「地域おこし協力隊」から村長になったOBも…受け入れ全国2位の長野県、定住率は77%
2025年4月19日(土)15時31分 読売新聞
南箕輪村の藤城栄文村長
長野県内の地域おこし協力隊の受け入れ人数が昨年度、全国2位の545人だったことが、総務省のまとめでわかった。直近5年間に任期が終了した隊員の定住率は、10人以上が対象者となる都道府県では全国1位だった。豊かな自然や首都圏からの交通の便の良さが背景にあるとみられ、県は、隊員を雇用する市町村への支援を強化する方針だ。(岡本拓真、柳沢譲)
協力隊員は、過疎地域などで生活しつつ、地域住民と連携・協力しながら、農林漁業の応援や住民の生活支援といった活動を行う。市町村や都道府県から委嘱を受けて有期雇用の公務員などとして働き、任期はおおむね1〜3年。地方で人口減少や高齢化が進む中、隊員らには任期終了以降も、地域に定住してもらうことが想定されている。
2024年度の都道府県別の受け入れ隊員数は、本県は北海道の1307人に次いで全国2位。県内77市町村中71市町村と県の計72自治体で受け入れた。
県地域振興課によると、記録が残っている12年度以降、この順位を保っているという。多くの隊員が集まる理由について、同課は「自然豊かで首都圏からの交通の便が良いといった、移住人気の高さが直接結びついている」とみる。
県内では、直近5年間で任期が終了した隊員580人中447人が定住を選択し、定住率は77・1%だった。
県はこうした結果について、ミスマッチを避けるために市町村職員向けの研修を行ったり、地域別に隊員交流会を開いて情報交換の場を提供したりといった取り組みの成果だとする。
さらに、県は昨年度、効率的な隊員の活用方法を市町村職員に周知したり、課題を分析したりする業務に特化した隊員1人を採用。同課の担当者は「外部からの視点を持つ協力隊員たちに、今後も地域振興の核を担ってもらえたら」と話している。
県内では、地域おこし協力隊出身者が、任期後も地域に定住し、様々な分野で活躍している。一方、一部の市町村では人材確保が課題となっているほか、隊員が不祥事を起こした事例もあった。
南箕輪村の藤城栄文村長は、協力隊OBとして県内で唯一の首長だ。川崎市から移住し、2017〜18年度に移住定住促進を担当。アメリカンフットボールを基にした競技「フラッグフットボール」の協会に勤務していた経験があることから、小学校の体育での導入活動も行った。村議を経て21年に村長に初当選し、現在は2期目を務める。
東御市では21年、競泳日本代表らが合宿に使う湯の丸高原の高地トレーニング用プールの運営などを担当していた男性隊員を市職員として採用し、現在も勤務している。県によると、協力隊出身者が自治体の正規職員になった事例は他にも複数あるという。
ただ、協力隊員の募集に苦心するケースもある。
飯島町は、全国で地域おこしに取り組む東京の民間企業に、空き家対策に向けた現状把握や利活用などに専従する隊員4人の募集・選考を委託したが、実現しなかった。同社の男性社長と昨年9月に3年間の予定で結んだ包括連携協定も、先月末で打ち切った。町は今年度、専従の隊員1人を採用する方針だという。
また、立科町では、40歳代の男性隊員が昨年11月に飲酒運転で自損事故を起こし、3月31日に失職した。総務省は、隊員の法令順守や服務規律の徹底を自治体に呼びかけている。