けてみてくださいね。
まとめ
貧しくも心優しく、自分よりまず他人を思いやる心を持った少女。パンや衣服をねだられても嫌がったり、迷ったりしない少女の態度が心を打ちます。自分のことももちろん大事だけれども、ほかの人の辛さや苦しみを想像することも人にとって大切なことだと教えてあげてみてください。困っている人がいたら手を貸してあげるやさしさを子どもたちには持ってほしいですね。
(文:千羽智美)
※画像はイメージです
参考「星の銀貨」楠山正雄訳