「学生のまち」京都で学食に値上げの波、コメ高騰が追い打ち…立命館大「100円朝食」は盛況
2025年5月11日(日)15時50分 読売新聞
京都大生協の学食の組み合わせ例。ご飯(M)、一汁、一菜、小鉢で計605円(左京区で)
大学生の食生活を支える学食が、異例の値上げに見舞われている。特に京都は、学生が人口の1割を占める「学生のまち」で、その影響は甚大だ。運営する生活協同組合などはぎりぎりのやり繰りを続けるが、食材費高騰の影響はしばらく収まりそうにない。(矢沢寛茂)
お茶提供取りやめ
「全力を尽くしておりますが(中略)追加の改定をどうしてもお願いせざるを得ない」
京都大生協は3月、7か所ある食堂で、ご飯のメニューを2度にわたって計13〜100円値上げした。ライスMは55円増、特大は100円増、カレー大は90円増などとなった。
食材費の高騰に加え、人件費や光熱費、物流費などの上昇分を価格に転嫁してきたが、昨年来の米価の高騰が追い打ちとなった。コメは全国の大学生協が共同で調達しており、7〜8月に再度、価格改定する可能性があるという。
京大生協の調べでは、学生の約8割が昼食に学食を利用しており、食生活の要となっている。一方、1食の平均的な利用額は600円前後で推移しており、学生は一連の値上げに対し、小鉢1品やみそ汁を減らして調整しているとみられる。
山口県下松市出身の法学部4年の学生(21)は「学食の安いというイメージがすっかり変わった。値段が下がる雰囲気もない」と嘆く。
京大生協の運営も綱渡りが続く。2024年度決算では赤字が1億660万円となり、累積赤字も2億3800万円に膨らんだ。
こうした状況を受け、今年3月には好評だったお茶の無料提供を3店で取りやめ、給水器に切り替えた。年間1000万円超の経費削減を見込むが、食堂部門統括の阿部大地さんは「米価の上昇は急激で、状況は見通せない」と気をもむ。
ワンコイン断念
京都市立芸術大(下京区)では4月10日、新年度に合わせて待望の食堂が開店したが、ここでも食材費高騰の影がのぞく。
同大学では23年10月のキャンパス移転時、限られた費用から調理室などに手が回らなかったが、市と約1億2000万円を折半して1年半遅れで食堂を整備し、開店にこぎ着けた。コンビニ店などで昼食を済ますことも多かった学生には好評で、美術学部2年の学生(20)は「もっとメニューが増えるといいな」と声を弾ませた。
運営するのは、近畿を中心に約100校の学食を手がける「不二家商事」(西京区)。同大学では学生が約1000人と少ないため、営業は平日昼限定(午前11時半〜午後2時15分)とし、一般利用も可とすることで採算を確保する戦略だ。
定食は550〜650円で提供しているが、物価高が想定を狂わせた。当初、大学との協議ではワンコイン(500円)を目指したが、食材費の高騰で、価格は上振れしたという。
同社営業部の山本博久・エリアマネジャーは「何とか学生を喜ばせたいが、これ以上食材費や人件費が上がると厳しくなる」と不安をのぞかせる。
「学食ではしっかり食べて」
物価高の影響が続く中、立命館大の「100円朝食」は今春、利用者が前年比で約2割増と盛況だ。
衣笠キャンパス(北区)の存心館食堂は1時限目を前に、にぎわいをみせる。ご飯(小)、みそ汁、小皿2品は計400円相当だが、差額を大学の父母教育後援会が支援する形で2013年から続いており、長野県出身の法学部3年の学生(20)は「何でも値上げの中で自炊も楽ではない。100円を維持してもらい、助かっている」と感謝した。
立命館生協によると、全キャンパスでの4月前半の利用者は1日平均1309人と、昨年4月(1120人)を約17%上回った。仕入れ価格の上昇分は節水など運営の見直しでカバーしており、食堂部の的崎裕美・統括店長は「大学外では100円でおにぎりやパンも買えなくなっている。学食ではしっかり食べてほしい」と話す。