福島・二本松駅に降りたら「なみえ焼そば」…浪江町生まれのソウルフードです
2025年3月28日(金)9時52分 読売新聞
JR二本松駅で東北線を降りると、お目当ての市民交流センターはすぐに分かった。白いビルの自動ドアが開いた瞬間、ソースの香りが食欲を刺激する。その先に「杉乃家」はある。
看板メニューの「なみえ焼そば」(750円)は文字通り、福島県浪江町で生まれたソウルフードだ。店主の芹川輝男さん(75)によると、もともとは町の労働者が食べやすく、腹持ちも良いように考案されたという。ご当地B級グルメのブームもあって全国的な知名度も高まっている。
食材はほぼすべて福島県産
芹川さんは20歳代から妻・春子さん(75)と浪江町で店を営んでいたが、2011年3月の東日本大震災と原発事故で人生が変わった。転々と避難生活を続け、たどり着いたのが町の役場機能が置かれた同県二本松市。縁あって市民交流センターの一角に店を構えた。
うどんのように太い中華麺に、具材は豚肉ともやしだけ。濃厚で甘辛い特製ソースが絡んでいる。食材はほぼすべて福島県産だという。太麺の芯まで熱を通し、ソースをむらなくなじませるので、少し待ち時間はかかるが、一番うまい焼きたてを食べてほしいと、注文を受けてから調理している。
こちらもオススメ…かりんとう
単品でも食べ応えは十分ながら、ご飯とスープ、サラダなどが付いた定食が980円、そば大盛りが1000円と、お手頃な値段で満腹になれる。お土産に、なみえ焼そばの風味が楽しめる「かりんとう」(1袋80グラム370円)2種類を持ち帰った。
すでに震災から14年。浪江の店は取り壊してしまったが、箸袋には前の店の所在地と電話番号を残し、のれんもそのまま使い続けている。いまだ帰還困難区域が残る町について、「思いは強いけれど、現実的にはもう戻るのは難しい。店が町に帰れない人たちのよりどころになれば」と芹川さん。
太くて甘辛い焼そばには古里の味が染みている。
※税込み。記事中の値段などは紙面掲載時のものです。
国内外の総支局長が、日頃通っている店のおすすめメニューなど、地域の自慢の味を紹介します。
杉乃家
福島県二本松市本町2の3の1 市民交流センター1階
午前11時〜午後2時、
午後5時〜7時
原則、火曜定休(要確認)