昼間から「優雅なフレンチ」を堪能できる大学も…意外と知らない「大学教員たちのご飯事情」
2025年4月22日(火)12時0分 文春オンライン
〈 「京都大学の給料では京都市内に住めない!」は本当か…? 日本人が知らない「大学教員の給与事情」 〉から続く
意外と知らない大学教員たちの食生活——いったい彼らは何を食べ、どんな生活をしているのか? 約30年、国立大学で働き続け、多数の著作を執筆してきた神戸大大学院教授・木村幹氏の新刊『 国立大学教授のお仕事——とある部局長のホンネ 』(筑摩書房)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/ 最初 から読む)

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大学教員の食事事情
大学教員は毎日どんな生活をしているのだろうか。こんな疑問の中には、大学教員は毎日何を食べているのか、なんていうことも含まれるかもしれない。
結論からいえば、20万人以上もいる大学教員が等しく同じ食習慣を有しているはずはない。中には職よりも食に命を懸けているのではないか、というくらいグルメな教員もいれば、筆者のようにまったく食に無頓着で、つい最近までは、朝食も昼食もコンビニのおにぎり、個人的な事情でダイエットを開始した昨年の夏からは、朝はプロテインヨーグルトで、昼もプロテイン、という教員もいるくらいである。ちなみにおにぎりを食べていた頃は、「ツナマヨ」を好んで食べていた。安くてカロリー多めだからである。
大学教員の食生活、特に大学内でのそれについての、一つの分かれ目は、研究室で食べるか、学食等の食堂で食べるか、であろう。大学教員の多くは自らの研究室を有しているので、お弁当を作って来たり、コンビニ等で何かを買って来たりすれば、研究室で食事をすることができる。静かに、そして速やかに食事をしてすぐに仕事へと戻りたい類の人々はこちらである。
他方、食堂で食事をする人たちの多くは、親しい教員や職員、さらには学生たちを引き連れて、テーブルを囲んで食事をする。こちらの中には、さらに二つの派閥があり、好んで学生用食堂を使うグループと、大学によっては設置されている「教職員専用食堂」を使うグループに分かれる。とはいえ、「教職員専用食堂」といってもさまざまであり、筆者の勤務先のように、「ワンコイン・ランチ」を売りにしているところもあれば、東京大学駒場キャンパスのように優雅なフランス料理を昼間から賞味することができるところもある。
大学の近くに食堂があれば、キャンパスの外で食事をとるところもあるだろうが、筆者の勤務先は六甲山の中腹にあるので、いったん坂を下りてしまえば、登るのが億劫であり、わざわざ駅前まで食事に行く人は多くない。
大学教員とご飯、というお題において、もっとも特徴的なのは、他の業界の人々と比べて過去に留学を経験した人が多い、ということかもしれない。だから、彼らは自らが留学したことのある国の料理には、やたらとくわしく、ときに延々と蘊蓄を聞かされることになる。筆者のようなしがない朝鮮半島研究者は、ワインの神髄を極めたかのように語るフランス留学組の同僚の前で、「真露のほうが旨いだろ」と聞こえないように呟きながら、安物の韓国焼酎を呷ることになる。
(木村 幹/Webオリジナル(外部転載))