実家がお金持ちという子も...トー横キッズは悪なのか? 大人たちが一度見直すべき若者の闇

2025年3月11日(火)17時0分 J-CASTニュース

トー横キッズという言葉を知らない人は、もういないと思う。

歌舞伎町にある映画館の横道を溜まり場とする若者たちのことで、コロナ禍を中心にトー横の輪は大きく広がった。一時期は全国各地から繁華街に子どもが集まり、街中をうろついていたという。

現在は映画館の傍も、界隈で「広場」と親しまれた空きスペースも立ち入りが禁じられ、"キッズ"が集まれる面積が全体的に狭まった。若者の間で巻き起こったブームは、少し落ち着いたのだろう。

「現実から逃げたい」と繁華街にたどり着く

地べたに座り、談笑する少年少女を見ると「友達の家や近所で遊べばいいのに」と多くの大人は批判する。たしかに、若くして夜の街に抵抗なく立ち入るさまを肯定してはならないのだが、家庭の問題で家にいられない子、いじめに遭って地元で身動きが取れない子など、彼らにもそれぞれ事情があるのだ。

ワケありの子どもたちは身近なところで満足ができる環境ではないため、知らない世界への憧れを抱いてしまう。「ここではないどこかへ行きたい」「現実から逃げたい」という気持ちが強いほど非日常を求め彷徨った結果、行きつくところが派手な繁華街なのだ。

近所の目も気にせず、口うるさい大人も、自分を虐げるクラスメイトもいない。事情を抱えた人間からすると、似たような傷を背負った同世代と遊べば、辛さが一瞬でも薄れる。たとえ交流の場が、ダークな街だったとしても......。

世間ではトー横に足を踏み入れる子どもばかりが非難されるが、一番責めるべきは大人が作り出した闇だと私は考える。未来が見えづらい現代社会に、冷え切った家庭、トラブルを取り合わない学校など、闇を挙げたらキリがない。

10代でホテル暮らし、家には全く帰っていない

本来の歌舞伎町は少年少女が行くべき場所ではないのに、彼らはわざわざトー横を選んでしまうのだから、これは一種の「子どもたちの叫び」だ。

もちろん、ただ遊びに来ているだけの子もいるけれど、あの場から離れられない若者はどこか心が寂しいから。満たされない気持ちを埋めるためにあの一角へ駆け込み、脇道にそれてしまうのだ。

全員が"グレている"と言い難いのがトー横キッズで、実は実家がお金持ちなんてパターンも珍しくはない。

「お金があるなら家の中に不満はないのでは」と私も思ったのだが、話を聞くと、そういう子たちは生活費だけ渡されて、あとは放置とのこと。生活には困らないがコミュニケーション不足のまま育ち、大切なものが欠け、非日常を求めるのだろうか。それも無理のない話だ。

最も驚いたのは10代でホテル暮らしを続け、家族からいっさい連絡がないケースだ。該当者は成人したトー横仲間とホテルの一部屋を借り、家に全く帰っていないという。親はお金を渡してくれるが、子どもの安否やら、現在の動向に関してはノータッチだった。この話を聞いた時、空いた口が塞がらなかったのは言うまでもない。

「わかってほしい、寂しい」という思い

私はトー横キッズを援護するわけではない。しかし、自分も心の隙間を埋めるために、繁華街に逃げた経験を持つ。詳しくは書けないが若干13歳にして人生は波乱万丈で、精神的に耐えられなくなってしまったのだ。当時は音楽好きが高じて、繁華街のライブハウスという居場所を見つけて入り浸ったけれども、例の場所に溜まる若者と根本はあまり変わらない。

地べたに座っているか室内にいるかくらいの違いで、繁華街をうろつく子どもなのは立派に共通しているからだ。「わかってほしい、寂しい」、やり場のない気持ちを同世代がしないであろう遊びで埋めていた気がする。

少年少女がわざとタブーに触れる心理は、想像以上に複雑なものだ。繁華街への出入りを繰り返す人々が減らない理由には、大人たちが作り出した家庭や社会が問題の元凶であることも多い。トー横キッズの流行は、この社会全体の闇を指すといっても過言ではないだろう。

子どもを頭ごなしに怒るだけでは何も解決しないことを、世間の大人は理解しているのだろうか? トー横のトラブルが起きる度に本来目を向けるべき点はどこかと、つい悩んでしまう自分がいる。


【プロフィール】
たかなし亜妖/2016年にセクシー女優デビュー、2018年半ばに引退しゲーム会社に転職。シナリオライターとして文章のイロハを学び、のちにフリーライターとして独立する。現在は業界の裏側や夜職の実態、漫画レビューなど幅広いジャンルのコラムを執筆中。

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