女性アナが同僚に睡眠薬、傷害罪で起訴 足の引っ張り合い、いす取り合戦と言われた特殊な仕事の裏側
2025年4月20日(日)18時0分 J-CASTニュース
元女性アナウンサーが、同僚女性に睡眠薬を飲ませ、傷害罪で起訴されるという事件が2025年4月8日、報じられた。
1月に琉球放送を退職、3月に傷害容疑で逮捕
事件が起こったのは昨年1月のこと。琉球放送の元アナウンサー大坪彩織被告(24)は、那覇市内において同僚の20代の女性社員に、睡眠作用がある薬物などを混ぜた飲み物を手渡した。
それを飲んだ同僚女性は、ろれつがまわらなくなったり、一時的に意識障害を起こすなどの症状を起こして病院に搬送されたが、1日ほどで回復。翌2月に入って沖縄県警に被害を申告した。
一部報道では、この同僚はアナウンサーであるとも報じられている。
大坪被告は5月から休職し、今年1月に琉球放送を退職。その後3月10日に傷害容疑で県警によって逮捕された。
4月8日に琉球放送は、公式ウェブサイトで「このたび、当社の元従業員と従業員の間で発生した事件で、元従業員が逮捕・起訴される事態となりました。関係者の皆様にご心配をおかけしておりますことを、お詫び申し上げます」から始まる謝罪声明を発表した。
一方、同日のサイト内のニュースサイトと放送では、大坪被告を実名で報じている。
大坪被告は慶応大学法学部在学中にフジテレビのアナウンススクール「アナトレ」に通い、大学3年時にはBSフジの「BSフジNEWS」で学生キャスターを務めた経験を持っている。
丸岡いずみさん「『敵』にすぐ相談できますか」
被告の犯行動機は明らかとなっていないが、フジテレビの性加害問題が世間を騒がせるなかで報じられたこのニュースから、インターネット上で掘り起こされた10年以上前の発言が話題となっている。
それは、かつて「マツコの部屋」(2009〜11年/フジテレビ系)におけるマツコ・デラックスさんの発言だ。若手女子アナウンサーに向かい、「ここじゃ言えないけど、女子アナなんて足の引っ張り合いだからね。......そりゃそうよ。(中略)本番前(ほかの女子アナに)下剤飲ませちゃったりするのよ」とささやいたのである。
この発言が掘り起こされると、事件発覚の1週間前の4月1日に「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)でフリーアナウンサー・キャスターの丸岡いずみさんが発言した内容も、改めて注目された。
番組では前日に記者会見で発表された、フジテレビの性被害問題における第三者委員会による調査報告書の内容を報じていた。
そのなかで、弁護士の橋下徹氏が「(被害に遭った女子アナウンサーは)嫌な気持ちがあったのに、なぜ直属の上司に相談しなかったのか」とコメントした。
すると、北海道文化放送のアナウンサー経験のある丸岡キャスターは「同じアナウンサーの仲間に言えるかといえば、言えない」と主張し、改めてその理由をこのように語った。
「言葉は難しいんですけど、正直申し上げると『いす取り合戦』をやっているんですよ、アナウンス部は。(中略)そのなかで『敵』にすぐ相談できますか、という......それが実態です」
「男性優位社会」のなかで弱い立場に
「いす取り合戦」という生々しい言葉は、女性アナウンサーがいかに特殊な職業なのかを物語っている。
在京キー局のアナウンサーの競争率は約1000倍ともいわれる狭き門だ。
"女子アナ"ブームの果てに、「批判を恐れずに言えばルッキズム(見た目)と、ある一定水準の学歴優先という冷徹な関門が、最近の女子アナ志望者の前に立ちふさがっているのがテレビ界の厳然たる事実なのだ」と述べたのが、かつて日本テレビでプロデューサーを務めた吉川圭三氏だ(引用はすべて「東洋経済オンライン」2022年8月13日『日本のテレビ局の女子アナだけに起きている異常/「ジェンダー問題」と「男性優位社会」を象徴する』より)。
そんな苦労を経たにも関わらず、早期に退職したり、年月が過ぎると別部署に異動するアナウンサーは少なくない。かつては「女子アナウンサー30歳定年説」などと言われたこともあった。
その理由を吉川氏は「『見た目』で選ばれ、キャリアを積んでも30歳を過ぎて結婚すると、なぜか別の部署に異動させられ、出産・子育てを経た後に、第一線に復帰する女子アナもいるが、それはごく一部である」ことを指摘し、彼女たちがいかに「男性優位社会」のなかで弱い立場に置かれているかを指摘している。
女子アナウンサーをめぐる構造は、われわれの周りにも横たわる問題でもある。不幸な事件で注目される今こそ、その根本から考えていくべきだろう。