ライダーに愛される鳥取の老舗・亀井堂「マイフライ」、SNSで人気再燃…販売数は2倍近くに
2025年5月17日(土)8時21分 読売新聞
マイフライ
鳥取市徳尾の老舗パン店「亀井堂」が製造している、あんこ入りの揚げパン「マイフライ」の人気が再燃している。「道の駅はっとう」(鳥取県八頭町)を訪れるライダーたちに「おいしい」「持ち運びやすい」と評判で、SNSへの投稿もあってブームを
亀井堂は1903年創業の老舗。県東部で長年親しまれてきた。ピーナツバターやイチゴジャムを食パンでサンドした「サンドイッチ」などのロングセラー商品でも知られる。
マイフライは食パンでこしあんをはさみ、衣を付けて揚げている。手に持つとずっしり重く、ボリューム感がある。かつては高校の購買部でも売られ、運動部員たちに人気だった。
なぜ「マイフライ」という商品名で、いつから販売されているのか。謎に包まれるが、由来ははっきりしない。地原忠実社長(71)も「恐らく戦後からではないかと思いますが、わからないんです」と首をかしげる。
作り方は当初から変わっていないという。防腐剤などが入っていないため消費期限が製造日を含む3日と短く、販路は主に県東部地域に限定されている。
はっとうでは2019年から取り扱う。「その場で食べられる商品を置きたい」と松下聡子駅長(44)が並べ始めた。「懐かしい」と求める人に売れた。
副駅長の山村俊太さん(41)がこれに注目。「あまりないパン。重量感がすごいし、ネーミングも謎。おもしろいと思った」と振り返る。
はっとうは、若桜鉄道隼駅(八頭町)が「ライダーの聖地」となっていることから、ライダー向けの店作りをしている。山村さんがライダーに宣伝したり、X(旧ツイッター)で取り上げたりして盛り上げに尽力しているうち、マイフライがローカルパンを特集するテレビ番組で取り上げられ、知名度が急上昇。平日は8個、週末は20〜50個仕入れるようになった。
各地で開催されるバイクイベントにも、はっとうはマイフライを出張販売。今年3月に大阪市で開かれた大阪モーターサイクルショーでは5分で100個売れるなどし、3日間で計400個が完売した。はっとうの販売数は20年度の570個から24年度は10倍近くに急増。亀井堂の販売数も以前の倍近くに増えているという。
はっとうはライダーに無料でコーヒーを振る舞う交流イベント「コーヒーブレイクミーティング」を月1回開催してきた。山村さんらは「ライダーの皆さんに亀井堂で作りたてを食べてほしい」と、同社の協力を得て、18日に同様のイベントを同社敷地で開くことを企画。マイフライは併設の直営店で各自が購入し、味わってもらう。
地原社長は「営業もしていないのに盛り上げてもらってありがたい。うちのパンで会話が弾んでくれたらうれしい」と感謝する。午前10時から午後1時。ライダーでなくても参加できる。
そのまま焼いたり、アイスをのせたり——。マイフライをアレンジする食べ方がライダーの間で広がっている。「隼駅を守る会」の会長石谷優さん(49)も大のファン。「冷凍庫で凍らせてからフライパンで焼くとカリカリになる。そこにバニラアイスをのせるのが一番うまい」と顔をほころばせる。
消費期限が短いマイフライを北海道まで持って行き、写真を撮影してXに投稿するライダーも。思い思いに楽しみながら〈勝手に〉盛り上げている。