ひとりでも「孤独死」しないために大事な3つのこと

2024年3月24日(日)6時0分 ダイヤモンドオンライン

ひとりでも「孤独死」しないために大事な3つのこと

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未婚化や核家族化で、単身世帯が増えている。2022年の国民生活基礎調査によれば、今や日本では、3世帯に1世帯が「ひとり暮らし」だ。家族がいても「最期はひとり」は珍しくない。それにともない、引き取り手のない「無縁遺骨」が増えているというのは「ルポ 無縁遺骨 誰があなたを引き取るか」(朝日新聞出版刊)を著した朝日新聞ネットワーク報道本部記者の森下香枝さん。無縁遺骨の現状、無縁遺骨にならないための対策などを「ひとりで楽しく生きるためのお金大全」(ダイヤモンド社刊)の著者でマネージャーナリストの板倉京さんと語り合った。(構成 白鳥美子)

Photo: Adobe Stock

「終活」を完璧にしていてもそれだけでは不十分?

(前篇「無縁遺骨」10万人社会の恐怖)

板倉京(以下、板倉):「終活」は一般的になりつつあるので、たとえば断捨離や財産整理をしたり、遺言をきちんと書いたりしている人は増えていると思いますが、「ルポ 無縁遺骨」を読むと、それだけでは十分ではないと知って、不安になる方も多いのではないでしょうか。

「ルポ 無縁遺骨」著者で朝日新聞ネットワーク報道本部記者の森下香枝さん。「週刊文春」記者を経て2004年朝日新聞入社。東京社会部、AERAdot.創刊編集長、「週刊朝日」編集長などを経て現職。

森下香枝(以下、森下):皇室ジャーナリストの草分けとして知られる、渡邉みどりさんのケースですね。みどりさんは、「自分は天涯孤独なので」と、50代の時から遺言を用意し、遺産管理人や遺言執行者も指名。マンションを売却して賃貸に住み替え、献体の登録をするなど、着々と終活を進めておられました。それにもかかわらず、一人暮らしの部屋のリビングで亡くなっているのが発見されると、死後、様々な問題が持ち上がりました。

板倉:その原因は、主にどこにあったのでしょう。

森下:想定外のことが次々に起こったんです。まず、死亡届を出すにもひと騒動ありました。死亡届を出せる資格者は、親族・同居人・居住不動産の家主などに限られているからです。結局、家主さんに頼んで出してもらったそうです。また、「異状死」(医師によって病死であると明確に判断されていない死)だったので、死因を調べるために警察で解剖がなされたために、望んでいた献体が出来なくなりました。それ以外にも、携帯電話の解約が簡単にはできなかったり……。遺族じゃないとできないことが、案外たくさんあります。

老後のお金が心配になったらやるべきこと

板倉:みどりさんが、最後はお金にも結構ご苦労されたという話も身につまされます。老後のお金のことは、多くの方がとても心配されています。以前、老後資金の目安として2000万円という数字が出たことがありますが、まったく根拠がありません。そもそも、貯蓄というストックだけで生きるのは、リスクです。物価が上がったら、途端に予定が狂ってしまう。

森下:「何歳くらいまで生きる」なんて、予測がつかないですからね。特に、女性の場合は想定よりも長く生きる可能性が高い。資金が底をつく恐怖、想像するだけでぞっとします。

「ひとりで楽しく生きるためのお金大全」著者で税理士・マネージャーナリストの板倉京さん。税理士資格を取得後、大手会計事務所、財産コンサルティング会社勤務などを経て独立。相続や資産運用に詳しい税理士としてシニアのクライアントを多く抱える。

板倉:死ぬまでのお金の使い方は、だいたい2つのタイプに分かれるんです。バブル世代の人たちは浪費癖が治りにくくて、使い果たしてしまう人が多いかもしれません。一方、心配し過ぎて使わなくて、高額の預貯金を残して死ぬ人もいます。いったい自分はどのくらいお金を使えるのかが分からないんでしょうね。

森下:自分で把握する良い方法はありますか。

板倉:拙著「ひとりで楽しく生きるためのお金大全」にも、必要金額を簡単に計算する方法をざっくり書きましたが、まずは90歳まで生きると想定して、現在の資産、これから稼げる額、これからの出費予定額などを出して計算することですね。さらにやっておいたほうがよいのは、エンディングノートの項目をしっかり書き切ることです。持ってはいるけど書いていないという人がとても多いんです。一冊書き上げると、万が一の時に必要な情報はほぼ網羅されますから、たとえば、震災などの災害で避難するときにも役に立ちます。エンディングノートを、自分自身の外付けの記憶媒体としても、もっと活用してもらいたいです。

「無縁」にならないために、何が必要なのか?

板倉:最近のことですが、神奈川県で一人暮らしをしている父親が、何度電話をかけても出ないことがあってずいぶん心配したのですが、仕事もあるし、すぐには飛んでいけなくて。近所の交番にお願いをして見に行ってもらったことがあります。家族がいても、できないこともある。どんな場合にも「もしも」の備えがあると安心ですよね。

森下:「もしも」の備えとして専門家からいただいた3つのアドバイスがあります。一つ目は、「生前に頼んでおく」。先ほどお話のあったエンディングノートにも、誰に何を頼むかという項目がありますよね。二つ目は、「自分が暮らす街の制度を確認」すること。三つ目は、「つながる力」。仲間や地域とつながり、支え合う。

板倉:確かに、暮らしている街の制度って、案外知らないですよね。行政側がもっとしっかりアナウンスしないと、情報は届かない。もちろん、個人の方でも、自ら出向いていって質問したり相談したりする必要があります。今、「子育てにやさしい自治体」などの情報は、ランキングがあるほどですが、同じように「安心して終活ができる町」を競い合って欲しいですよね。

森下:現状では、自治体によって、終活を支援する体制にかなり差があります。たとえば、横須賀市は2018年に国に先駆けて全国で初めて「わたしの終活登録」事業に乗り出しました。全市民が緊急連絡先、かかりつけ医、遺言書の保管場所やお墓の所在地などを無料で登録できる制度です。「ルポ 無縁遺骨」では、他にも終活支援に積極的な自治体をいくつか紹介していますが、まずは、今自分が住んでいる場所、親が住んでいる場所の制度を確認してどんな制度があるか確認してください。不満があるようなら声を上げることも大事です。

板倉:あるいは、サポートが手厚い自治体に引っ越しするとか(笑)。

森下:年を取ったら、結局は近所の役所が頼りになる。元気なうちに役所の人と関係を作っておくと、いざ困ったときにも相談しやすいですしね。

板倉:三つ目に挙げられた「つながる力」は、広くとらえたいですね。友人や知人に限らず、役所ともつながる。近所ともつながる。場合によっては、プロの手も借りる。程よい距離感を保ちながらつながり合うことで解決できることは多そうです。

森下:「無縁遺骨」は、決して他人事じゃない。だからこそ、そうならないためにできることをきちんと考えていきたいですね。

 *本記事は、独身者向けのお金&老後策を書いた、「ひとりで楽しく生きるためのお金大全」著者・板倉京さんと、「無縁遺骨」の現状や対策を著した「ルポ 無縁遺骨」の著者・森下香枝さんの対談です。

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