小田急小田原線の「世田谷代田駅」があるのは、有名な超人気タウン・下北沢の隣。「シモキタ」の陰に隠れて地味な印象もありますが、実際に降りた先には何があるのでしょうか。行って調べてみました。
都心から西方向に走る路線がいくつかある中で、とりわけ「高級」「おしゃれ」といったイメージをもたれがちなのが小田急小田原線。代々木上原駅や成城学園駅など高所得層向けの住宅が広がるエリアや、若者向けの発展が進む下北沢など注目スポットが目白押しです。
その中にあって、あの“シモキタ”と隣接しつつもイマイチ影が薄めなのが、今回紹介する「世田谷代田」駅。実は、大学のアンテナショップやカフェ、穴場のアート施設など隠れた見どころが多い街でもあります。
世田谷代田駅の基本情報:家賃相場はいくら?
小田急小田原線・世田谷代田駅周辺の家賃相場は駅徒歩10分以内、築年数10年以内でワンルームが約8.9万円、1LDKで約14.6万円、2LDKは約19.5万円となっています。(SUUMO、2025年1月14日確認)。隣の下北沢駅周辺より5000円ほど安く、アクセス良好な新宿駅周辺と比較すれば1万円弱ほどダウン。電車交通の利便性を考えれば住居のコスパは多少良い方と言えそうです。
こちらの駅は1927年に「世田谷中原駅」として開業し、戦後すぐの1946年に現在の名前に改称。かつては京王井の頭線・新代田駅との間に鉄道車両を通すための「代田連絡線」が敷設されていましたが、1952年の使用停止後に路線はほぼ撤去・再整備され、現在は遺構やデータもほとんど残っていないそうです。
なお、「代田(だいた)」という地名は、昔この地域に大きな窪地があり、それが日本の伝承に伝わる巨人「ダイダラボッチ」の足跡のように見えたことに由来するのだとか。日本の山や湖沼などを作った国づくりの巨人は、この代田地域の辺りでずしりと足腰に力を込めたのかもしれないですね。
都心から10分の「温泉旅館」とは
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小田急小田原線は2000年代半ばから地下化・複々線化の工事が進行しましたが、それに伴って世田谷代田駅の周辺も最近まで再整備が行われていました。世田谷代田の地上駅舎は2017年に完成したものですが、大きく伸びたひさしやレンガ風の壁面タイルが鮮やかです。
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駅西口横にはおしゃれなカフェ「STREAMER COFFEE COMPANY SETAGAYA-DAITA」が入居。NYスタイルの店内でコーヒーやジンジャークッキーなどを味わえます。
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西口から駅舎の脇に入り、北側を歩くと駐輪場が。
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その先に行った駅東口近くは植栽が端正に整えられています。
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そのまま東方向の緑道を行きます。ここは先述の小田原線地下化に伴い徹去された地上路線跡を再整備した場所で、2022年に開業して以降、世田谷代田を代表する新たな風景に。
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駅から1分ほど歩いた緑道の途中には、なんとも高級オーラあふれる旅館が。「由縁別邸 代田」は「都心から最も近い温泉旅館」をコンセプトにしており、都心からわずか10分という立地にありながら、山奥の温泉地のような静けさと最上級のおもてなしを提供してくれるそうです。
日帰り入浴のサービスもあるそうなので、銭湯好き・お風呂好きとしては1度行ってみたくなりますね……!
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緑道沿いには「由縁別邸 代田」のほか、ハイブロウで和風な雰囲気抜群のマッサージ店舗や飲食店、あるいは幼稚園などもあります。
このままずっと歩いていけば下北沢までたどり着きますが、今回はいったん引き返します。散歩していると、下北沢方向へと緑道を歩いていく人をかなり頻繁に見かけました。緑道の散歩、下北沢に用事があるからということ以外に、世田谷代田と比べて下北沢の方が交通利便性が高いことも関係していそうです。
量販店などの少なさはネック?
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西口改札を出た先にある2021年に再整備が完了した駅前広場には、地面タイルの中央にダイダラボッチの足跡を模したモニュメントが。
ここは区の行政が地域住民とワークショップを開いて整備案を決定したそうで、官民一体で街づくりという姿勢がうかがえます。晴れた日は広場から富士山も見えるそうです。
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広場から環状7号線を挟んで反対側にあるのは「まいばすけっと」。環七は立体交差によって上をまたいで行けるので、駅からのアクセスに不便はありません。
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実は世田谷代田駅周辺では、中規模の量販店はこの店舗が唯一。ここでも生活に困らない程度の品ぞろえはあるのですが、ここにないものを探そうとしたときにちょっと遠出しないといけないのが、世田谷代田駅周辺で暮らす上では注意点と呼べそうです。それ以外のチェーン店なども、世田谷代田駅の近辺にはほとんどありません。
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駅前や「環七」沿いはちょっとした商店街になっています。以前は200件ほどの商店が「中原商店街」を形成していたのですが、環状七号線の道路計画を受けて大半が立ち退いてしまい、現在ではかなり規模が縮小してしまっているそうです。
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そうした中でも昔ながらのお店が全てなくなったわけではなく、よく探してみれば出会えそうです。例えば、こちらの「ジョイフルクワタ」などは、包丁や鋏などの刃物類をはじめ、さまざまな生活雑貨を取り扱っています。
店頭で流れるジャズの音楽が独特のオーラを漂わせていました。こうしたお店が、最盛期には世田谷代田駅前のあちこちで元気に営業していたのでしょうか。
農大アンテナショップ、カルディ直営のテイクアウト専門店も
また、世田谷代田駅周辺には大規模な店舗こそないものの、新進気鋭のものも含む注目ショップや飲食店が増加中だそうです。
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西口すぐの「カフェ カルディーノ」は、輸入食品とコーヒーで有名なあの「カルディ」が直営するテイクアウト専門店です。
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まいばすけっとの近くにあるのは、2019年4月にオープンした「農大ショップ『農の蔵』」。東京農業大学の世田谷代田キャンパスに設けられたアンテナショップで、農大の卒業生や農大と関わりが深い生産者の手で生産された食料品が並んでいます。農大開発酵母「プリンセス・ミチコ」で醸造されされた日本酒も販売されているとか!
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ここはオープンエアのイタリアンカフェ「VERACE PANETTERIA-GASTRONOMIA」と、おにぎりや地域産食材を扱う「おともさん」も併設されています。お昼ごはんにおにぎりかイタリアン、どちらにするか迷いますね。
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駅から徒歩3分の複合施設「ナカハラソウ」は2023年開業。上述の「中原商店街」が育んだ歴史や気配を受け継ぐべく、1階と地下フロアにおしゃれながら温かい雰囲気の飲食店などが入居しています。
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また、世田谷代田駅周辺は個人経営のおしゃれなカフェや飲食店も点在。
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あちこち渡り歩きながら、自分好みの一店をチョイスする楽しみもありそうですね。
駅前〜齋田記念館ルートが散策におすすめ
世田谷代田駅から徒歩数分の場所には、歴史深い寺社や穏やかな緑道、人気番組『ブラタモリ』(NHK)でも紹介されたという穴場のアートスポットも! そちらにも足を伸ばしてみましょう。
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駅から少し南に行き、環七を歩道橋でまたいだ先にあるのは「代田八幡神社」。境内の石鳥居は世田谷区内でも2番目に古いものだとか。
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境内には立派なイチョウの木も。こちらの神社は自然崇拝・祖先崇拝を基調にしているそうで、農地や緑地が広がっていたという代田地域らしさが垣間見えます。
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駅前から環七に沿って南に歩くと、途中で「北沢川緑道」に差し掛かります。こちらは旧北沢川の上に作られており、一部には桜も植えられています。
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緑道のあたりで左に少し入った所にあるのが、真言宗豊山派寺院の「円乗院」。大日如来を本尊としており、おごそかに整えられた正門が見事ながら、創建年が不詳というミステリアスな要素も。
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そして、円乗院から少し歩いた先にあるのが、植栽豊かな敷地が美しい「齋田(さいだ)記念館」。かつてこの地域の指導者的立場として発展に貢献した旧家・齋田家のコレクションである茶道具や絵画、古文書などを展示しています。
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敷地内は日本庭園のように静かな空気に包まれています。記念館部分は蔵のような造り。
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昔の世田谷区代田地域は「代田村(だいたむら)」と呼ばれる農村地帯であり、明治時代には齋田家の経営する広大な茶畑が広がっていたそうです。東京都内には各所に農業の長い歴史があり、現在も所々に農ちが点在しているのですが、現在では「東京の農業」というのは一般にイメージしづらいかもしれません。
齋田記念館で昔の江戸〜東京の農業を、駅前の農大ショップで現在の「TOKYO」の農業に触れてみてはいかがでしょうか。
世田谷代田駅周辺はゆったりマイペースに進歩する街
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世田谷代田駅と新代田駅との間には、昔ながらの佇まいを残す「新寿湯」という銭湯も。代田ウォークでいい汗をかいた後は、こちらで汗と疲れを洗い落とすと良さそうですね。
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世田谷代田駅周辺は現在でこそ商店の数や品ぞろえに乏しさが否めませんが、注目すべき新店が徐々に増加しており、これからの再発展に期待! 流行やにぎわいからはいったん離れて、ゆったり閑静な暮らしをしたい人に向いている街と呼べるでしょう。
この記事の筆者:デヤブロウ プロフィール
都内在住の街歩きライター。Yahooエキスパートとして台東区の地域情報を発信するほか、「macaroni」など複数メディアで執筆を行う。飲食店、博物館、銭湯巡り、寺社探訪を中心に地域情報を発信中。東京シティガイド検定を取得済み。
(文:デヤブロウ)