車の運転記録提出しなかったため生活保護停止は「違法」…鈴鹿市の上告不受理、市の賠償支払い確定
2025年5月15日(木)8時38分 読売新聞
鈴鹿市役所庁舎
車の運転記録を提出しなかったことで三重県鈴鹿市が生活保護の支給を停止したのは違法だとして、身体障害のある市内の女性(82)らが停止処分の取り消しなどを求めた訴訟で、市は14日、最高裁が上告を不受理とする決定を出したと発表した。決定は12日付。市に計11万円の賠償を命じた2審・名古屋高裁判決が確定した。
訴状などによると、女性と難病を抱えた次男は生活保護を受けていた。市は次男の通院に限り、車の使用を許可。一方で、女性に対し、運転経路や具体的な用件などを記した「運転記録票」の提出を求めていた。女性が「移動の自由やプライバシーに関わる。人権侵害だ」と拒否し、買い物などでも車を使用するなどした結果、2022年9月に市から支給を打ち切られた。
24年3月の1審・津地裁判決では、「記録票の提出は過剰な要求の疑いがある」と指摘。親子が買い物などで車を使用していたことも「軽微な違反で、非難されるべきものではない」とした上で、市が保護を取り消した対応は親子に生命の危険も生じさせ得る多大な不利益で違法だと認定した。2審でも市の違法性を認定し、市は昨年11月、最高裁に上告していた。
昨年12月、生活保護を受給する障害者らが買い物などにも車を運転できるよう、利用ケースを拡大するとした厚生労働省の通知を受け、市では運転記録の提出を求めていないという。
鈴鹿市の末松則子市長は、「今回の結果を踏まえ、今後も適正な保護行政に取り組む」とコメントした。