伝説のコンサル・齋藤ジン氏が分析する“トランプ時代の中国の戦略”「私のリサーチからは、どうにも中国が勝つ絵は描けない。でも…」
2025年4月22日(火)7時0分 文春オンライン
台湾有事が起きた場合、日本にも甚大な影響が及ぶことが見込まれる。しかし、ジョージ・ソロスを大儲けさせたことで知られる〝伝説のコンサル〟齋藤ジン氏は、「日本復活」の大きなチャンスであるという。
斎藤氏とジャーナリスト・池上彰氏の対談「 日本復活のチャンスが来た 」から一部紹介します。
◆◆◆
高まる台湾有事のリスク
池上 中国の今後について聞かせてください。齋藤さんは『 世界秩序が変わるとき 』(文春新書)で中国はアメリカに絶対に勝てない、アメリカに代わって覇権国になることはない、と書いています。
齋藤 覇権国家に対して新興国がチャレンジする場合、解決方法は三つしかありません。

一つは、大日本帝国の真珠湾攻撃のように「戦争する」。二つめは、第一次世界大戦後に大英帝国がアメリカへ覇権を移譲したように「覇権国家がその座を譲る」、もしくは1980年代から90年代の日本がアメリカにしたように「新興国が自ら降りる」。三つめは「冷戦」です。いまの米中関係は冷戦状態ですが、習近平の中国はアメリカに跪(ひざまず)かず、アメリカは覇権を中国に譲らない。そう考えていくと、戦争のリスクが高まっていると言わざるをえません。
池上 中国は不動産バブルが崩壊し、若年失業率が2023年6月には過去最高水準の21.3%に達しました。
齋藤 若い失業者が毎年数百万人も出ている。これだけの若者を吸収することができるのは、軍や戦争しかない。詳しくは私の著書を読んでいただければと思いますが、私のリサーチと分析からは、どうにもこれから中国が勝つ絵は描けませんでした。でも、それゆえに中国は台湾などで一発逆転を狙う可能性がある。
池上 トランプ氏は、台湾有事への対応を聞かれて「何もコメントしない」と述べています。アメリカと中国やロシアの間には、ゼレンスキー氏が言うところの「大きな、きれいな海」がありますからね。
日本復活の絶好のチャンス
齋藤 結局、アメリカは自分たちには関係ないと思っている。しかし、日本は台湾有事が起きたら巻き込まれるし、中国はお隣さんだから仲良くやっていきたい。日本は今、非常に難しい局面に立たされています。
しかし、同時に中国を封じ込め、叩き潰すのが、アメリカの譲れない政策であれば、東アジアでアメリカを助ける役割を果たせるのは、日本をおいてほかにありません。そのことこそが、私が日本復活の絶好のチャンスが到来すると考える最大の理由です。
戦後、アメリカは冷戦で東側陣営に対抗するために軍事的にも経済的にも日本に手厚い支援をしてくれました。日本はそのおかげで目覚ましい経済復興を遂げた。その時代と似たことが今、起きつつあるのです。
TSMCの巨大な半導体工場が日本に続々と作られているのは、まさにすでに来ているチャンスです。日本がそのような立ち位置にいるのであれば、日本はアメリカと一緒においしいところを取りに行ったほうがいい。それが私の考えです。
池上 齋藤さんは著書で明治維新、戦後復興期以来のチャンスだと。
齋藤 1980年代から90年代にかけて、新自由主義が世界を覆っていったとき、日本はひとり負けとなりました。再びゲームチェンジが起きれば、新しい勝者と敗者が生まれます。これから起こる変化は、黒船来航の後に起きたことに匹敵するでしょう。黒船が来て、徳川の世が終わり、世の中がひっくり返って、次の時代を切り拓く坂本龍馬や岩崎弥太郎が出てきた。ですから、今は目の前の現実を従来の見方や前提に捕らわれず新鮮な目で見つめなおすことが重要です。
※本記事の全文(約10000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「 文藝春秋PLUS 」と「文藝春秋」2025年5月号に掲載されています(齋藤ジン×池上彰「 日本復活のチャンスが来た 」)。全文では下記の内容をお読みいただけます。
・MAGA派とマスクの同床異夢
・無茶な関税はレバレッジ
・日本はスネ夫になれ
・チャンスを掴んでいた岸田首相
(齋藤 ジン,池上 彰/文藝春秋 2025年5月号)