1日の作業は“6時間”も穴を掘り続けること…誰よりも「徳川埋蔵金」を夢見たトレジャーハンターのその後

2025年4月21日(月)18時0分 文春オンライン

〈 狙うは地中に隠された“300万両の小判”…スコップで一攫千金を狙う「徳川埋蔵金に憑りつかれた男」のユニーク人生 〉から続く


 先祖も夢見た徳川埋蔵金を掘り当てるため、1日6時間も穴を掘り続けたトレジャーハンターの水野智之さん。テレビでも取り上げられて有名になった彼は、その後どうなったのか? 報道カメラマンとして活躍する橋本昇氏の新刊『 追想の現場 』(鉄人社/高木瑞穂編)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 最初 から読む)



3代目の水野智之さん。2011年に死去された(写真:橋本昇)


◆◆◆


3代目の水野智之の挑戦


 2代目義治氏の死後、3代目として後を継いだのが智之さんだった。週刊誌からの依頼は、「赤城山山中で400万両、時価にして2兆円の徳川埋蔵金を掘り続けている男がいる。それを写真に収めてほしい」とのことだった。群馬県渋川市赤城町に住む智之さんに連絡すると、「どうぞおいでください」と二つ返事だった。


 住所を頼りに家を探し回るもなかなか見つからなかったが、木に囲まれた民家を訪ねたとき「水野」の表札があった。声を掛けたが返事はない。ふと見ると家の敷地に土が掻い出されたような跡があり、よく見ると直径3メートルの穴が空き、下に梯子が伸びている。「水野さーん!」と大声で呼ぶと、しばらくして頭に土をかぶった水野さんが梯子を上ってきた。


 彼の案内で掘削現場へと降りた。智之さんはスコップを持ち、穴のどんずまりへ進み、天井を軽く削った。穴は少しジメジメしており、ゲジゲジもいそうだ。ストロボの閃光の中に智之さんの鬼気迫る顔が浮かび上がった。


 聞けばこの作業を毎日6時間くらい続けているという。穴掘りはとても危険で、落盤事故がないように慎重に進めなければならない。智之さんは毎日、作業する前に「よっしゃ!」と掛け声をかけ、1メートル掘れば掘るほど埋蔵金に近づく、と自らに言い聞かせて作業に入るそうだ。


 彼を一躍有名にしたのがテレビだ。1990年6月、テレビ局はプロジェクトチームを組んで水野家へ乗り込んだ。そしてブルトーザーやユンボを使い大々的な掘削作業を放映した。挙句にはおどろおどろしいナレーションを交えながら今にも出てきそうな雰囲気を煽った。だが、これはテレビ局の娯楽番組だ。


 出てこないのは百も承知で番組は構成されていたらしい。


 この一件を境に智之さんの信念は揺らいでいった。あの毎日コツコツ掘り続ける智之さんの人生のペースは、テレビ局の演出で完全に狂わされてしまったのである。


 お宝伝説は日本中にある。豊臣秀吉の隠し金、終戦時のドサクサに紛れて軍部が持ち出した金の延べ棒やM資金、陸軍大将山下奉文がフィリピンに残したらしい山下財宝、笹川良一が騙された沈没船ロシア軍艦ナヒモフ号のプラチナなど、山師たちの神経をくすぐる話は多い。イワシの頭も信心から、当たるも八卦、当たらぬも八卦の世界である。


その後の水野さん


 智之さんはその後もコツコツと掘り続けたという。そして2011年7月に亡くなった。誰からも笑われ狂人扱いされる、馬鹿にされるであろうことを覚悟の信念で狂気を貫いた男。日本のドン・キホーテが残した見果てぬ夢はいまや伝説となっている。


(橋本 昇,高木 瑞穂/Webオリジナル(外部転載))

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