孫でも育休取得、制度拡充は大手に偏り…月給の5割支給の企業も

2025年4月20日(日)13時15分 読売新聞

人材獲得へアピール

 仕事と育児・介護の両立支援を強化する改正育児・介護休業法が今月施行され、法の規定を上回る独自の支援策を打ち出す企業が相次いでいる。人手不足が深刻化する中、働きやすさをアピールし、社員の離職防止や新たな人材獲得につなげる狙いがある。ただ、目立つ取り組みは大手に偏りがち。中小企業への広がりが課題だ。(西村魁)

一緒に散歩

 16日午後。横浜市の男性(61)が1歳になる女の子の孫を抱き、平日の住宅街を散歩していた。

 ゼネコン大手・大成建設(東京)の研究員としてフルタイムで働く。同じ市内で暮らす娘夫婦も共働き。孫は日中、保育園で過ごしているが、この日は会社の制度を使って大脇さんが育児休暇を取得し、昼過ぎから預かった。

 休暇を取得できたのは、同社の育休対象が、従来の「子」から「孫」まで拡大されたからだ。自宅で絵本の読み聞かせもするなどし、リフレッシュした様子の男性は「共働きが当たり前の時代の子育ては大変。娘たちが困った時にサポートできるようにしていきたい」と笑顔を見せた。

介護に支援金

 厚生労働省によると、2023年度の男性の育休取得率は30・1%。過去5年で5倍近く増えたが、依然として女性(84・1%)と大きな差がある。また、総務省の22年の調査では、介護をしている雇用者の介護休業取得率は1・6%にとどまり、離職は年間10万人に達している。

 法改正には、企業による支援の充実を促す狙いがある。男性の育休取得率の公表対象企業を従業員1000人超から300人超に拡大。介護については、休業に関する研修の実施などを義務づけた。子の看護休暇の取得理由も、感染症に伴う学級閉鎖などに広げた。

 こうした法改正の内容を上回る取り組みを企業側が始めたのは、働きやすい環境を整え、有為な人材を確保するためだ。

 大成建設では、育児休暇だけでなく、改正法で「小学校入学前まで」から「小学3年まで」に広がった子の看護休暇の対象も、「小学6年まで」とさらに拡大した。北迫泰行・人財いきいき推進室長は「育児・介護は多くの社員が関わる事柄。独自の支援策は、人材確保や社員の満足度を高める上で重要だ」と語った。

 このほか、名古屋鉄道(愛知)は、最大5年間としている介護休業を取得した社員に対し、月給の5割に相当する支援金を1年間支給する制度を開始。不動産開発大手の大東建託(東京)は、ペットの通院や介護の際にも取得できる「ケア休暇」を導入した。

中小「余裕ない」

 一方、中小企業からは、「休ませる余裕はない」との声も上がる。

 都内のウェブ制作会社。約10人の従業員の中には親の介護に直面する人もいるが、介護休業は取得していない。女性社長(36)は「代替要員の確保や負担が増す他の社員に手当を出すのが難しく、休業させにくい」とこぼした。

 東京商工リサーチの23年の調査では、過去1年間に介護離職した従業員のうち、休業や休暇を取得しなかった人の割合は、大企業(資本金1億円以上)が36・8%だったのに対し、中小企業(同1億円未満)は58・2%。中小ほど休みが取得しづらい状況だ。

 厚労省は改善に向け、昨年1月、育休取得者らの業務を肩代わりした社員に手当を出す中小企業への助成を始めた。法政大の坂爪洋美教授(組織行動論)は、「国は助成制度の周知や利便性向上に努め、中小企業の状況改善を図るべきだ。個々の企業や業種に合わせ、さらなる支援も必要だろう」と指摘する。

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