点検商法で2億8600万円、不安あおる営業トーク「暗記ノート」…「僕たちもプロの職人なんで」
2025年2月21日(金)7時30分 読売新聞
大阪市中央区のリフォーム会社「新日立建託」が屋根の工事契約を結ばせる「点検商法」を繰り返したとされる事件で、京都府警が同社の関係先を捜索したところ、訪問営業時に相手の不安をあおるための「台本」が書かれたノートが見つかった。マニュアル化された手口とは。(林興希、松久高広)
<風が強い日に屋根の鉄板が外れかけてたんですけど、気付いてないですか? 本当ですか!? 非常に危険な状態ですよ>
押収されたノートには、そんな文言が書き連ねられていた。アルバイトが営業時の会話を覚えるための「暗記ノート」だったとみられ、同社は「スクリプト」と呼んでいたという。
同社は「年収1億円以上可能」などと高額な報酬をうたい、訪問営業を担う「アポインター」と呼ばれるバイトをSNSで募集。若者ら40〜50人が集まり、府内や兵庫県内の高齢者らと工事契約を結び、約2億8600万円を稼いだとされる。ノートは若者らが共同生活を送り、研修を受けたマンションの一室から押収された。
府警は昨年11月以降、工事契約の際にクーリングオフ(無条件解約)について故意に説明しなかったなどとして、同社社長らを逮捕。社長らは「親方」役として現場に赴き、実際に屋根を点検して契約を結んでいた。府警は「闇バイト」らを実行役とする「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」による事件とみている。
台本の営業トークは巧妙だ。屋根の木材が腐敗し、瓦が外れたり雨漏りしたりする危険があると告げ、工事の契約を急がせていた。
<今日明日にでも板金屋に見てもらわないと次の雨の日や強風はもたないですよ>
修理業者の知り合いがいないと答えた人に対し、一歩引いて相手を信用させるような会話も用意していた。
<全然どっちでもいいんですけど僕たちもプロの職人なんで見ることも直すこともできますし、ご主人に任せますよ!>
点検を渋る相手には、昨年1月の能登半島地震を話題に出し、さらに不安をあおっていた。
<能登半島地震があったと思うんですけど、倒壊したほとんどの家が屋根のバランスが悪いことが原因で、積み木のように崩れてしまったんですよ。必ず直した方がいいです>
こうした点検商法を巡るトラブルは近年、全国的に増加している。
国民生活センター(東京)によると、2023年度の相談件数は19年度の倍以上となる1万2548件に上り、うち約3割が屋根の工事に関する相談だった。
府警生活保安課は「訪問してきた業者には安易に点検させず、修理を勧めてきてもその場で契約しないよう注意してほしい。契約は一人で決めず、家族などに相談を」と呼びかけている。
相談は消費者ホットライン(188番)などでも受け付けている。