1950年代に東南アジアで収集したイネの品種、栽培可能な状態で日本に…カンボジア内戦で失われた在来品種も

2025年3月13日(木)20時6分 読売新聞

遺伝研で保管されてきたイネの種子から育った東南アジアの在来品種(石井教授提供)

 日本の学術調査団が1950年代に東南アジアで収集したイネの在来品種277種の種子が、栽培可能な状態で国立遺伝学研究所(遺伝研)で保存されていたことが、神戸大などの調査でわかった。内戦の影響で現地で確認されなくなったカンボジアの種子も含まれており、チームは全ての国への返還を検討している。

 調査したのは同大の石井尊生たかしげ教授(植物育種学)らで、2006年に大学校舎を改修工事した際、東南アジアの種子の標本約1200種が倉庫に保管されているのを偶然発見した。

 種子は兵庫県立兵庫農科大(神戸大農学部の前身)の浜田秀男教授らの学術調査団(当時、読売新聞社が後援)が1957〜58年、カンボジア、ベトナム、タイ、ラオスで集めたもので、保存状態が悪く、すでに発芽しなくなっていた。

 事態が動いたのは、2019年。石井教授が、遺伝研の元研究員と話した際、一部の種子が研究所にも送られていた事実が判明。遺伝研を訪れ、277種が栽培可能な状態で保存されていたことを確認した。

 在来品種は、高温や病気に強いなどの特長を備えている場合がある。遺伝研は種子を貴重な遺伝子資源として、栽培と採取を繰り返して大切に保存してきた。

 カンボジアでは1970年代のポル・ポト政権下での混乱や内戦で多くの在来品種が失われたとされる。石井教授と遺伝研は昨年11月、同国産の49種の種子を同国農業研究開発研究所に返還。「品種改良にぜひ使いたい」と感謝されたという。

 石井教授は「貴重な遺伝子資源が原産国に返還される例は珍しい。ベトナム戦争で失われた品種がある可能性もあり、全ての国に返還したい」と話している。

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