東京都と神奈川県の境目・多摩川に面した世田谷区の「二子玉川」。高島屋や二子玉川ライズが有名ですが、ほかには何があるのでしょうか。実際に降りて確かめてみました!
二子玉川と聞いて多くの方々は、近年の再開発エリアの中心「二子玉川ライズ」や、高級百貨店「高島屋」などをイメージするのでは。こうした施設の存在と、多摩川や神奈川県側に面していることもあり、「開放的」「明るい」「高級」という印象を持たれることもしばしばあります。
実際の二子玉川もそうした側面が強い一方、駅前を抜け出て少し歩けば意外な一面も。施設の緑化や公園など街全体に緑が多いほか、昔ながらの下町商店街や、多摩川の河川敷近くにはちょっとした歴史スポットがあるなど、ショッピングだけではないさまざまな楽しみ方をさせてくれる街なのです。
二子玉川駅の基本情報:家賃相場はいくら?

二子玉川駅に入る路線は東急田園都市線と東急大井町線の2つ。とりわけ田園都市線は東京メトロ半蔵門線や東武伊勢崎線(スカイツリーライン)にも直通しており、三軒茶屋・渋谷・表参道や都心部の大手町駅、東京スカイツリーのある押上駅や埼玉方向にも電車で1本!
一方、大井町線を使えば大井町駅からりんかい線経由でベイエリアのお台場・有明にも行きやすいなど、特に都心へのアクセスに恵まれています。
二子玉川駅周辺の家賃相場は駅徒歩10分以内、築年数10年以内でワンルームが約8.7万円、1LDKで約11.7万円、2LDKは約14.7万円。(SUUMO、2025年4月3日確認)。田園都市線の中では中間値よりやや高めという程度で、数駅先の渋谷に比べると4万円近くも割安。それで住環境も良好となれば、かなりの穴場と呼べるのではないでしょうか。
駅を出てすぐ「二子玉川ライズ」の大吹き抜け

東急の二子玉川駅を出ると、ほぼ駅直結の位置に「二子玉川ライズ」があります。実に40年以上前の1982年から開発がスタートし、長い時間を経て2015年に完成した大型商業施設です。

取材日はポカポカとした晴れの日ともあって、すごい人の数! 家族連れや犬を散歩させている人も多く、早速住環境の良さが感じられます。現在の二子玉川ライズはすっかり街の顔として定着。二子玉川駅を起点とした敷地内に商業施設、オフィス、住宅、6.3平米の広大な公園を備えています。

建物自体の空間設計も圧巻! こちらのガレリア(吹き抜け)は長さ約100m、幅約20m、高さ約30mにおよび、中規模のマンションならすっぽり収まるほどの広さです。

こうした大空間だけでなく、ショッピングセンターに沿った屋外の「オークモール」など、生活感あるエリアも見どころ。どこへ行っても通行人が多く、建物の配置や建物間の動線がとてもよく設計されています。

ガレリアから少し進んだ先は「テラスマーケット」という別エリアへ。階段を上った先に屋外モール、植栽、イベントスペースなどが設けられ、人混みの多さに対して窮屈(きゅうくつ)さはさほどなく、ゆったりと移動できます。ほかの施設では、立川の「GREEN SPRINGS」(2020年開業)などが似た雰囲気でしょうか。

もちろん施設内では数々の高級ショップやレストラン、カフェも充実しているほか、普段使いのお店も完備。「東急フードショー」「東急ストア」「ビオセボン」など、施設内は日用品・食品の買い出しにも困りません。
意外とローカル店舗やアートスポットも充実

二子玉川ライズ内には意外なお店も。オークモール端にある「八百五(やおご)商店」は、二子玉川エリアが大規模再開発される以前から地元で長年愛されているお店で、他店にない生活感とにぎわいがあります。

店先にも多くの野菜が並んでおり、ピーマンは税抜148円! 野菜価格が高騰するなか、この値段は貴重ですね。

文化系施設も充実しており、こちらの「PLAY! PARK ERIC CARLE(プレイパーク エリック・カール)」は、『はらぺこあおむし』など絵本で有名な作家エリック・カールの世界観を完全再現。まるで絵本の中に入るような感覚で、子どもたちがのびのびと遊べる日本初の施設です。

「二子玉川 蔦屋(つたや)家電」は、蔦屋書店を中核にしてライフスタイル全般を提案するハイエンドな店舗。「スターバックスコーヒー 二子玉川 蔦屋家電店」も併設されています。

施設内の「109シネマズ二子玉川」は、IMAXレーザー2Dのモニターや7.1ch音響を備えたモニターを用意したシネマコンプレックス。臨場感あふれる映画体験を提供しています。

109シネマズに接続する空中回廊の先にはルーフガーデンも。人の往来から少し離れた位置にあり、二子玉川ライズ内を巡って疲れたときの休憩にも良さそうです。

ほかにも、二子玉川ライズ内には楽天の大型拠点「楽天クリムゾンハウス」もそそり立っています。内部には楽天のオフィスや会議室のほか、ECサイト運営のノウハウを伝授する「楽天大学」、ゲストをもてなす「楽天クリムゾンクラブ」、広々として開放的な社員食堂&カフェ、コンビニや保育施設まであるのだとか。

取材時はテラスマーケット内で、楽天がイベントを実施していました。全体的にファミリー向けの雰囲気ながら、展示されていた内容は金融関連などかなり本格的。多くの人がイベントに訪れており、さながら楽天の城下町のような雰囲気です。

二子玉川ライズ内は「学び」「文化」「アート」への振興や資本投資が非常に活発。大掛かりな施設やイベントに限らず、あちこちにミニ展示も配置されており、何も買わずとも歩いているだけで楽しめる街づくりがされています。

もちろん、ここでの生活環境自体も清潔で明るく便利! この環境を求めて多くのファミリーがニコタマ住まいを選ぶのも納得ですね。
現在の「ニコタマ」に深く関わる高島屋

いったん二子玉川駅に戻り、今度は西方向へと進んでみます。国道246号沿いの風景は大きく開けており、とても爽やか。こちらの風景もまた「二子玉川らしさ」を担っています。

国道の向こう側にある「玉川高島屋S・C」は、1969年に開業した日本初の郊外型ショッピングセンター。二子玉川ライズと同様、この地域のみならず日本の都市再開発を振り返る上で重要なスポットであり、二子玉川の地域を現在のような商業地に作り替えた立役者でもあります。

玉川高島屋は百貨店と専門店による施設構成だけでなく、環境共生モデルをいち早く取り入れた屋上庭園、施設の緑化など、先進的な特徴をいくつも備えていました。

緑地や地形と半ば一体化したような外観は特異でありながら、それが雑然とはならず、いたって清潔かつ穏やかに保たれているのはまさに見事。

また、実は玉川高島屋では「ユニクロ」が3月20日にオープンしたばかり。外観のあちこちにある立方体ディスプレイもユニクロカラーに染まっています。

玉川高島屋と二子玉川ライズで共通しているのは、屋外部分が歩いていて楽しめるよう設計されていること。ただし、屋外通路が駅から水平・直線的に伸びている二子玉川ライズに対し、玉川高島屋の方は屋外テラスや階段が垂直方向に積み重なっており、地上から一番上まで行くとちょっとした山登りのようです。

南館最上階の屋上庭園「パーク&テラス オソト」は、ヤシの木や低緯度の広葉樹が生い茂っていて、まるで南国のような雰囲気。屋上レストランもあり、トロピカルな緑で目を楽しませながらグルメに浸れます。

南館と本館間をつなぐ回廊部分からは、東京西部の空を一望できます。空気の澄み具合によってはかなり遠方まで見通せるかも。

本館の屋上庭園「フォレストガーデン四季の森」は南館に比べると、より日本の自然環境に近い森のようなイメージです。パラソルテーブルと椅子も配置されています。

さらに園芸店もあります。世田谷区随一の高級エリアにある百貨店の最上階に、ほのかに土の香りが感じられそうな園芸店があるというのも少し不思議な感じですね。

屋上には「伏見稲荷神社」の小さなお社もあります。
この後はエレベーターで本館1階に降りたのですが、降りた先の吹き抜け部分では玉川警察署が「春の交通安全運動」イベントを実施していました。玉川高島屋は単なる百貨店という以上に、地域の文化や活動の場、自然をたしなむ場として認知されていることが分かります。

このほか、駅前の商業施設としては2017年開業の「キュープラザ二子玉川」にも注目。カフェやレストラン、「ライザップ」のほか、1〜2階にはアウトドア用品ブランド「モンベル」の大型店が入っています。

また、二子橋のふもとにあるサイクルショップ「ジャイアントストア」は丸みのある窓がかわいく、どことなくアメリカンな雰囲気。二子橋は数多くの自転車利用者が行き来しますが、このお店で自分好みの自転車を買った人が少なからずいるのかもしれませんね。
高島屋の裏手にある、ローカルな「二子玉川商店街」

ここまでは二子玉川ライズと玉川高島屋S・Cを紹介しましたが、このほかにも二子玉川にはローカルな見どころがあり、その1つが「二子玉川商店街」です。

商店街は玉川高島屋S・Cの裏手に広がっており、昔ながらの飲食店など、個人経営のお店がたくさんあります。年季の入った和菓子屋やラーメン屋もあり、一般的な二子玉川のイメージとは趣の異なる、昔ながらのローカルなエリアになっています。

その商店街にほど近い「谷川(やがわ)緑道」は名前のとおり、かつての谷川の跡地を再整備した場所。大型ショッピングモールや246号のにぎやかさから離れ、ゆったりと歩ける道として、住民の散歩路や生活路に利用されています。「花みず木の小径(こみち)」という別名もあります。

緑道の散策中に「cafe&art 土筆(つくし)」でくつろぎつつ、コーヒーやランチを楽しむ休日もよさそうですね。

そして緑道の先へ少し進んだ場所にあるのは、地域の歴史博物館である「大勝庵 玉電と郷土の歴史館」。非常に手作り感の強いこじんまりとした外見。中では二子玉川にかつて東急玉川線(玉電)が走っていた頃の貴重な資料や、“玉電”ゆかりの品々が見られます。
多摩川近くの公園には区の文化財が!
ここまでは二子玉川駅の東側と西側を見てきましたが、最後に駅の南側、つまり多摩川沿いの方も軽く散歩してみます。

多摩川に近い「二子玉川公園」は二子玉川ライズなどと同様に地域の再開発で誕生したスポットであり、開業は2013年。二子玉川ライズからはテラスマーケットを経由して、信号や横断歩道を挟まず直通で入れます。

園内はきれいに整えられており、豊かな緑を存分に満喫できます。

また、園内には世田谷区の公園として初めての本格的な日本庭園「帰真園」も。

この庭園は多摩川の源流から本流まで、緑豊かな丘陵と武蔵野の風景を再現した空間になっているとのこと。また、誰もが快適に園内巡りを楽しめるユニバーサルデザインになっており、四季や時間による風景の変化も感じ取れるなど、さまざまな工夫がされているそうです。

同じく園内にあるのは、登録有形文化財「旧清水家住宅書院」。明治期の近代和風建築をゆったりと見学できます。

書院はもともと台東区根岸にあり、大正時代に世田谷区の瀬田に移築され、さらに2013年に再移築で現在の公園内に復元されたそうです。

さまざまな見どころがある二子玉川公園を後にして階段を登ります。

歩道橋からの景色は広々としています! 川沿いに腰掛けてゆったり過ごす人が多いようです。

遠くには武蔵小杉のタワーマンション群も見えます。

また、ここには「スターバックスコーヒー 二子玉川公園店」も。取材日は休日とあってかなりの混雑でしたが、平日や朝など、込み合っていない時間帯を狙って行きたくなるような、絶好のロケーションです。

二子玉川公園からさらに先へ行くと、広々とした多摩川河川敷の風景が。遠く対岸にあるのは神奈川県川崎市。ここから駅の方向に戻っていきます。

川辺の遊歩道には、カップルや家族連れもたくさん。アウトドア用品を並べてソロキャンプをしている人や、レジャーシートを敷いてピクニックを楽しむ人たち、ギターを弾いている人もいました。

多摩川の土手近くの目立たない場所には、江戸時代の元禄年間(1688〜1703年)からあったという渡し船「二子の渡し」について伝える石碑が。多くの人々がここから対岸へ、対岸からここへと日々行き交っていたのでしょう。
二子玉川は緑豊か&再開発エリアも豊か!

現在は江戸の渡し船も遠い過去のものとなり、多摩川の岸と岸の間を今は電車や車が行き来しています。駅前に戻れば1960年代に開業した玉川高島屋、2010年代に登場した二子玉川ライズが地域のコアとして現在も活躍中。
場所ごとによってさまざまな時代の空気を感じ取れることは、二子玉川歩きで発見した「街の個性」と呼べそうです。

加えて街のあちこちに公園や緑道、施設緑化や河川敷などの緑が多く、生活の便利さとナチュラルテイストが両方欲しい人にこそおすすめしたくなる水辺タウンです。
この記事の筆者:デヤブロウ プロフィール
都内在住の街歩きライター。Yahooエキスパートとして台東区の地域情報を発信するほか、「macaroni」など複数メディアで執筆を行う。飲食店、博物館、銭湯巡り、寺社探訪を中心に地域情報を発信中。東京シティガイド検定を取得済み。
(文:デヤブロウ)