米中関税合意 さらなる緊張緩和策へと進め

2025年5月14日(水)5時0分 読売新聞

 高関税政策と報復措置の応酬を繰り広げてきた米中両国が、緊張緩和に向けて一歩踏み出した。今回の合意を踏まえ、米中は、さらなる関係の改善策を探っていくべきだ。

 米国と中国は10、11日にスイスで閣僚級の貿易協議を開き、追加関税を互いに115%引き下げることで合意した。米国の対中関税は30%、中国の対米関税は10%へと下がることになる。

 米国が4月2日に相互関税を公表後、互いに意地を張り、100%を超える高関税をかけ合い、関係の悪化が続いてきた。

 このままでは、米中だけでなく日本を含めた世界経済にも大きな悪影響が及ぶ恐れがあった。

 トランプ米大統領は、中国との関係について「完全にリセットされた」と述べた。想定を上回る合意内容は、関係改善への前向きな姿勢をうかがわせる。

 ベッセント米財務長官は、協議後の記者会見で、「経済のデカップリング(切り離し)を望んでいないという点で意見が一致した」と説明した。米国が現実的な路線を取るならば望ましい流れだ。

 そもそも最初に拳を振り上げたのはトランプ氏である。だが、輸出が減少して打撃を被った中国よりも、米国側の方で経済の困難な状況が深まる、との懸念が広がったことは誤算だった。

 米国は家電や日用品など国民生活に必須の製品を中国から多く輸入している。高関税によるインフレの加速は必至となっていた。

 政権の支持率は下落傾向にある。トランプ氏としては、これ以上、国民の不満が高まることを避けたかったのだろう。高関税政策を突きつけ、相手に改革を迫るトランプ流のディール(取引)に綻びが見えたとも言える。

 もっとも、今後の協議は曲折をたどる可能性がある。関税を引き下げたうち、24%分は90日間停止し、その間に協議を進めるというが、中国の不公正な補助金や過剰生産、閉鎖的な市場などの問題は短期間で解決するのが難しい。

 中国に是正を迫るには、日欧も含めた多国間の枠組みの活用こそが有効になる。日本はそのことを粘り強く説き続けてほしい。

 一方、日米の関税協議は楽観できない。トランプ氏は中国との合意後も自動車などの追加関税については維持する考えを示した。

 自動車分野で日本への強硬姿勢も続くとみられる。基幹産業の自動車に高関税が課される事態は避けねばならない。政府はその前提で交渉に臨んでもらいたい。

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